コラム 関西国際空港連絡橋へのタンカー衝突事故を踏まえた再発防止の取組み  平成30年9月4日、台風第21号が非常に強い勢力で関西地方に上陸しました。荒天を避けるために関西国際空港周辺海域に錨泊していたタンカーが走錨し、同空港連絡橋に衝突しました。これにより、船舶交通の安全が阻害されるとともに、同空港へのアクセスが遮断されるなど、人流・物流に甚大な影響が発生しました。  これまで海上保安庁では、同空港周辺海域における荒天時の錨泊について、関空島の陸岸から3海里(約5.6km)以上離れるよう海域利用者に対して指導を行ってきました。また、同空港連絡橋への衝突前には、大阪湾海上交通センター等から当該タンカーを含む複数の船舶に対し、船舶電話等により累次にわたり走錨注意の指導を行いました。事故発生後は、当該タンカーに取り残された乗組員2名を吊り上げ救助し、民間のタグボートと連携の上、乗組員11名を救助するとともに、直ちに原因調査及び再発防止対策の検討を始めました。  同年10月、「荒天時の走錨等に起因する事故の再発防止に係る有識者検討会」を設置し、有識者を交えた再発防止策の検討を開始しました。同年12月末に中間報告が取りまとめられ、「関西国際空港周辺海域における荒天時の走錨等については、法規制をもって再発防止にあたるべき」との提言がなされたことを踏まえ、平成31年1月31日より同空港周辺海域での法規制の運用を開始しました。また、平成31年3月19日の報告で、「海域を取り巻く環境等を勘案しつつ、海事関係者及び関係地方公共団体等とともに、検討が必要な海域の事故防止対策を進めていくべき」との提言を受け、関西国際空港周辺以外の海域における再発防止のための対策を検討していきます。  さらに、海上保安庁では、「重要インフラの緊急点検の結果及び対応方策(平成30年11月27日重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議報告)」を実施し、その結果を踏まえ今後、海域監視体制の強化が必要な海域について、走錨(注)等に起因する重大事故の発生を防止するための対策を実施していきます。  注 風などの船に働く外力が、錨が船を一定の場所に留める力より大きいとき、錨が海底をすべってしまうこと。