■2 地球温暖化対策(緩和策)の推進
(1)低炭素都市づくりの推進
人口と建築物が相当程度集中する都市部において、都市機能の集約化とこれと連携した公共交通機関の利用促進、地区・街区レベルでのエネルギーの面的利用等のエネルギーの効率的な利用、みどりの保全・緑化の推進等による低炭素まちづくりを促進する観点から「都市の低炭素化の促進に関する法律」を施行した。この法律に基づき、市町村が作成する「低炭素まちづくり計画」は、平成30年度末時点で24都市において作成されたところである。同計画に基づく取組みに対する法律上の特例措置や各種の税制、財政措置等を通じ「低炭素まちづくり」を推進することとしている。
(2)環境に優しい自動車の開発・普及、最適な利活用の推進
1)自動車の燃費改善
「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づく燃費基準の策定等を行い、自動車の燃費性能の向上を図っている。平成30年3月以降、自動車燃費基準小委員会(交通政策審議会の下部委員会)等において乗用車の次期燃費基準について検討を行っている。
2)燃費性能向上を促す仕組み
消費者が燃費性能の高い自動車を容易に識別・選択できるよう、自動車メーカー等に対してカタログに燃費を表示させることを義務づけているほか、自動車燃費性能評価・公表制度を実施している。
また、燃費性能については、ステッカーを貼付し、外形的に性能を識別できるようにしている。
3)環境に優しい自動車の普及促進
環境性能に優れた自動車の普及を促進するため、エコカー減税及びグリーン化特例による税制優遇措置を実施している。なお、令和元年度税制改正においては、エコカー減税は軽減割合等の見直し等を行った上で、その適用期限の延長、グリーン化特例は現行制度を維持したまま2年間の延長が実施された。
また、地球温暖化対策等を推進する観点から、トラック・バス事業者等に、燃料電池自動車、電気自動車、CNG自動車注1やハイブリッド自動車等の導入に対する補助を行っている。
超小型モビリティについては、30年5月に、有識者等からなる「地域と共生する超小型モビリティ勉強会」において、本格普及・量産化を目指すロードマップを策定し、今後の具体的な取組みをとりまとめた。
4)次世代大型車等の開発、実用化、利用環境整備
低炭素化、排出ガス低減等の観点から、平成27年度より、高効率次世代ディーゼルエンジン、大型液化天然ガス自動車といった次世代大型車関連の技術開発を実施し、必要な試験法の整備等、実用化に向けた取組みを進めた。
5)エコドライブの普及・推進
シンポジウムの開催や全国各地でのイベント等を関係省庁や地方運輸局等と連携して推進し、積極的な広報を行った。また、「エコドライブ10のすすめ」をもとに、エコドライブの普及・推進に努めた。
(3)交通流対策等の推進
交通流の円滑化による走行速度の向上が実効燃費を改善し、自動車からの二酸化炭素排出量を減らすことから、様々な交通流対策を実施している。具体的には、都市部における交通混雑を解消させるため、都心部を通過する交通の迂回路を確保し都心部への流入の抑制等の効果がある、環状道路等幹線道路ネットワークの強化、交差点の立体化、開かずの踏切等を解消する連続立体交差事業等を推進するとともに、円滑かつ安全な交通サービスの実現のため、今ある道路の運用改善や小規模な改良等により、道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する「賢く使う」取組みを推進している。また、自転車利用を促進するための環境整備や道路施設の低炭素化を進めるため、LED道路照明灯の整備等を実施している。
(4)公共交通機関の利用促進
自家用乗用車からエネルギー効率が高くCO2排出の少ない公共交通機関へのシフトは、地球温暖化対策の面から推進が求められている。このため、LRT/BRTシステムの導入や駅のバリアフリー化の推進、交通系ICカードの導入、情報化の推進等による公共交通利便性向上のほか、エコ通勤優良事業所認証制度を活用した事業所単位でのエコ通勤の普及促進に取り組んだ。さらに、これまで実施した「環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業」の取組み成果及び分析・検証結果について、情報提供を実施している。
図表II-8-1-2 モビリティ・マネジメントによる「エコ通勤」の推進
(5)物流の効率化等の推進
国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロベース)はトラックが最大であり、5割を超えている。トラックのCO2排出原単位注2は、大量輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、物流部門におけるCO2排出割合は、トラックが約9割を占めている。国内物流を支えつつ、CO2の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。更なる環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に向け、新技術を活用した鮮度保持コンテナ、大型CNGトラック等の環境対応車両の普及促進、港湾の低炭素化の取組みへの支援や冷凍冷蔵倉庫において使用する省エネ型自然冷媒機器の普及促進等を行っている。また、共同輸配送やモーダルシフトの促進や、輸送能力が高く、高速走行が可能な新型コンテナ貨車の導入補助等を実施したほか、省エネ船の建造促進等内航海運・フェリーの活性化に取り組んでいる。加えて、「エコレールマーク」(平成30年9月末現在、商品181件(206品目)、取組み企業87件を認定)や「エコシップマーク」(31年3月末現在、荷主146者、物流事業者164者を認定)の普及に取り組んでいる。また、海上輸送と陸上輸送の結節点である港湾では、国際海上コンテナターミナルの整備、国際物流ターミナルの整備、複合一貫輸送に対応した国内物流拠点の整備等を推進することにより、貨物の陸上輸送距離削減を図っている。さらに、港湾においては、静脈物流に関する海運を活用したモーダルシフト・輸送効率化の推進、およびIoT機器等を活用し、港湾内及びその背後圏を走行するシャーシの位置等の情報の共有化を図るシステムを新たに導入するとともにマルチコンテナシャーシ等の導入促進向けた取組みを実施し、CO2の削減を図っている。
