■1 住まい方に対する国民の意識 (現在の住まい(居住地域・住宅)に対する不満)  現在の住まい(居住地域・住宅)に対する不満についてみると、全ての地域において、「特にない」という回答が最も多いことから、総じて、住まいに対する不満は少ないということが推察される(図表2-3-1)。 図表2-3-1 現在の住まい(居住地域・住宅)に対する不満(居住地別)  一方で、三大都市圏、政令市・県庁所在地・中核市においては、「住宅が狭く必要な空間が確保できない」、「住宅の家賃が高い」という回答が多い。さらに、人口5万人以上市町村、5万人未満市町村においては、「趣味・娯楽を楽しむ場所からの距離が遠い」、「公共交通機関(駅、バス停など)からの距離が遠い」、「生活関連施設(病院、店舗など)からの距離が遠い」という回答が多い。このことから、都市においては広さや家賃など住宅自体に対する不満がある一方で、地方においては居住地域のアクセス面への不満が多く、地域によって住まいに対する不満の種類が異なるということがわかる。 (現在の住まい(居住地域・住宅)に対する不安)  現在の住まい(居住地域・住宅)に対する不安についてみると、全ての地域において、居住地域に関して「コミュニティが弱く頼れる人がいない」との回答が多く、住宅に関して「リフォーム・修繕などの維持管理費用が掛かる」との回答が多い(図表2-3-2、図表2-3-3)。また、人口5万人以上市町村、5万人未満市町村においては、「公共交通が減り自動車が運転できないと生活できない」という回答が最も多く、次に「徒歩圏内のコンビニ、スーパー、病院などの施設が少ない」、「趣味・娯楽など楽しめる場所がない」、「住民の高齢化や減少によりコミュニティの維持が不安」という回答が続いている。 図表2-3-2 居住地域に対する不安(居住地別) 図表2-3-3 住宅に対する不安(居住地別)   このことから、全ての地域において、暮らしを支えるコミュニティの弱さ、現在の住居の維持管理費用に対する不安があり、それらに加え、地方においては、車に依存した社会、病院等暮らしを支える都市機能の不足、楽しめる場所の不足、コミュニティの維持等に対する不安が大きいことが分かる。その中でも、特に都市と地方の差が大きいものは、車依存に対する不安であり、第1章第2節(注18)で述べた、地方における車依存の進行などが影響を及ぼしているものと推察される。 (今後求められる住まい方)  今後、求められる住まい方については、全世代にわたり、「介護が必要になっても年金の範囲内で安心して暮らし続けられる住まいの整備」という回答が最も多く、世代が上がるほど、その割合が高くなっている(図表2-3-4)。このことから、世代を問わず、少子高齢化社会を見据えた住まい方が求められており、特に高年層ほどその希望は強いと推察される。 図表2-3-4 今後求められる住まい方(年代別)   次に、「親世帯、子ども世帯との同居や近居の推進」という回答が、年代を問わず多い。その中でも30代や60〜70代で、他の年代よりも多くなっており、子育てや介護への支援を家族に求めていることがうかがえる。  また、20〜30代の子育て世代は、「職場内や近隣への子育て支援施設整備による職育近接の推進」という回答が多く、ワークライフバランスを支える住まいへの関心が高いことを示している。  この他、20代は「田舎暮らしなど地方移住の推進」への関心が他の世代に比べて高い。このことについて、さらに居住地別に分析を行った結果、三大都市圏及び5万人未満市町村の20代において高い割合を示している他、それ以上に5万人未満市町村の60〜70代の関心が高いことがわかった(図表2-3-5)。これは地方の移住に関心を持つ三大都市圏の20代が多いことに加え、移住者を受け入れる側として移住に関心を持つ地方の20代も多くいること、また、地方では移住者を受け入れることで、地域のコミュニティが維持され、地域の活性化につながることを希望する高年層が多いためであると推察される。これらのことから、地方移住や二地域居住等、人の交流が広がる住まい方に対する支援が求められていると考えられる。 図表2-3-5 地方移住推進への希望(居住地別/年代別) 注18 第1章第2節3.(2)地方のライフスタイルの特徴を参照。