■2 国際機関等への貢献と戦略的活用 (1)アジア太平洋経済協力(APEC)  APECは、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化、ビジネスの円滑化、経済・技術協力等の活動を行う経済協力の枠組みであり、国土交通省では、APECの交通・観光分野に係る大臣会合及び作業部会に積極的に取り組んでいる。  交通分野では、地域内のモノと人の流れを円滑化し貿易と投資を支えるべく交通大臣会合が開催されている。  平成29年10月にパプアニューギニアで開催された第10回APEC交通大臣会合では、強靱的且つ持続可能な交通やイノベーションを通じた地域連結性をテーマとした議論が行われ、我が国からは、「インフラプロジェクトにおけるPPPの促進」のテーマでプレゼンテーションを行い、これらの議論が共同大臣宣言として取りまとめられた。  また、APECの交通分野を取り扱う作業部会「APEC交通ワーキンググループ」の第46回会合が30年10月にペルーにて開催され、APEC域内の交通分野における自由化・円滑化、保安、安全等について議論された。  国内では、28年5月のG7伊勢志摩サミットで採択された「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」を踏まえ、31年3月に、APEC加盟国・地域における「質の高いインフラ投資」の理解の醸成や国際的スタンダード化及びスマートシティ推進を図るため、APEC加盟国・地域のインフラ担当省庁幹部を招聘し、「APEC質の高いインフラ東京会議」を開催し、「質の高いインフラ」を海外へ発信すると共にAPEC域内のスマートシティ推進に貢献した。 (2)東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力  国土交通省は、ASEANにおける「質の高い交通」をさらに推進するため、平成15年に創設された日本とASEANの交通分野の協力枠組みである「日ASEAN交通連携」の下、国際的な道路網を支える舗装技術や過積載管理技術に関する共同研究、港湾技術に関する共同研究、マラッカ・シンガポール海峡における水路再測量・海図整備、ASEAN地域訓練センターにおけるVTS管制官の育成、航空セキュリティ体制支援等、陸上、海上、航空にわたる様々な協力プロジェクトを実施している。これらのプロジェクトの進捗状況について確認するとともに、今後の方向性、新たなプロジェクトについて議論するため、「日ASEAN交通大臣会合」等の会合が毎年開催されている。  30年11月にタイ・バンコクで開催された「第16回日ASEAN交通大臣会合」においては、「日ASEAN交通連携」の具体的実施計画である「日ASEAN交通連携ワークプラン 2018-2019」とともに、「道路交通安全」、「モバイル・ビッグデータの活用」の2つの新規協力プロジェクトが承認された。また、これまでのプロジェクトの成果物として、「日ASEAN グリーン物流優良事例集」、「「日ASEANコールドチェーン物流ガイドライン」、「ASEAN国際幹線道路向け道路舗装技術資料」、「航空保安のための日 ASEAN 地域行動計画(RRMAS)」の4つが承認された。  30年11月にシンガポールで開催された「日ASEAN首脳会議」においては、「2019年にASEANスマートシティネットワーク(ASCN)ハイレベル東京会合をシンガポールと協同して開催する」旨が議長声明に盛り込まれ、ASEANでのスマートシティに係る取組みの実現に向け日本が協力していくことを確認した。 (3)経済協力開発機構(OECD)  国土交通省では、OECDの活動のうち、国際交通フォーラム(ITF)、交通研究センター(TRC)、造船部会、地域開発政策委員会(RDPC)並びに観光委員会に参画している。  ITFは、59ヵ国の交通担当大臣を中心に、年1回、世界的に著名な有識者・経済人を交え、交通政策に関するハイレベルかつ自由な意見交換を行うITF交通大臣会合を開催しており、これまで、交通分野に関する気候変動問題、自動運転やインフラファイナンス等に関して議論を行ってきた。平成30年5月の大臣会合では、「交通の安全と安心」をテーマとして、COP23を踏まえた気候変動対策やデジタル化の進展を踏まえた政策面での対応・協調等について、様々な角度から議論が行われた。  TRCでは、加盟国に共通した政策課題について調査研究を行っており、我が国からも、我が国が提案し採択された道路の賢い使い方のワーキンググループ等に参画し、平成30年10月にはワークショップを東京で開催して、ビックデータの分析に基づくピンポイント対策や、道路ネットワークを最適化する交通マネジメントなどについて、様々な角度から議論が行われた。  造船部会は、造船に関する唯一の多国間フォーラムであり、国際造船市場に関する政策協調のため重要な役割を担っている。現在、造船業界においては、世界的供給過剰が問題となっているところ、同部会では、供給過剰問題に対処するとともに、市場を歪曲する公的助成を防止するための国際規律の策定等についての議論を行っている。  RDPCでは、国土・地域政策等に関する各加盟国の政策レビューや、都市と地域における生産性の向上などに関する調査等に積極的に取り組んでいる。