
国土交通白書 2023
第4節 利便性の高い交通の実現
(1)都市・地域における総合交通戦略の推進
安全で円滑な交通が確保された集約型のまちづくりを実現するためには、自転車、鉄道、バス等の輸送モード別、事業者別ではなく、利用者の立場でモードを横断的にとらえる必要がある。このため、地方公共団体が公共交通事業者等の関係者からなる協議会を設立し、協議会において目指すべき都市・地域の将来像と提供すべき交通サービス等を明確にした上で、必要となる交通施策やまちづくり施策、実施プログラム等を内容とする「都市・地域総合交通戦略」を策定(令和5年3月末現在121都市で策定・策定中)し、関係者がそれぞれの責任の下、施策・事業を実行する仕組みを構築することが必要である。国は、同戦略に基づき実施されるLRT注2等の整備等、交通事業とまちづくりが連携した総合的かつ戦略的な交通施策の推進を支援することとしている。
(2)公共交通の利用環境改善に向けた取組み
地域公共交通の利用環境改善や訪日外国人旅行者の受入環境整備を促進するために、LRT、BRT、キャッシュレス決済手段の導入等を支援している。
(3)都市鉄道ネットワークの充実
既存の都市鉄道ネットワークを有効活用しつつ速達性の向上を図ること等を目的とする都市鉄道等利便増進法を活用し、神奈川東部方面線(相鉄~JR・東急直通線)の整備を進めてきた結果、相鉄・JR直通線先行開業に続き、令和5年3月18日には相鉄・東急直通線が開業した。加えて、3年7月15日に取りまとめられた交通政策審議会答申「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」を踏まえ、東京メトロ有楽町線(豊洲~住吉)及び南北線(品川~白金高輪)の延伸について、4年3月28日に鉄道事業許可を行った。また、利用者サービスの向上等を図るための東京メトロの完全民営化の促進等に向け、関係者とも連携して必要な取組みを推進する。
また、これまで大都市圏の鉄道において慢性的に続いていた通勤混雑は、新型コロナウイルス感染症の影響による生活様式の変化等によって緩和された状態が続いている。今後は、鉄道の利用状況を継続的に把握するとともに、ポストコロナの利用状況を十分に検証の上、必要な施策を検討する。これらの取組みの推進により、国際競争力の強化に資する都市鉄道や豊かな国民生活に資する都市鉄道等、我が国の都市鉄道が目指すべき姿の実現に向けた取組みを推進していく。
(4) 都市モノレール・新交通システム・LRTの整備
少子高齢化に対応した交通弱者のモビリティの確保を図るとともに、都市内交通の円滑化、環境負荷の軽減、中心市街地の活性化の観点から公共交通機関への利用転換を促進するため、LRT等の整備を推進している。令和4年度は、各都市において都市モノレール・新交通システムの延伸事業や路面電車のバリアフリー化が進められるなど、公共交通ネットワークの再構築等が進められている。5年度は、8月に新規路線として、芳賀・宇都宮LRT全線開業が予定されており、着実な開業に向け、事業の進捗にあわせた各種手続き等を進める。
(5)バス・タクシーの利便性の向上
人口減少により利用者も減少する中、バス・タクシーを積極的に利用してもらうためには、利便性の向上が重要であり、バスの位置情報を提供するバスロケーションシステム、円滑な乗降を可能とするキャッシュレス決済等のシステム導入や、電気自動車の導入等によるクリーンかつ快適な利用環境の提供を促進している。
また、高齢者や障害者等の移動制約者や大きな荷物を持った外国人旅行者等も含め、誰もが利用しやすいバス・タクシーの利用環境を整備するため、地域公共交通確保維持改善事業補助金や税制特例等を活用し、ノンステップバス・ユニバーサルデザインタクシー・福祉タクシー等の導入を促進している。
- 注2 Light Rail Transitの略で、低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システム