
国土交通白書 2020
第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進
(1)IT・ビッグデータを活用した地域道路経済戦略の推進
地域経済・社会における課題を柔軟かつ強力に解決し、成長を支えていくため、ICTやビッグデータを最大限に利活用した地域道路経済戦略を推進している。
ETC2.0が平成27年8月に本格導入され、道路交通の速度等のビッグデータを収集する体制が構築されており、ETC2.0車載器は、約493万台(令和2年3月時点)まで普及。こういった中、地域の交通課題の解消に向けて、27年12月より、全国10箇地域に学官連携で地域道路経済戦略研究会が設立され、各地域での課題を踏まえたETC2.0を含む多様なビッグデータを活用した道路政策や社会実験の実施について検討を進めている。
例えば、急増する訪日外国人観光客のレンタカー利用による事故を防止するため、外国人レンタカー利用の多い空港周辺から出発するレンタカーを対象に、ETC2.0の急ブレーキデータ等を活用して、外国人特有の事故危険箇所を特定し、多言語注意喚起看板の設置や多言語対応のパンフレットでの注意喚起等のピンポイント事故対策に取り組んでいる。
また、ETC2.0データを官民連携で活用することで、民間での新たなサービスの創出を促し、地域のモビリティサービスの強化を推進している。
(2)交通関連ビッグデータを活用した新たなまちづくり
交通関連ビッグデータ等から得られる個人単位の行動データをもとに、人の動きをシミュレーションし、滞在時間や歩行者交通量等の算出によって、施策実施の効果の定量的な把握を可能にした上で、施設配置や空間形成、交通施策を検討する計画手法「スマート・プランニング」を推進している。
令和元年度は、複数都市での検証を通じ高度なシステムへ改良を進め、評価できる施策や評価指標の充実、結果の可視化システムの改良を図るほか、土木学会のもとに設置された「スマート・プランニング研究小委員会」と連携し、産・官・学の実務者を対象とした「スマート・プランニング」の調査計画を立案するためのスキル習得を目指したセミナーを開催する等、分析手法の普及に取り組んでいる。
(3)ビッグデータを活用した地形図の修正
地形図は、国土の基本図として登山者やハイカーに利用されるとともに、様々な地図のベースとしても利用されている。この地形図の登山道をより正確に表示するため、登山者がスマートフォンで取得した経路情報(ビッグデータ)を活用して地形図を修正する取組みを進めている。令和元年度は、民間事業者との協力協定により提供されたビッグデータを活用して、全国の主な山の登山道を修正した。