平成31年3月には由木国土交通審議官が閣僚級会合に出席し、世界の中長期的な変動(メガトレンド)を踏まえた地域・都市政策のあり方についての議論に参加した。 (4)国際連合(UN) 1)国際海事機関(IMO)  IMOは、船舶の安全・環境等に関する国際ルールを定めている国連の専門機関である。我が国は、世界の主要海運・造船国として同機関の活動に積極的に参加しており、環境関係の条約を採択する委員会及び船舶設備に関する要件を審議する小委員会の議長は日本人が務めている。平成30年度には、自動運航船の安全基準等の国際ルールの検討及び旅客フェリーの火災安全を向上させるための対策の策定、国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出を今世紀中なるべく早期にゼロにする長期目標等を含む「IMO GHG削減戦略」の採択等に積極的に貢献した。 2)国際民間航空機関(ICAO)  ICAOは、国際民間航空の安全かつ秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営に向け、一定のルール等を定めている国連の専門機関の1つである。我が国は加盟国中第3位(平成30年)の分担金を負担し、また、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加し、国際民間航空の発展に寄与している。 3)国連人間居住計画(UN-Habitat)  UN-Habitatは、人間居住問題を専門に扱う国連の基金・計画の一つである。我が国は、設立以来の理事国としてUN-Habitatの諸活動に積極的に参加し、我が国の国土・地域・居住環境改善分野での経験、知見を活かした協力を通じ、世界、特にアジアでの人口爆発、急激な都市化に伴う人間居住問題の改善に貢献している。  平成30年7月から8月にかけて、UN-Habitat、福岡市及び国土交通省が連携し、「Global Action 2018 -Sustainable Urbanization Week-」と題し、「都市と国土計画に係る国際シンポジウム」等、国土・都市政策に関する3つの会議を福岡市で開催した。この期間、世界各国から、政府・地方公共団体関係者、国際機関、専門家等、国土・都市政策に関わる様々なステークフォルダーが一堂に会し、国・都市レベルで「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた議論が行われ、我が国としても、SPPの取組みを通じて貢献していく旨表明した。 4)国連における水と防災に関する取組み  「水と災害に関する有識者・指導者会議」の第11・12回会合及び「水と災害に関する国際シンポジウム」に参加し、水関連災害に関する国際的な意識の高揚、経験や知見の共有、各国施策を前進させるための国際社会の取組みを議論した。また、平成30年11月に国連で採択された「水の国際行動の10年」中間評価決議に、我が国が支援する「国連水と災害に関する特別会合」が初めて記載され、水関連災害の重要な国際取組みとして国連加盟国に留意されることとなった。 5)持続可能な開発目標(SDGs)  平成27年9月の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたことを受け、28年12月に安倍総理を本部長とするSDGs推進本部が、我が国におけるSDGsの実施のための指針(SDGs実施指針)を決定し、30年12月に「SDGsアクションプラン2019」を公表した。国内外における持続可能な開発の実現に向けて、国土交通省においても「質の高いインフラ投資の推進」等の関連施策を通じて、SDGsの達成に向けて取り組みを行っていく。 6)国連における地理空間情報に関する取組み  国連経済社会理事会に設置されている地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UN-GGIM)に参加し、我が国の経験を活かし、地球規模の測地基準座標系(GGRF)の構築等に貢献している。また、我が国はUN-GGIMアジア太平洋地域委員会(UN-GGIM-AP)の副会長、及び、測地基準座標系に関する作業部会長として、国連における地理空間情報に関する取組みに寄与している。 (5)世界銀行(WB)  国土交通省は、各国インフラ関係者に対する「質の高いインフラ投資」の効果的な情報発信のため、平成30年11月、平成31年1月及び2月に、世界銀行が実施する各国の都市開発担当者を対象とした招聘事業において、日本の都市開発に関する知見を紹介した。 (6)アフリカ開発会議(TICAD)  平成28年8月、アフリカの地で初めてTICAD VIが開催され、「質の高いインフラ投資」の重要性等に言及した「ナイロビ宣言」が採択された。同宣言や、同会議にあわせて開催した「日・アフリカ官民インフラ会議」の際に日・アフリカ各国の閣僚級で採択した「『質の高いインフラ投資』の推進のためのリーダーズ・ステイトメント」を踏まえ、アフリカにおける「質の高いインフラ投資」を推進するために、官民インフラ会議等の取組みを進めている。31年に日本でTICAD7の開催が予定されており、これに向けて「質の高いインフラ投資」に対する理解を促進する取り組みを加速していく。