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国土交通白書 2022

第4節 交通分野における安全対策の強化

■1 運輸事業者における安全管理体制の構築・改善

 「運輸安全マネジメント制度」は、運輸事業者に安全統括管理者の選任と安全管理規程の作成を義務付け、経営トップのリーダーシップの下、会社全体が一体となった安全管理体制を構築することを促し、国土交通省が運輸安全マネジメント評価(運輸事業者の取組状況を確認し、必要な助言等を行うもの)を行う制度であり、JR西日本福知山線列車脱線事故等の教訓を基に、平成18年10月に導入されたものである。

図表Ⅱ-7-4-1 運輸安全マネジメント制度の概要
図表Ⅱ-7-4-1 運輸安全マネジメント制度の概要

資料)国土交通省

 令和3年度においては、運輸安全マネジメント評価を延べ374者(鉄道23者、自動車291者、海運52者、航空8者)に対して実施した。

 また、同制度への理解を深めるため、国が運輸事業者を対象に実施する運輸安全マネジメントセミナーについては、令和3年度において2,249人が受講した。さらに、中小事業者に対する同制度の一層の普及・啓発等を図るため、平成25年7月に創設した認定セミナー制度(民間機関等が実施する運輸安全マネジメントセミナーを国土交通省が認定する制度)に関しては、令和3年度において6,724人がセミナーを受講した。

 運輸安全マネジメント制度においては、自動車輸送分野における取組みの一層の展開の必要性、未だ取組みの途上にある事業者への対応と取組みの深化を促進する必要性、効果的な評価実施のための国の体制強化の必要性等の課題が存在している。

図表Ⅱ-7-4-2 運輸安全マネジメント制度の今後のあり方について(運輸審議会平成29年7月)
図表Ⅱ-7-4-2 運輸安全マネジメント制度の今後のあり方について(運輸審議会平成29年7月)

資料)国土交通省

 このため、平成29年7月に運輸審議会の答申を踏まえて、令和3年度までにすべての貸切バス事業者の安全管理体制を確認することとし、同年度において、評価が未実施であった事業者229者の評価を実施し、代表者変更により評価が実施できなかった1者を除く全ての貸切バス事業者への安全管理体制の確認を完了した。さらに、取組みの深化を図るため、運輸事業者の安全統括管理者や安全管理部門同士が交流を深める「横の連携」の場として、「安統管フォーラム(安全統括管理者会議)」を平成29年10月に創設し、毎年開催している。加えて、運輸事業者における安全文化の構築・定着、継続的な見直し・改善に向けた取組みを支援することを目的として、国土交通大臣表彰を平成29年5月に創設し、運輸安全マネジメントに関する取組みに優れた事業者に対して毎年表彰を行っている。

 また、昨今の自然災害の頻発化・激甚化を受け、運輸安全マネジメント制度の中に自然災害対応を組み込むことにより運輸事業者の取組みを促進するため、令和2年7月、「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」の一環として、運輸事業者が防災マネジメントに取り組む際のガイダンスとなる「運輸防災マネジメント指針」を策定・公表した。以後の運輸安全マネジメント評価においては、同指針を活用し、防災マネジメントに関する評価を実施している。

 加えて、令和3年度には、中小事業者における運輸防災マネジメントへの理解を深めるため、認定セミナー制度に「防災マネジメントセミナー」を位置付け、申請のあったセミナーの認定を行い、民間機関等においてセミナーが実施されている。また、国土交通省としても、「運輸防災マネジメント強化キャンペーン」として、セミナー・ワークショップを集中的に実施した。

 これらの取組みを行うなど、運輸安全マネジメント制度の取組みの強化・拡充を図っている。