また、東シナ海等の我が国排他的経済水域においては、外国海洋調査船による我が国の同意を得ない調査活動等も確認されており、海上保安庁では、関係機関と連携しつつ、巡視船等による中止要求や継続的な監視等、その時々の状況に応じて適切に対応をしている。さらに、外国漁船の違法操業のほか、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮の動向など、尖閣諸島周辺海域のみならず、我が国周辺海域を巡る状況は、一層厳しさを増している。
(2)海上保安体制強化の推進
厳しさを増す我が国周辺海域を巡る情勢を踏まえ、平成28年12月21日に開催された「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」において、「法執行能力」、「海洋監視能力」及び「海洋調査能力」の強化を図るため、以下5つの柱からなる「海上保安体制強化に関する方針」が決定され、海上保安庁では、同方針に基づき、海上保安体制の強化を進めてきたところである。
- 尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備
- 広大な我が国周辺海域を監視できる海洋監視体制の強化
- テロ対処や離島・遠方海域における領海警備等の重要事案への対応体制の強化
- 我が国の海洋権益を堅守するための海洋調査体制の強化
- 以上の体制を支える人材育成など基盤整備
最近の周辺海域の状況については、尖閣諸島周辺海域において中国公船の大型化、武装化や増強が進んでおり、また、北朝鮮に関連し、日本海の大和堆周辺海域において多数の北朝鮮漁船が確認されたほか、朝鮮半島からのものと思料される木造船の漂流・漂着が相次いでいる。
このように、ますます厳しさを増す現状を踏まえ、平成29年12月18日には、2回目となる「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」が開催された。同会議では、ヘリ搭載型巡視船を含む大型巡視船、新型ジェット機、大型測量船の増強、必要な要員の確保など、引き続き海上保安体制の強化を進めることに加え、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序のために国際連携の取り組みを推進していくことの必要性が確認された。
なお、次期海洋基本計画においても、「海洋の安全保障」に関する各種の施策が新たな項目として追加されるとともに、「海上保安体制強化に関する方針」に基づく施策や国際連携に関する取り組み等が次期計画に盛り込まれたことから、海上保安庁はこれらの施策を着実に推進していく。
(3)世界海上保安機関長官級会合の開催
近年、地球規模で自然環境が変化し、気候変動に起因する災害の大規模化や航行環境の著しい変化が世界各地で発生している。また、地球規模で社会環境も変化し、テロ・過激主義の脅威が世界各地に拡大しており、これらに最前線で対応する海上保安機関の連携の重要性が高まっている。
世界の海上保安機関が、地球規模の環境変化とそれに起因する課題に対し、地域の枠組みを越えて取り組むため、海上保安庁は、平成29年9月に34か国1地域3国際機関の海上保安機関等の長官級を招聘し、世界で初となる世界海上保安機関長官級会合を日本財団と共催した。
会合では、「海上の安全及び環境保全」、「海上のセキュリティー」、「人材育成」の3つのテーマごとに先駆的な取組みの発表や議論がなされ、世界が直面している課題を克服するため、連携の強化や対話の拡大を図ることの重要性を確認すること等を盛り込んだ議長総括を発出した。
また、会合に先立ち、迎賓館赤坂離宮において歓迎レセプションが開催され、安倍内閣総理大臣が出席した。安部内閣総理大臣からは、「平和で安定した海」の実現のため、海上保安機関の役割が重要であり、世界中の海上保安機関が海を通じて繋がり合い、交流を深化させ、難題解決のための力を結集することが極めて大切である旨のスピーチをいただいた。