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国土交通白書 2021

第1節 社会の存続基盤の維持困難化

■3 地域の生活サービスの維持困難化

( 1 )地方における人口の減少の加速

 我が国では人口減少・高齢化が深刻化している(第3節で詳述)。さらに、人口や機能の都市部への集中も進行している。これらの影響が大きい地方においては、生活に必要なサービスの存続、ひいては地域の存続自体が困難となることが懸念されている。2050年の市町村別人口推計値注1を見てみると、全市町村の約3割が2015年の人口の半数未満の人口となっている。特に、人口が半減する市町村は中山間地域等に多く見られることがわかる(図表Ⅰ-2-1-9)。

図表Ⅰ-2-1-9 2050年までに人口が半数未満となる市区町村の分布
図表Ⅰ-2-1-9 2050年までに人口が半数未満となる市区町村の分布

(注)分析対象には、福島県富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村は入っていない
資料)国土交通省

( 2 )人口規模と生活必需サービスの関係

 医療・福祉サービス、商店、教育サービス、防災体制など、生活必需サービスの維持には、一定の人口規模とアクセスのための公共交通基盤が必要である。このため、コロナ禍以前から進行する地方の人口減少は、このような地域の存続基盤と言える生活必需サービスの維持を困難化している。

 さらに、前述した通り、地域公共交通は、コロナ禍以前から経営が困難化していたが、コロナ禍により利用者がさらに減少しているとともに、コロナ禍収束後においてもコロナ禍以前と同等まで回復しないおそれがあるなど、経営環境が非常に厳しい状況となっている。これにより、人口減少及び都市集中と相まって、生活必需サービスの維持が困難となり、地域の存続自体も危うくなるおそれがある。

 人口規模別の市町村数(2015年と2050年)と、生活必需サービスの存在確率が50%以下になる市町村の人口規模の推計値注2を(図表Ⅰ-2-1-10)に示す。例えば、病院の存在確率が50%以下となる市町村の人口規模は17,500人であり、その人口規模を下回る市町村は全市町村の内、2015年は53%であるが2050年には66%に上昇する。同様に、銀行では2015年の26%から2050年の42%に、コンビニエンスストアは2015年の7%から2050年の20%にそれぞれ上昇する。このように、人口減少や都市部への集中、地域公共交通の維持困難化を背景に、今後、地方を中心に、地域の生活必需サービスの維持が一層困難化していくおそれが高まっている。このため、地域の持続可能性を確保するための対策が必要である。

図表Ⅰ-2-1-10 人口規模別の市町村数(2015年と2050年)と、生活必需サービスの存在確率が50%以下になる市町村の人口規模
図表Ⅰ-2-1-10 人口規模別の市町村数(2015年と2050年)と、生活必需サービスの存在確率が50%以下になる市町村の人口規模

(注)3大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)を除く
資料)国土交通省

  1. 注1 2050年の市町村別人口推計値:総務省「平成27年国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30年推計)」等より国土交通省推計。
  2. 注2 生活サービスの存在確率が50%以下になる市町村の人口規模の推計値:
    一定の人口規模の市町村のうち、当該産業の事業所が1つでも存在する市町村の割合(存在確率)が50%を上回るような人口規模で、最も小さいもの(値は区間平均。例えば、0~400人の市町村で最初に50を超えた場合は200人と表記)。存在確率の算出においては、各人口規模別の市町村数を考慮して、4,000人以下の市町村は400人毎、4,000人~1万人は1,000人毎、1万~10万は5,000人毎、10万人以上は5万人毎に区分して計算。