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国土交通白書 2020

第2節 総合的・一体的な物流施策の推進

■2 国内における効率的・持続的な物流システムの構築のための施策

 環境への負荷の低減を図りつつ、我が国産業の競争力強化及び物流の生産性向上に資するよう、国内における効率的・持続的な物流網構築のための取組みを進めている。

(1)地域間物流の効率化

 複合一貫輸送等の推進に向け、港湾・貨物駅等の物流結節点の整備等を進めている。これまで鉄道貨物輸送力増強事業を行った施設整備を活用することで、更なる鉄道貨物輸送の効率化が期待される。このほか、北九州港等で海上輸送と他の輸送モードとの連携強化のため、複合一貫輸送ターミナルの整備等を実施している。

 また、トラック輸送の効率化に向けて、基幹的な道路ネットワークを整備する。

(2)都市・過疎地等の地域内物流の効率化

 「流通業務市街地の整備に関する法律」に基づき、平成31年3月末までに20都市、29箇所の流通業務市街地の整備が行われ(うち27箇所が稼働中)、流通業務施設の適切かつ集約的な立地により都市の流通機能の向上及び道路交通の円滑化を図っている。

 路上荷さばき駐車を削減するため、駐車場法に基づく駐車場附置義務条例に荷さばき駐車施設を位置付けるよう地方公共団体に促している。平成31年3月末現在で、88都市において、一定規模以上の商業施設等への荷さばき駐車施設の設置を義務付ける条例が制定されている。

 また、大規模建築物が物流を考慮した設計となるよう、物流を考慮した建築物の設計・運用の手引きを周知し、その活用を促進している。

 このほか、交通流対策として、渋滞ボトルネック箇所への集中的対策、交差点の立体化、開かずの踏切等の解消を図るとともに、「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき共同輸配送の促進等のソフト施策を併せて推進している。

 さらに、過疎地等において、物流総合効率化法の枠組みを活用し、JR北海道宗谷線及びタクシーを利用した宅配便の貨客混載事業を認定するなど地域の持続可能な物流ネットワークの構築の取組みを推進している。また、29年9月の制度改正以降、過疎地域における旅客運送と貨物運送の事業の「かけもち」による荷物の集配が開始されるなど、生産性向上を可能とする取組みが進められている。

 トラックドライバー不足が深刻化する中、宅配便の再配達削減に向けて、「COOL CHOICEできるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン」で普及啓発事業を行うとともに、今後とも宅配事業の効率化を推進するため、受取方法の更なる多様化のための支援を行うため、宅配事業者とEC事業者による連絡会等を通じ、必要な施策について検討するなど、関係省庁と連携した取組みを推進している。

(3)高度化・総合化・効率化した物流サービス実現に向けた更なる取組み

 物流分野における労働力不足、多頻度小口輸送の進展等に対応し、物流事業の省力化及び環境負荷低減を推進するため、関係者が連携した物流の総合化・効率化に関する幅広い取組みを支援することを旨とした物流総合効率化法に基づき、共同輸配送、モーダルシフト、輸送網の集約等を内容とする合計214件(令和2年3月31日現在)の総合効率化計画を認定し、運行経費等補助や税制特例措置等の支援を行った。また、物流事業者や荷主等の連携による物量の平準化及び荷姿やデータ仕様の標準化等を推進することにより、積載効率の向上や事業者間連携の円滑化等を図ることとしている。

図表II-6-2-1 令和2年3月末までに認定した総合効率化計画の実績と効果
図表II-6-2-1 令和2年3月末までに認定した総合効率化計画の実績と効果

(4)新技術(IoT、BD、AI等)の活用による“物流革命”

 物流分野における新技術の活用は、物流の在り方を根底から覆し、革命的な変化をもたらすものである。

 小型無人機(いわゆるドローン等)は離島や山間部などの過疎地域や、都市部での荷物配送等における活用が期待されており、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」において取りまとめられた「空の産業革命に向けたロードマップ」に基づき、平成30年9月に航空法に基づく許可承認の審査要領を改訂したところである。これを受け、同年10月には、補助者を配置しない目視外飛行による荷物配送が実施された。

 また、平成30年度に全国5地域で検証実験を実施するとともに、令和元年6月に有識者等から成る検討会において、過疎地域等におけるドローン物流に係るビジネスモデルを整理することで、新たな物流手段としてのドローンの導入を推進した。

 トラックの後続無人隊列走行は、ドライバー不足の解消等、生産性向上に大きな効果が期待されている。このため、平成30年1月から、後続車両が有人の隊列走行について新東名での実証実験を開始するなど、引き続き技術開発等に取り組んでいる。

(5)物流分野における働き方改革

 少子高齢化や人口減少を背景として、物流分野においても、特にトラック業界、内航海運業界を中心として高齢化が進んでおり、大量退職や、生産年齢人口の減少に伴う人材確保が困難になることへの対応が引き続き必要となる。

 トラック運送事業を含む自動車運送事業の長時間労働を是正するための環境を整備することを目的として、「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」を立ち上げ、88の施策を盛り込んだ「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」を策定し、労働生産性の向上、多様な人材の確保、育成、取引環境の適正化等の取組みを推進している。また、平成30年12月には、ドライバーの労働条件の改善等を図るため、1)規制の適正化等、2)荷主対策の深度化、3)標準的な運賃の告示制度の創設を内容とする貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律が成立した。(1)について令和元年11月、2)について同年7月、3)について同年12月から施行。)

 内航海運業界については、「交通政策審議会海事分科会船員部会」において、魅力ある職場環境づくりに向けた船員の働き方改革について議論を行っている。

  1. 注 トラックターミナル、倉庫等の物流関連施設が集約的に立地した大規模物流拠点として、高速道路インターチェンジ周辺部等の適地に建設された市街地