第II部 国土交通行政の動向 

7 不動産業の動向と施策

(1)不動産業を取り巻く状況
 不動産業は、全産業の売上高の2.2%、法人数の10.6%を占めている重要な産業の一つである。不動産市場は、バブルの崩壊以降、平成4年から公示地価が全国平均で15年連続で下落していたが、景気回復・都心回帰の動きの中、19年には三大都市圏及び地方ブロック中心都市の地価上昇等により、上昇となった。また、不動産証券化市場は、これまで企業資産のオフバランス化の進展や低金利が続く中での不動産の投資ニーズの高まり等を背景として拡大が続いている。

(2)「宅地建物取引業法」の的確な運用
 宅地建物取引に係る消費者利益の増進を図るため、「宅地建物取引業法」の的確な運用により、消費者保護の徹底に努めている。
 国土交通省及び都道府県は、関係機関と連携しながら苦情・紛争の未然防止に努めるとともに、同法に違反した業者には、厳格な監督処分を行っており、平成18年度の監督処分件数は337件(免許取消し180件、業務停止65件、指示92件)となっている。
 先般の構造計算書偽装問題を踏まえ、新築住宅の売主等の瑕疵担保責任の履行の実効性を確保するため、19年の通常国会において「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が成立した。同法により「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に定める新築住宅の売主等が負う10年間の瑕疵担保責任を前提として、当該瑕疵担保責任を負う宅地建物取引業者等に対し、新たにその履行を確保するための供託又は保険加入による資力確保措置を義務付けることとした。

(3)マンション管理業者による適正な管理の確保
 マンションストックの増大に伴い、その適正な管理を図るため、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づき、マンション管理業者の登録制度や業務規制を実施している。また、マンション管理業者による法令遵守の向上を促進し、不正行為の未然防止を図る観点から、マンション管理業者に対する立入検査を実施している。

(4)不動産市場の活性化
1)不動産市場の現状
 国民経済計算によれば、我が国における不動産市場(土地市場も含む。以下同じ)の市場規模は、平成18年末現在で、法人所有、個人所有、国・地方等の公的セクター所有の総計で約2,200兆円となっているが、その中でも、不動産証券化の市場規模が引き続き拡大している。Jリート(不動産投資法人)、不動産特定共同事業、特定目的会社等により証券化された不動産の資産額累計は、17年度末には約25兆円、18年度末には約33兆円と拡大している。
 Jリートは、ミドルリスク・ミドルリターンの商品として、低金利下の運用難の状況において、投資の多様化にも寄与しており、19年12月末現在、42銘柄のJリートが上場し、約679万口、約5兆1,429億円の不動産証券が流通している。Jリートにより取得された総資産の額は約6兆8,700億円となっている。また、保有物件の用途は、オフィス、住宅の割合が多いものの、近年、商業施設、介護施設などオペレーションを必要とする物件に多様化している。また、取得した物件の所在地については、地方圏でも着実に資産の取得が進んでいるが、依然として東京圏が中心となっている。
2)不動産市場の条件整備
 不動産証券化は、投資単位の小口化を可能にし、約1,500兆円といわれる個人金融資産を不動産市場に呼び込むことにより、その活性化を促進するものであり、土地の流動化、経済の活性化にも大きく貢献するものである。しかしながら、不動産市場の透明性が確保されていなければ、市場に対して長期・安定的な資金が流入せず、不動産市場の持続的な発展も望めない。
 このため、国土交通省では、不動産市場の透明化、取引の円滑化・活性化等を図るため、取引価格等の調査・公表を行っている。この調査は、平成17年度から三大都市圏の政令指定都市を中心に開始し、18年度は、調査対象地域を全国の政令指定都市に拡大し、19年度からは全国の県庁所在都市など地価公示対象地域において調査を実施している。調査によって得られた情報は、個別の物件が特定できないよう配慮した上で、取引された不動産の所在、面積、価格等をインターネット(土地総合情報システム(注1))を通じて公表している(20年1月現在の情報提供件数は、219,546件、アクセス件数は、4,184万件以上。)。
 19年10月からは、公表内容に最寄り駅までの所要時間、前面道路の幅員・方位・種類、容積率等を追加し、取引価格情報を公表する地区単位ごとに地価公示価格等を見ることができるようにしている。
 また、指定流通機構(レインズ(注2))が保有する取引価格情報の加工情報を、19年4月よりインターネット(不動産取引情報提供サイト(注3))を通じて提供している。さらに、宅地建物取引業者が取り扱う物件情報を、網羅的に消費者へ提供する不動産統合サイト(不動産ジャパン(注4))を不動産業界が一体となって整備しており、国土交通省としても引き続きこの取組みを支援している。
 
図表II-5-4-13 土地総合情報システム

図表II-5-4-13 土地総合情報システム

3)税制の活用
 平成20年度税制改正においては、土地の売買による所有権の移転登記等に係る登録免許税の特例措置について、税率の見直しを行った上、適用期限を延長することとしている。また、Jリート等に係る登録免許税の特例措置についても、税率の見直しを行った上、適用期限を延長することとしている。さらに、認定中心市街地、都市再生緊急整備地域又は都市再生整備計画の区域において中高層耐火建築物である住宅以外の特定の用途に供する家屋を新築した場合の不動産取得税について、課税標準の特例措置を講ずることとしている。
4)事業用定期借地権の活用
 社会経済情勢の変化に伴う土地の利用形態の多様化に対応するため、平成20年1月1日より事業用定期借地権の存続期間の上限を20年以下から50年未満に延長する改正借地借家法が施行された。
5)新しい時代に対応した不動産市場の構築に向けて
 投資家保護の観点から証券化対象不動産の鑑定評価実務の適正な遂行を図るため、国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評価部会等において検討を行い、証券化対象不動産の鑑定評価基準を新たに策定(平成19年7月1日施行)し、適用状況についてのモニタリングを実施していくこととした。また、海外投資不動産鑑定評価ガイドライン、不動産市場データベースの構築について、検討を行っている。
 また、19年5月に取りまとめられた社会資本整備審議会産業分科会不動産部会の第二次答申を踏まえ「投資家に信頼される不動産投資市場確立フォーラム」が設置され、関係業界、有識者、行政等が連携して、Jリートによる海外不動産投資の実現等、不動産投資市場が一層健全に発展するために必要な環境整備について検討を行っている。
 さらに、19年度においては、不動産証券化に関する講習会及び社会実験への支援を通じ、地方における証券化のノウハウ蓄積と人材育成を図り、地方不動産証券化市場の裾野を拡大することで、土地の流動化と地域の活性化を促進している。


(注1)http://www.land.mlit.go.jp/webland/
(注2)宅地建物取引業者が指定流通機構に物件情報を登録し、業者間で情報交換を行う仕組み。成約した物件の取引価格情報等は指定流通機構に蓄積される。
(注3)http://www.contract.reins.or.jp/
(注4)http://www.fudousan.or.jp/

 

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