
国土交通白書 2022
第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進
(1)IT・ビッグデータを活用した地域道路経済戦略の推進
地域経済・社会における課題を柔軟かつ強力に解決し、成長を支えていくため、ICTやビッグデータを最大限に利活用した地域道路経済戦略を推進している。
ETC2.0が平成27年8月に本格導入され、道路交通の速度等のビッグデータを収集する体制が構築されており、ETC2.0車載器は、約763万台(令和4年3月時点)まで普及した。こういった中、地域の交通課題の解消に向けて、27年12月より、全国10地域に学官連携で地域道路経済戦略研究会が設立され、各地域での課題を踏まえたETC2.0を含む多様なビッグデータを活用した道路政策や社会実験の実施について検討を進めている。
例えば、急増する訪日外国人観光客のレンタカー利用による事故を防止するため、外国人レンタカー利用の多い空港周辺から出発するレンタカーを対象に、ETC2.0の急ブレーキデータ等を活用して、外国人特有の事故危険箇所を特定し、多言語注意喚起看板の設置や多言語対応のパンフレットでの注意喚起等のピンポイント事故対策に取り組んでいる。
また、ETC2.0データを官民連携で活用することで、民間での新たなサービスの創出を促し、地域のモビリティサービスの強化を推進している。
(2)交通関連ビッグデータを活用した新たなまちづくり
移動に関するビッグデータやスマート・プランニング等のシミュレーション技術等を活用し、都市計画等の基礎となる新たな都市交通調査手法の構築及び調査結果の利活用方策等の都市交通調査体系のあり方を検討するため、令和3年度から「新たな都市交通調査体系のあり方に関する検討会」を開催している。
検討会では、パーソントリップ調査とビッグデータの組み合わせ等による効果的・効率的な都市交通調査手法や、地域参加のまちづくりに必要となる調査結果の分析・見える化ツールの構築等、新たな都市交通調査の方向性について検討しており、今後も継続して検討を進めていく。
(3)ビッグデータを活用した地形図の修正
地形図は、国土の基本図として様々な地図のベースとして利用されるとともに、登山者やハイカーにも利用されている。この地形図の登山道をより正確に表示するため、登山者がスマートフォンで取得した経路情報(ビッグデータ)を活用して地形図を修正する取組みを進めている。令和3年度においても、民間事業者との協力協定により提供されたビッグデータを活用して、全国の主な山の登山道を修正してきた。