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国土交通白書 2020

第3節 利便性の高い交通の実現

第3節 利便性の高い交通の実現

(1)都市・地域における総合交通戦略の推進

 安全で円滑な交通が確保された集約型のまちづくりを実現するためには、自転車、鉄道、バス等の輸送モード別、事業者別ではなく、利用者の立場でモードを横断的にとらえる必要がある。このため、地方公共団体が公共交通事業者等の関係者からなる協議会を設立し、協議会において目指すべき都市・地域の将来像と提供すべき交通サービス等を明確にした上で、必要となる交通施策やまちづくり施策、実施プログラム等を内容とする「都市・地域総合交通戦略」を策定(令和2年3月現在112都市で策定・策定中)し、関係者がそれぞれの責任の下、施策・事業を実行する仕組みを構築することが必要である。国は、同戦略に基づき実施されるLRT等の整備等、交通事業とまちづくりが連携した総合的かつ戦略的な交通施策の推進を支援することとしている。

(2)公共交通の利用環境改善に向けた取組み

 地域公共交通の利用環境改善や訪日外国人旅行者の受入環境整備を促進するために、LRT、BRT、ICカードの導入等を支援している。令和元年度においては、松浦鉄道、長崎電気軌道及び沖縄都市モノレールでICカードシステムの導入等が行われている。

(3)都市鉄道ネットワークの充実

 大都市圏における鉄道の通勤・通学時の混雑は、新線整備、複々線化、車両の長編成化等の取組みの結果、大きく改善しているものの、依然として混雑の激しい区間も存在する。このため、近年では、各鉄道事業者は運行本数増や車両増備等のハード面の対策に加え、通勤時間帯の混雑状況の発信や時差通勤によるポイント・クーポンの付与等のソフト対策にも取り組んでいる。また、国土交通省としても、最混雑時間帯に加え前後の1時間の平均混雑率(ピークサイド)についても平成30(2018)年度より公表を開始し、混雑の見える化を進めているところである。引き続き、各鉄道事業者との連携を深めつつ、混雑緩和に向けた対策を進めていく。

 また、既存の都市鉄道ネットワークを有効活用しつつ速達性の向上を図ること等を目的とする都市鉄道等利便増進法を活用し、神奈川東部方面線(相鉄~JR・東急直通線)の整備を進め、令和元年11月には相鉄・JR直通線が開業した。引き続き、4年度開業に向けて相鉄・東急直通線の整備を進めていく。

 平成28年4月には交通政策審議会答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」が取りまとめられ、国際競争力の強化に資する都市鉄道等、東京圏の都市鉄道が目指すべき姿が示されたところであり、その実現に向けた取組みを推進していく。

図表II-5-3-1 三大都市圏における主要区間の平均混雑率・輸送力・輸送人員の推移
図表II-5-3-1 三大都市圏における主要区間の平均混雑率・輸送力・輸送人員の推移
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(4)都市モノレール・新交通システム・LRTの整備

 少子高齢化に対応した交通弱者のモビリティの確保を図るとともに、都市内交通の円滑化、環境負荷の軽減、中心市街地の活性化の観点から公共交通機関への利用転換を促進するため、LRT等の整備を推進している。令和元年度は、富山市においてこれまで実施されてきた路面電車南北接続事業(図表II-5-3-2)が完成し開業を迎えたほか、各都市において路面電車のバリアフリー化が進められるなど、公共交通ネットワークの再構築等が進められている。

図表II-5-3-2 路面電車南北接続事業(富山市)
図表II-5-3-2 路面電車南北接続事業(富山市)

(5)バスの利便性の向上

 バスについては、公共車両優先システム(PTPS)やバスレーン等を活用した定時性・速達性の向上、バスの位置情報を提供するバスロケーションシステム、円滑な乗降を可能とするICカードシステムの導入等を行い、利便性の向上を図っている。

  1. 注 Light Rail Transitの略で、低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システム