
国土交通白書 2023
第1節 インフラシステム海外展開の促進
国土交通省では、政府の方針である「インフラシステム海外展開戦略2025」に基づき、関係者と情報・戦略を共有し、官民一体となった取組みを進めるため、「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」を毎年策定している。具体的には以下の(1)~(7)を主な施策として精力的に推進しているところである。
(1)「川上」からの継続的関与の強化
我が国企業が確実に案件を獲得するために、案件が成立するか不明な「川上」の段階から相手国に働きかけ、我が国企業が参入しやすい環境を整備する必要がある。このため、相手国の国土計画・マスタープラン等の上位計画に係る調査事業への協力やトップセールス、二国間枠組みによる政府間対話等のGtoGによる情報発信等に取り組んでいる。
(2)PPP案件等への対応力の強化
世界の膨大なインフラ需要を公共投資だけで賄うことは困難であり、対外債務増加に消極的な国もあることから、民間資金を活用する官民連携(PPP:Public-Private Partnership)への期待が高まっている。しかしながら、PPP案件を円滑に進めるための相手国における法制度が未整備な場合や、相手国政府における官民の適正なリスク分担に対する理解が不十分な場合もあることから、政府としても相手国の状況を十分に踏まえ、環境整備を働きかけている。
(3)我が国の強みを活かした案件形成
我が国の「質の高いインフラシステム」は、①使いやすく長寿命かつ低廉なライフサイクルコスト、②技術移転、人材・企業育成等相手国発展のための基盤づくりの実施、③工期等契約事項の確実な履行、及び④環境や防災、安全面にも配慮した経験に基づいた技術の導入を特長として有し、これらの強みを活かした案件形成や「川下」の姿を見据えた案件形成後の継続的なフォローを行う。
(4) 我が国コンサルタントによる調査等の質の向上
案件形成を円滑に進めるためには、我が国コンサルタントによる成果の質のさらなる向上を図る必要がある。このため、第三者による技術的助言への支援、事業調査の早期段階における我が国企業の知見の聴取及びコンサルタントの業務実施環境の整備等に取り組む。
(5)我が国企業の競争力の強化
競合国企業は、海外展開事業の規模と実績において我が国企業を大きく上回っており、価格面及び提供する商品の質の柔軟性を含めた供給能力面において、我が国企業の競争力を強化していく必要がある。そのため、現地ローカル企業との連携の促進、海外での設計・製造拠点の設置や現地職員の活用並びにM&Aによる現地・海外企業の取得といった取組みを支援するとともに、国際標準化等に係る戦略的取組みを推進する。
(6) 我が国企業の海外展開に係る人材の確保と環境の整備
我が国企業が海外案件に従事するに当たり、海外展開に従事できる能力を有する人材が不足しているため、我が国企業の人材流動化を促進する観点から、技術者の海外工事・業務の実績を国内事業で活用できるよう認定するとともに、優秀なものを表彰する「海外インフラプロジェクト技術者認定・表彰制度」の運用等を行っているほか、「海外インフラ展開人材養成プログラム」や中堅・中小建設業海外展開推進協議会(JASMOC)を通じた中堅・中小建設企業の海外展開を支援している。
(7)案件受注後の継続的なフォローアップ
海外案件においては、相手国からの金銭の支払いが遅延する等のトラブルが潜在的なリスクと見込まれており、事業価格の高騰等を招いている。このようなトラブルの解決を働きかける相手方が相手国政府や自治体、公的機関になることも多く、我が国企業の独力での解決は困難を伴いがちである。
このため、トラブル発生時のトップクレーム等働きかけや相談窓口の設置、政変・騒乱等や感染症拡大への対応支援を行っている。