
国土交通白書 2024
第4節 交通分野における安全対策の強化
「運輸安全マネジメント制度」は、運輸事業者に安全統括管理者の選任と安全管理規程の作成を義務付け、経営トップのリーダーシップの下、会社全体が一体となった安全管理体制を構築することを促し、国土交通省が運輸安全マネジメント評価(運輸事業者の取組状況を確認し、必要な助言等を行うもの)を行う制度であり、JR西日本福知山線列車脱線事故等の教訓を基に、平成18年10月に導入されたものである。
令和5年度においては、運輸安全マネジメント評価を、のべ318者(鉄道44者、自動車114者、海運150者、航空10者)に対して実施した。
また、同制度への理解を深めるため、国が運輸事業者を対象に実施する運輸安全マネジメントセミナーについては、令和5年度において2,516人が受講した。加えて、中小事業者に対する同制度の一層の普及・啓発等を図るため、平成25年7月に創設した認定セミナー制度(民間機関等が実施する運輸安全マネジメントセミナーを国土交通省が認定する制度)に関しては、令和5年度において6,110人がセミナーを受講した。そのほか、運輸事業の安全に関するシンポジウム等も実施した。
さらに、知床遊覧船事故を受け、小型旅客船事業者に対し、運輸安全マネジメントの取組みの強化を通じ、経営トップの安全意識の底上げ・向上を図ることや、効果的な評価実施のため国の体制強化を図ることが急務となっている。特に、小型旅客船不定期航路事業者に対しては、令和5年3月に「小型旅客船事業者に対する運輸安全マネジメント評価の実施方法について」を策定し、経営トップの交代があった事業者や重大な事故を発生させ又は行政処分を受けた事業者等の評価を優先するとともに、令和9年度末までにすべての事業者の評価を実施することとした。
加えて、テロへの対応について、先進事例の情報収集を行い集約した知見を事業者間で共有し、その対応が求められる事業者を中心に評価を実施するとともに、感染症への対応についても、効果的な手法を検討し評価を実施した。
また、昨今の自然災害の頻発化・激甚化を受け、運輸安全マネジメント制度の中に自然災害対応を組み込むことにより運輸事業者の取組みを促進するため、運輸事業者が防災マネジメントに取り組む際のガイダンスとなる「運輸防災マネジメント指針」を策定・公表したところであり、以後の運輸安全マネジメント評価においては、同指針を活用し、防災マネジメントに関する評価を実施している。これらの取組みにより、運輸安全マネジメント制度の強化・拡充を図った。
