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国土交通白書 2024

第1節 国土交通分野の現状と方向性

コラム 中国地方の物流問題への取組み(福山通運(株)、田中倉庫運輸(株))

 中国地方では、配送ドライバーの人手不足により、多くの荷物が運べなくなる可能性がある。業務効率化、担い手確保、ドライバーの働き方改革は運送業、さらには荷物の保管、入出庫を担う倉庫業にとっても大きな課題となっている。

◆中国地方の運送業界の取組み

 福山通運(株)は、広島県福山市に本社を置き、主に運送業を営む企業である。トラック運送だけでなく、鉄道や船舶による輸送も行っている。同社は「物流2024年問題」におけるドライバー不足という課題への対応として様々な取組みを行っている。

 取組みの一つとして、同社は既に2017年から、日本初となる車両全長25mのフルトレーラー「ダブル連結トラック」注1の実証運行を開始しており、2019年1月から本格導入している。「ダブル連結トラック」を使用することで、ドライバーが一度に配送可能な荷量が、約二倍に増加し、労働力不足の解消や環境負荷低減等の効果が期待されている。実際に「ダブル連結トラック」の導入により、ドライバーの削減が実現し、大型車ドライバーの全体休日が約7%増加した。現在、同社の「ダブル連結トラック」の走行可能区間は、全国で5,000kmを超えており、今後も拡充を予定している。また、同社は「ダブル連結トラック」を全国で50台所有(2024年3月時点)しているが、今後も更に台数を増やし、輸送の効率化を加速させる予定である。

 そのほか、同社は同業他社と連携し、共同配送に取り組んでいる。共同配送とは、各企業が同じ納品先への配送を予定してる場合に、連携し荷物を集約し、配送業務を行う取組みである。これにより、一台当たりの積載効率が向上し、効率的な配送が実現した。

 さらに、同社はエリア毎の強みが異なる同業他社との共同運行も実施している。共同運行では、同社の拠点を利用しドライバーが他社の車両へ乗り換える中継輸送も取り入れることで、空車回送の削減を実現している。また、中継輸送により、これまで宿泊が必要であった長距離ドライバーの日帰り運行が可能になり、労働環境の改善につながっている。

 今後、同社はトラック等の車両を使用した運送だけでなく、船舶や鉄道を活用した多様な輸送を更に強化し、また、それらをDX戦略等と合わせて、労働生産性の向上を目指している。

<ダブル連結トラック>
<ダブル連結トラック>

◆中国地方の倉庫業界の取組み

 運送業だけではなく、物流の一翼を担う倉庫業においても、人手不足という課題を抱えており、倉庫内作業の省人化・自動化が重要視されている。また、荷役時間によるドライバーの手待ち時間の短縮等、配送ドライバーの長時間労働抑制のための取組みに着手し、物流業界全体で効率化を進めていく必要がある。

 このような課題を解消するために、広島県広島市で倉庫業を営む田中倉庫運輸(株)は、倉庫内作業の省人化・自動化を積極的に推進してきた。

 同社の倉庫には、ダブルリーチ式の全自動立体倉庫が導入されており、PCに入力された情報から、クレーンが荷物の場所を判断し、自動でピッキング作業を行っている。導入前は、従業員がマイナス23度の低温室内に立ち入り作業していたが、現在では、その大部分を自動化している。そのほかには、電動移動棚を使用し、荷繰り作業を軽減、また、目視作業による作業ミスを軽減するため、設定した各棚の高さまで自動で上昇するフォークリフトを導入し、作業負荷軽減を図っている。

 また、同社は、災害時でも倉庫内の食材等の品質を保ち、物流が停滞しないよう、BCP(事業継続計画)を策定し、設備投資を進めている。その取組みの一つとして、同社は断水時にも稼働可能な、空冷式自然冷媒冷凍機を導入している。この冷凍機は、CO2単体の自然冷媒冷凍機としては中国・四国地方第1号機であった。

 今後も同社は、積極的に設備投資を行い、業務の効率化と持続可能な物流を目指していくこととしている。

<立体自動倉庫>
<立体自動倉庫>

資料)福山通運(株)、田中倉庫運輸(株)

  1. 注1 トレーラーを2台連結させて走行する車両。1台で通常のトラック2台分の輸送が可能。