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国土交通白書 2020

第5節 新技術をさらに活用するために

■1 現状や将来予測に基づく課題

(1)日本企業の存在感の低下

 1989年(平成元年)には、日本は世界企業の時価総額ランキングの上位10社中7社を占めていたが、日本経済の長引くデフレや技術革新の進展に伴うIT分野の急成長などにより、近年はGAFA等のデジタルプラットフォーマーが上位に台頭し、2018年には日本企業はトヨタ自動車㈱の35位が最高となっている(図表I-3-5-1)。

図表I-3-5-1 世界企業の時価総額ランキング
図表I-3-5-1 世界企業の時価総額ランキング
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(2)生活への浸透の遅れ

(テレワーク)

 テレワークは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方である。女性、高齢者、障害者等多様な人材の就業機会の拡大、仕事と育児、介護などとの両立、ワーク・ライフ・バランスの実現、都市部での通勤混雑の緩和、自動車利用の減少によるCO2の排出削減、UJIターン、二地域居住等を可能にすることによる地域活性化、自然災害や感染症の発生といった非常時における事業の継続などの実現に寄与することができる利点があり、普及・浸透を図っていく必要がある。しかし、日本では、諸外国と比べてテレワークの普及が遅れている。米国ではテレワーク導入企業が2015年(平成27年)時点で85%である(図表I-3-5-2)一方、日本では2018年時点で19.1%と非常に低い水準となっている(図表I-3-5-3)。2020年には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、不要不急の外出を避けるとともに、テレワークが推奨されたため、普及が加速していると考えられるが、これを機に我が国において一層のテレワークの浸透・定着を図るために、更なる環境整備が必要である。

図表I-3-5-2 テレワークの導入状況の国際比較
図表I-3-5-2 テレワークの導入状況の国際比較
図表I-3-5-3 日本におけるテレワークの導入状況
図表I-3-5-3 日本におけるテレワークの導入状況

(キャッシュレス決済)

 キャッシュレス化は、消費者には、消費履歴のデータ化により家計管理が簡易になる、大量に現金を持ち歩かずに買い物ができるなどの利点があり、事業者には、レジ締めや現金取扱いの時間の短縮、キャッシュレス決済に慣れた外国人観光客の需要の取り込み、データ化された購買情報を活用した高度なマーケティングの実現などの利点がある。このように、キャッシュレス化は、消費者に利便性をもたらし、事業者の生産性向上につながる取組みであるため、推進していく必要がある。しかし、2016年(平成28年)における世界各国のキャッシュレス決済比率を比較すると、韓国では90%超、主要各国では40~60%であるのに対して、日本は約20%と非常に低い水準であった(図表I-3-5-4)。その後も徐々にキャッシュレス化が進んではいるものの、2018年時点で24.1%であり、依然として諸外国よりも低い水準である(図表I-3-5-5)。政府としても、2019年の消費増税時には、需要平準化のために「キャッシュレス・ポイント還元事業」を創設するなど、キャッシュレス化を推進している。

図表I-3-5-4 世界各国のキャッシュレス比率比較
図表I-3-5-4 世界各国のキャッシュレス比率比較
図表I-3-5-5 我が国のキャッシュレス支払額及び比率の推移
図表I-3-5-5 我が国のキャッシュレス支払額及び比率の推移