
国土交通白書 2023
第9章 DX及び技術研究開発の推進
社会全体のデジタル化は喫緊の課題であり、政府として、デジタル庁の創設やデジタル田園都市国家構想といった政策が進められているところ、国土交通省においても必要な取組みを、より一層加速させる必要がある。このため、国土交通行政のDXを推進すべく、全省的な推進組織として、令和3年12月に「国土交通省DX推進本部」を設置し、所管分野における業務、ビジネスモデルや国土交通省の文化・風土の変革、行政庁としての生産性向上に取り組んでいる。

(1)インフラ分野のDX
インフラ分野のDXは、デジタル技術を活用して、管理者側の働き方やユーザーに提供するサービス・手続なども含めて、インフラまわりをスマートに変容させるものである。例えば、3Dハザードマップを活用したリアルに認識できるリスク情報の提供、現場にいなくても現場管理が可能になるリモートでの立会いによる監督業務やデジタルデータを活用した配筋検査の省力化、及び自動・自律・遠隔施工等に取り組んでいる。令和4年3月には「インフラ分野のDXアクションプラン」を策定し、個別施策毎の取組概要や目指す姿、令和7年度までの具体的な工程等といった実行計画をとりまとめた。今後は、取組みを更に深化・加速化させ、インフラDXアクションプランのネクスト・ステージとして分野網羅的・組織横断的な取組みを推進するため、「インフラの作り方」や「インフラの使い方」、「データの活かし方」の変革に取り組む。令和5年はDXによる変革を一層加速させる「躍進の年」として、引き続き取組みを進めていく。
建設業は社会資本の整備の担い手であると同時に、社会の安全・安心の確保を担う、我が国の国土保全上必要不可欠な「地域の守り手」である。人口減少や高齢化が進む中にあっても、これらの役割を果たすため、建設業の賃金水準の向上や休日の拡大等による働き方改革とともに、生産性向上が必要不可欠である。国土交通省では、前述のインフラ分野のDXの取組みに先駆けて、インフラ分野のDXを推進する上で中核となるi-Constructionを平成28年度より推進しており、ICTの活用等により調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいて、抜本的な生産性向上に取り組んでいる。
i-Constructionのトップランナー施策の一つでもあるICT施工については、平成28年度の土工から始まり、舗装工、浚渫工、河川浚渫工、地盤改良工、法面工、構造物工へICTを導入した他、舗装修繕工や点検などの維持管理分野や、民間等の要望も取り入れながら逐次対象工種を拡大しており、土工では3割以上の時間短縮効果が確認された。また、直轄工事におけるICT施工を経験した建設企業の割合は大手で9割を超える一方で、中小では約5割程度に留まっているため、自治体に対する専門家の派遣、小規模な現場へのICT施工の導入、ICT施工を行うことのできる技術者の育成等、自治体や中小企業が更にICTを導入しやすくなるような環境整備等も行っている。また、今後はICTによる作業の効率化からICTによる工事全体の効率化を目指し、更なる生産性の向上を図る。
また、生コンの製造から現場打込みまでの情報について、これまで紙管理としていたものを電子媒体化し、クラウド上で関係者が共有可能な取組みを令和4年度の直轄土木工事で試行した。5年度はJIS規格の改正を踏まえた取組みを継続して進めていく。
さらに、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の予算を活用して、建設現場のデータのリアルタイムな取得・活用などの革新的技術を導入・活用するモデルプロジェクトを令和4年度は22件実施するなど、革新的技術を活用した建設現場の一層の生産性向上を推進した。
建設現場の生産性向上に関するベストプラクティスの横展開に向けて、平成29年度より「i-Construction大賞」を実施しているが、令和4年度には、この取組みをさらに拡大するため「インフラDX大賞」と改称し、インフラの利用・サービスの向上や建設業界以外の取組みについても含めて広く募集した。また、インフラ分野におけるスタートアップの取組みを支援し、活動の促進、建設業界の活性化へつなげることを目的に、これまでの「国土交通大臣賞」「優秀賞」の他、新たに「スタートアップ奨励賞」を設置した。令和4年度は計25団体(国土交通大臣賞4団体、優秀賞19団体、スタートアップ奨励賞2団体)を表彰しており、引き続きインフラDXの普及促進に取り組んでいく。
(2)行政手続のDX
行政手続のオンライン化を加速し、国民等の利便性向上や行政の業務効率化等に資する国土交通行政のDXを推進するため、申請受付から審査、通知などの申請業務に係るプロセスを一貫して処理できるシステムの拡充等を実施する。