第II部 国土交通行政の動向 

第2節 建築物の安全性確保

(1)住宅・建築物の生産・供給システムにおける信頼確保
 平成17年11月に明らかとなった構造計算書偽装問題は、一級建築士が構造計算書を偽装し、多数のマンション等の耐震性に大きな問題を発生させ、居住者等の安全と居住の安定に大きな支障を与えただけでなく、国民の間に建築物の耐震性に対する不安を広げ、また、建築確認・検査制度及び建築士制度への国民の信頼を大きく失墜させることとなった。
 このような事件の再発を防止し、法令遵守徹底と建築士等による適正な建築活動の確保を図り、国民が安心して住宅の取得や建築物の利用ができるよう、早急に制度の見直しを図っている。
 18年6月には、建築確認・検査制度を見直すため、1)高度な構造計算を要する一定規模以上の建築物等に対する構造計算適合性判定の義務付け等による建築確認・検査の厳格化、2)特定行政庁の立入検査の実施等による指定確認検査機関の業務の適正化、3)建築士等に対する罰則の大幅強化等を内容とする「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律」が成立し、19年6月に施行された。また、18年12月には、建築士制度の抜本的見直しを行うため、1)建築士に対する定期講習の受講義務付け等による建築士の資質・能力の向上、2)一定規模以上の建築物について構造設計一級建築士等による法適合チェックの義務付けによる構造設計等の適正化、3)管理建築士の要件強化、設計受託契約等の締結前の重要事項説明の実施等による建築士事務所の業務の適正化等を内容とする「建築士法等の一部を改正する法律」が成立した。
 また、住宅取得に対する不安が強まる中、新築住宅に瑕疵が発生した場合においても確実に瑕疵担保責任が履行されるよう、19年5月には、1)建設業者及び宅地建物取引業者に対する資力の確保(住宅瑕疵担保保証金の供託又は住宅瑕疵担保責任保険契約の締結)の義務付け、2)国土交通大臣による住宅瑕疵担保責任保険契約の引受けを行う法人の指定、3)住宅瑕疵担保責任保険契約に係る新築住宅に関する紛争の処理体制の整備等を内容とする「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が成立した。
 なお、改正建築基準法の施行後、建築確認手続が遅延し、建築着工が大幅に減少するなどの影響があったため、設計側・建築確認審査側双方の関係者に対するきめ細かな情報提供や技術的支援等を進め、さらに、構造設計について個別に相談に応じるサポートセンターの開設、構造計算適合性判定機関の業務の効率化等により、影響を一時的なものにとどめるよう取り組んでいる。

(2)エレベーター及び遊戯施設に係る事故への適切な対応
 平成18年6月の東京都港区のエレベーターにおける死亡事故等を受け、社会資本整備審議会建築物等事故・災害対策部会は、P波感知型地震時管制運転装置の義務化等を内容とする「エレベーターの地震防災対策の推進について」を建議し、同年9月には安全基準・定期検査報告制度の見直し等を内容とする中間報告「エレベーターの安全確保について」を取りまとめた。これらや、同年5月に大阪府吹田市で発生したコースターにおける死亡事故等、近年の事故多発を受け、国土交通省では、エレベーター及び遊戯施設の安全確保について具体的な施策の検討を行っている。

 

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