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国土交通白書 2020

第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■1 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に

(1)魅力ある公的施設・インフラの大胆な公開・開放

 首都圏外郭放水路の見学会のコース数を増加させるなど、インフラを観光資源として活用・開放し地域振興を図るインフラツーリズムを推進した。

(2)景観の優れた観光資産の保全・活用による観光地の魅力向上

 良好な景観の形成や観光振興、安全で快適な通行空間の確保、道路の防災性の向上等の観点から、低コスト手法の普及、事業期間の短縮、固定資産税の特例措置の拡充などにより、無電柱化推進計画に基づき無電柱化を推進した。

 また、全都道府県・市区町村を対象にした講習会等の開催等により、主要な観光地の市町村等における景観計画の策定を促進するとともに、国営公園で案内板の多言語化等を実施した。

 河川においては「河川敷地占用許可準則」の緩和措置等により、民間事業者等による河川空間の活用を支援し、旅行者を魅了する空間形成を推進した。

(3)古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりの推進

 古民家等の歴史的資源を宿泊施設等に活用し地域の活性化に繋げるため、関係省庁と連携し、ワンストップ窓口での地域からの相談対応や、専門家の派遣等の支援を行っている。

 また、不動産証券化を活用したモデル事業の実施や、実務に関する講習の実施等を通じて、不動産証券化事業の担い手を育成することにより、古民家等の再生を促進している。

(4)新たな観光資源の開拓

 訪日外国人旅行者の旅行消費額増加に向け、地域固有の観光資源を活用した新たな体験型観光コンテンツを開拓・育成する事業を実施した。

(5)広域周遊観光の促進

 訪日外国人旅行者等の各地域への周遊を促すため、調査・戦略策定からそれに基づく滞在コンテンツの充実、受入環境整備、情報発信・プロモーション等、地域の関係者が広域的に連携して観光客の来訪・滞在促進を図る取組みを支援している。また、地域の魅力・課題の発見や施策提案、関係者のスキル向上等に助言するため、地域へ専門家を派遣している。

 また、国内外の旅行者に地方誘客動機を促し、新たな消費活動を創出するため、郷土食や温泉地、星空鑑賞など、全国各地に点在する共通のテーマを観光資源としてそれぞれの拠点をネットワーク化し、情報発信の強化や受入体制整備を図る取組みを「テーマ別観光による地方誘客事業」により支援している。

 さらに、令和2年3月、訪日外国人の移動の実態(利用交通機関や周遊ルート等)が把握できるFF-Dataについて最新1年分(2018年分)を公表した。これにより、周遊ルートの分析や戦略的なプロモーション施策の企画立案・見直しへの活用が期待される。

 このほか、北海道や沖縄においてビッグデータを活用しつつ、既存の道路や駐車場の容量・空間を賢く使い、即効性のある渋滞対策の強化に取り組んだ。加えて、国内外のサイクリストの全国各地への誘客を図るため、官民連携による先進的なサイクリング環境の整備を目指すモデルルートの取組みを推進した。また、日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングロードについて国内外へPRを図るナショナルサイクルルート制度を令和元年9月9日に創設し、走行環境の整備及びサイクルツーリズム推進に向けたソフト施策の取組みが一定程度進んでいる、つくば霞ヶ浦りんりんロード、ビワイチ、しまなみ海道サイクリングロードを11月7日に第1次ナショナルサイクルルートに指定した。

(6)「観光立国ショーケース」の形成推進

 訪日外国人旅行者を地方へ誘客するモデルケースを形成するため、釧路、金沢、長崎の3市を選定し、各市における観光立国ショーケース実施計画に基づく取組みを支援している。

(7)東北の観光復興及び各自然災害への対応

 東北の観光復興の取組みを一層推進するため、平成28年を「東北観光復興元年」とし、各種施策を推進している。また、2019年は「山形県沖を震源とする地震」、「令和元年房総半島台風(台風第15号)・令和元年東日本台風(台風第19号)」等大規模な災害が相次いで発生し、各観光地において深刻な影響を及ぼした。観光庁では、これら災害による風評被害等の影響を最小限に留めるべく、各種観光支援策を講じた。

  1. 注 東北の観光復興については、第1章第4節(2)を参照。