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国土交通白書 2023

第4節 健全な水循環の維持又は回復

■3 水環境改善への取組み

(1)水質浄化の推進

 水環境の悪化が著しい全国の河川等においては、地方公共団体、河川管理者、下水道管理者等の関係機関が連携し、河川における水質浄化対策や下水道整備による生活排水対策など、水質改善に取組んでいる。

(2)水質調査と水質事故対応

 良好な水環境を保全・回復する上で水質調査は重要であり、令和3年は一級河川109水系の991地点を調査した。また、市民と協働で水質調査マップの作成や水生生物調査等を実施した。

 油類や化学物質の流出等による河川の水質事故は、令和3年に一級水系で754件発生した。水質汚濁防止に関しては、河川管理者と関係機関で構成される水質汚濁防止連絡協議会を109水系のすべてに設立しており、水質事故発生時の速やかな情報連絡や、オイルフェンス設置等の被害拡大防止に努めている。

【関連リンク】

令和3年全国一級河川の水質現況(令和4年7月7日発表)

URL:https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kankyo/kankyou/suisitu/r3_suisitu.html

(3)閉鎖性海域の水環境の改善

 東京湾、伊勢湾、大阪湾を含む瀬戸内海等の閉鎖性海域では、陸域からの汚濁負荷量は減少しているものの、干潟・藻場の消失による海域の浄化能力の低下等により、依然として赤潮や青潮が発生し漁業被害等が生じている。

 また、漂流ごみ・油による環境悪化や船舶への航行影響等が生じている。令和2年7月の大雨では、有明海・八代海等で大量に漂流木等が発生し、船舶航行等に支障が及ぶ恐れがあったため、海洋環境整備船が漁業者と連携して回収作業を実施した。さらに3年8月の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火に伴って発生した軽石の除去作業を実施した。

 きれいで豊かな海を取り戻すため、①汚泥浚渫、覆砂、深堀跡の埋め戻しによる底質改善、②干潟・藻場の再生や生物共生型港湾構造物の普及による生物生息場の創出、③海洋環境整備船による漂流ごみ・油の回収、④下水道整備等による汚濁負荷の削減、⑤多様な主体が連携・協働して環境改善に取組む体制の整備等の取組みを推進する。併せて、耐波性能等を強化した海洋環境整備船を順次配備するなど、更なる漂流物回収体制の強化を推進する。

図表Ⅱ-7-4-1 海洋環境整備船と漁業者との連携した回収作業の様子
図表Ⅱ-7-4-1 海洋環境整備船と漁業者との連携した回収作業の様子

(4) 健全な水環境の創造に向けた下水道事業の推進

 豊かな海の再生や生物の多様性の保全に向け、近傍海域の水質環境基準の達成・維持などを前提に、冬期に下水放流水に含まれる栄養塩類の濃度を上げることで不足する窒素やリンを供給する、栄養塩類の能動的運転管理を進めている。合流式下水道については、令和5年度末までに雨天時に放流される汚水まじりの下水の抑制等、緊急改善対策の完了を図ることとしている。