4 我が国の海洋権益の保全 (1)海洋権益を保全するための警備活動  我が国を囲む領海、排他的経済水域等においては、一部境界が未画定であることに起因する問題が生じているが、海洋権益の保全のためには、領土の保全のみならず、海洋における秩序の維持が極めて重要である。  海上保安庁では、我が国の領海及び排他的経済水域において、巡視船艇・航空機によるしょう戒を行い、我が国の権益を侵害する外国船舶等に対し、厳正に警備を行っている。  一例として、平成19年10月に、中国人活動家が抗議船に乗船し、尖閣諸島の領有権主張活動を行ったが、巡視船による厳正かつ適切な対応により上陸を阻止している。 (2)日本海における海洋調査への取組み  平成18年以来、日韓が主張するそれぞれの排他的経済水域(EEZ)が重複している水域(重複水域)内の海底地形に、韓国が韓国語名称を国際登録しようとする動きがある。18年4月、海上保安庁はこの動きへ対応するため同重複水域内の海底地形調査を計画したが、韓国側が反発、外交交渉の結果、韓国が同年6月の国際会議「海底地形名小委員会(SCUFN)」への地名提案を見送ることになったことから、我が国は調査を中止した。19年、韓国が重複水域内の海底地名を再び7月のSCUFNへ提案する動きが見受けられたものの、最終的には見送られた。  この問題に関連し、18年、我が国が毎年実施してきた日本海等における放射能調査のうち重複水域の調査について、韓国側の反発を受け、外交交渉の結果、同年10月に海上保安庁の測量船と韓国の調査船により共同で調査を行った。また、19年にも外交経路による調整の結果、同年9月に日韓共同で同調査を実施した。  海上保安庁は、引き続き日本周辺海域における適正な海図の作成に努めるとともに、我が国領海、EEZの海洋管理を的確に行うため、調査データの不足している水域において、海洋調査を優先的、重点的に実施していく。 (3)大陸棚の限界画定のための調査の推進  国連海洋法条約は、沿岸国の200海里までの海底等を大陸棚とするとともに、海底の地形・地質が一定条件を満たす場合、200海里を超えて大陸棚を設定することが可能であるとしている。そのためには、「大陸棚の限界に関する委員会」へ大陸棚の地形・地質に関するデータ等を提出し、同委員会の勧告に基づいて大陸棚の限界を設定する必要がある。我が国は、平成21年5月までに委員会へデータ等を提出するため、総合海洋政策本部の総合調整の下、関係省庁が連携し、大陸棚の限界画定に必要な調査等を推進している。海上保安庁は、19年度、南鳥島周辺等における精密海底地形調査、大東島周辺海域及び南鳥島周辺海域における地殻構造探査を実施した。 図表II-6-4-5 国連海洋法条約による大陸棚の定義 (4)沖ノ鳥島の保全  沖ノ鳥島は、我が国最南端の領土であり、国土面積を上回る約40万km2の排他的経済水域の権利の基礎となる極めて重要な島であることから、国土保全・利活用の重要性にかんがみ、国の直轄管理により十全な措置を講じるとともに、その前提の上に可能な利活用策を検討していく。