■1 犯罪・テロ対策等の推進
(1)各国との連携による危機管理・安全保障対策
1)セキュリティに関する国際的な取組み
主要国首脳会議(G7)、国際海事機関(IMO)、国際民間航空機関(ICAO)、アジア太平洋経済協力(APEC)等の国際機関における交通セキュリティ分野の会合やプロジェクトに参加し、我が国のセキュリティ対策に活かすとともに、国際的な連携・調和に向けた取組みを進めている。海事分野では、我が国はIMOにおいて、海事サイバーセキュリティに関するガイドライン案を米国等と共同で提案していたところ、平成29年6月のIMO会合において、同案に基づき作成されたガイドラインが承認された。
18年(2006年)に創設された「陸上交通セキュリティ国際ワーキンググループ(IWGLTS)」には、現在16箇国以上が参加しており、陸上交通のセキュリティ対策に関する枠組みとして、更なる発展が見込まれているほか、日米、日EUといった二国間会議も活用し、国内の保安向上、国際貢献に努めている。
2)海賊対策
国際海事局(IMB)によると、平成29年における海賊及び武装強盗事案の発生件数は180件であり、地域別では、ソマリア周辺海域が9件、西アフリカ(ギニア湾)が45件及び東南アジア海域が76件となっている。
20年以降、ソマリア周辺海域において凶悪な海賊事案が急増したが、各国海軍等による海賊対処活動、商船側によるベスト・マネジメント・プラクティス(BMP)注1に基づく自衛措置の実施、商船への民間武装警備員の乗船等国際社会の取組みにより、近年は低い水準で推移している。しかしながら、29年には25年以来4年ぶりにハイジャック事案が発生しており、商船の航行にとって予断を許さない状況が続いている。
このような状況の下、我が国としては、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」に基づき、海上自衛隊の護衛艦により、アデン湾において通航船舶の護衛を行うと同時に、P-3C哨戒機による警戒監視活動を行っている。国土交通省においては、船社等からの護衛申請の窓口及び護衛対象船舶の選定を担うほか、一定の要件を満たす日本船舶において民間武装警備員による乗船警備を可能とする「海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法(25年11月30日施行)」の運用を適切に行い、日本籍船の航行安全の確保に万全を期していく。
図表II-7-5-1 国土交通省に報告された日本関係船舶の海賊及び武装強盗被害発生状況(平成29年)

海上保安庁においては、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のために派遣された護衛艦に、海賊行為があった場合の司法警察活動を行うため海上保安官8名を同乗させ、海上自衛官とともに海賊行為の警戒及び情報収集活動に従事させている。また、同周辺海域沿岸国の海上保安機関との間で海賊の護送と引渡しに関する訓練等を実施している。
東南アジア海域等においては、巡視船や航空機を派遣し、寄港国海上保安機関と海賊対処連携訓練や意見・情報交換を行うなど連携・協力関係の推進に取り組んでいる。
加えてこれらの海域の沿岸国の海上保安機関職員に対し研修等を行うなど法執行能力向上のための支援に積極的に取り組んでいるほか、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づいて設置された情報共有センター(ISC)へ職員を派遣するなど国際機関を通じた国際的連携・協力に貢献している。