このほか、関係省庁、関係団体等と協力して、グリーン物流パートナーシップ会議を開催し、荷主と物流事業者の連携による優良事業者への表彰や普及啓発を行っている。
図表II-8-1-3 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進

(6)鉄道・船舶・航空・港湾における低炭素化の促進
1)鉄道分野の更なる環境性能向上に資する取組み
鉄道は他のモードに比べて環境負荷の小さい交通機関であるが、更なる負荷の軽減を図るため、環境省と連携した鉄軌道関連施設や鉄軌道車両への低炭素化・省エネ化に資する設備等の導入促進のほか、環境性能向上に資する技術開発を推進している。
2)海運における省エネ・低炭素化の取組み
内航海運においては、省エネに資する船舶の建造等の促進、革新的省エネ技術の実証支援等により、船舶の省エネ・低炭素化を促進している。また、国際海運においても、地球温暖化対策を加速するため、平成30年4月に国際海事機関(IMO)において、今世紀中可能な限り早期に温室効果ガス(GHG)排出をゼロにする長期目標等を含む「IMO GHG削減戦略」が、我が国主導の下、採択された。この目標達成のための具体的な国際枠組の策定に向け、世界有数の海運・造船大国である我が国としては、地球温暖化対策に貢献しつつ、海事産業が持続的に発展できるよう、30年8月に産学官公連携の「国際海運GHGゼロエミッションプロジェクト」を立ち上げた。本プロジェクトでは、GHG排出ゼロの早期実現に向けた、革新的な省エネ技術や脱炭素技術の開発・普及に向けたロードマップを31年度中にとりまとめるとともに、省エネ船舶への代替建造等を促す新たな国際制度案をとりまとめ、5年以内のIMOでの合意を目指し、取り組んでいくこととしている。
3)航空分野のCO2排出削減の取組み
飛行時間・経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)、運航者が希望する最も効率的な高度を飛行できるUPR注3方式の導入、最小のエンジン推力を維持し、降下途中に水平飛行を行うことなく継続的に降下する継続降下運航(CDO)方式の導入等の航空交通システムの高度化や、航空機用地上動力設備(GPU)の利用促進、空港内GSE注4車両のエコカー化等のエコエアポートづくりを推進している。また、令和3年から始まる国際航空分野におけるCO2排出権取引制度に向けた国際的な議論を主導するとともに、同制度の本邦における導入に先立ち航空運送事業者に平成31年以降の排出量の報告体制を構築させている。さらに、多様な関係者と協力しつつ代替航空燃料の普及促進に係る取組みを進めている。
4)港湾における総合的低炭素化の推進
世界に先駆けた「カーボンフリーポート」の実現を目指し、洋上風力発電の導入、船舶・荷役機械・トレーラ等の輸送機械の低炭素化や陸上給電設備の導入等の「CO2排出源対策」を行うとともに、鉄鋼スラグ等の産業副産物を有効利用したブルーカーボン生態系(藻場等)の活用等による「CO2吸収源対策」を促進している。
(7)住宅・建築物の省エネ性能の向上
民生部門のエネルギー消費量は、他の部門に比べると増加が顕著であり、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上は喫緊の課題である。
エネルギー基本計画等において2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化することとされたこと等を踏まえ、住宅以外の一定規模以上の建築物の省エネ基準への適合義務等の規制措置を講ずる「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が29年4月に全面施行された。また、住宅・建築物の省エネルギー性能の一層の向上を図るため、省エネ基準への適合義務の対象となる建築物の範囲を中規模建築物に拡大することなどを内容とする「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律案」が平成31年通常国会に提出された。
さらに、省エネルギー性能を消費者に分かりやすく表示するため、住宅性能表示制度、建築環境総合性能評価システム(CASBEE)、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)等の充実・普及を図っている。
このほか、先導的な省CO2技術の導入や省エネ改修、中小工務店等が連携して建築するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や認定低炭素建築物等の取組みに対する支援を行うとともに、(独)住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを活用した金利引下げ等を実施している。また、民間事業者等の先導的な技術開発の支援、設計・施工技術者向けの講習会の開催等により、省エネ住宅・建築物の設計、施工技術等の開発・普及を図っている。
さらに、既存ストックの省エネ対策を促進するため、既存住宅・建築物の省エネ改修工事に対する税制上の支援措置等を講じている。
(8)下水道における省エネ・創エネ対策等の推進
高効率機器の導入等による省エネ対策、下水汚泥の固形燃料化等の新エネ対策、下水汚泥の高温焼却等による一酸化二窒素の削減を推進している。
(9)建設機械の環境対策の推進
燃費基準値を達成した油圧ショベル、ブルドーザ等の主要建設機械を燃費基準達成建設機械として認定しており、平成30年4月からは新たに小型油圧ショベルを対象に加えた。一方、これらの建設機械の購入に対し支援を行っている。
(10)都市緑化等によるCO2の吸収源対策の推進
都市緑化等は、京都議定書に基づく温室効果ガス吸収量報告の対象となる「植生回復活動」として位置付けられており、市町村が策定する緑の基本計画等に基づき、都市公園の整備や、道路、港湾等の公共施設や民有地における緑化を推進している。
また、地表面被覆の改善等、熱環境改善を通じたヒートアイランド現象の緩和による都市の低炭素化や緑化によるCO2吸収源対策の意義や効果に関する普及啓発にも取り組んでいる。
注1 Compressed Natural Gas自動車(天然ガス自動車)のこと
注2 貨物トンを1km輸送するときに排出されるCO2の量
注3 User Preferred Route
注4 Ground Service Equipment