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国土交通白書 2025

第3節 産業の活性化

■8 不動産業の動向と施策

(1)不動産業をめぐる動向

①不動産業の動向

 不動産業は、全産業の売上高の3.5%、法人数の12.9%(令和5年度)を占める重要な産業の1つである。

②地価の動向

 令和7年地価公示(令和7年1月1日時点)によると、全国の地価動向は、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率が拡大した。

 住宅地では、低金利環境の継続等により、引き続き住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続しており、特に、東京圏や大阪圏の中心部等において高い上昇を示している。また、交通利便性や生活利便性に優れ、転入者が多い地域では、堅調な住宅需要に支えられ、比較的高い上昇が継続している。

 商業地では、主要都市において、店舗・ホテル等の需要が堅調であり、オフィスについても空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収益性が向上していることなどから、地価上昇が継続している。また、駅周辺等、マンション需要との競合が見られる地域では、高い上昇を示しており、外国人を含めた観光客が増加した観光地では、引き続き高い上昇となった地点が見られる。

 大手半導体メーカーの工場が進出している地域では、関連企業も含めた従業員向けの住宅需要のほか、関連企業の工場用地や事務所・ホテル・店舗等の需要も旺盛となっており、引き続き住宅地、商業地、工業地ともに高い上昇となっている。

③既存住宅流通の動向

 既存住宅の流通市場については、指定流通機構(レインズ)における令和6年度の成約件数が20.5万件(前年度比12.2%増)となった。

(2)不動産業の現状

 宅地建物取引に係る消費者利益の保護と流通の円滑化を図るため、「宅地建物取引業法」の的確な運用に努めている。令和5年度末において、宅地建物取引業者数は130,583業者である。

 国土交通省及び都道府県は、関係機関と連携しながら苦情・紛争の未然防止に努めるとともに、同法に違反した業者には、厳正な監督処分を行っており、5年度の監督処分件数は167件(免許取消97件、業務停止33件、指示37件)となっている。

 不動産管理業については、マンション管理業・住宅宿泊管理業・賃貸住宅管理業それぞれ法律に基づき管理業を営む者に係る登録制度を設け、適正な業務運営を確保するための措置を実施している。マンション管理業については、立入検査や指導監督を行い管理の適正化を図るとともに、令和6年度には管理業者が管理者となる方式の留意事項を示したガイドラインを整備した。また、住宅宿泊管理業については、令和5年に新設された講習制度を適切に運用するとともに、立入検査等を行い関係法令等の遵守徹底等を図っている。賃貸住宅管理業については、登録の義務化(令和3年6月施行)により、法施行前の任意登録制度での登録数5,104件を上回る9,881件の登録(令和7年3月末日時点)が行われており、立入検査や指導監督、法律の解釈・運用の考え方の普及・啓発等により、事業の適正な運営の確保に努めている。

(3)市場の活性化のための環境整備

①不動産投資市場の現状

 我が国における不動産の資産額は、令和5年末現在で約3,137兆円となっている注9

 国土交通省では、令和12年までにリート等注10の資産総額を約40兆円にするという目標を設定しているところ、不動産投資市場の中心的存在であるJリートについては、令和7年3月末現在、57銘柄が東京証券取引所に上場されており、対象不動産の総額は約23.8兆円、私募リートと不動産特定共同事業を合わせて約32.2兆円注11となっている。

 Jリート市場全体の値動きを示す東証REIT指数は、令和6年4月から9月まではおおむね1,700ポイント台から1,800ポイント台を推移し、同年10月からは下落して1,600ポイント台で推移した後、令和7年2月以降はやや上昇して1,700ポイント前後を推移した。また、Jリートにおける令和6年度の1年間における資産取得額は、約1.2兆円となった。

②不動産特定共同事業の推進

 不動産特定共同事業の意義・活用のメリットや好事例等をまとめた「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」を更新・周知した。また、地域における不動産特定共同事業の普及促進に向けたセミナーやウェビナー、ネットワーク形成のための会議の開催や不動産特定共同事業契約に基づく権利を表象したセキュリティトークン注12に関する情報提供資料の公表等、民間の資金・アイデアを活用した老朽・遊休不動産の再生の推進に向けた取組を実施した。

③ESG投資等による良好な不動産の形成促進

 我が国不動産へのESG投資を促進するため、不動産分野TCFD対応ガイダンス及び「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンスの普及啓発を行うとともに、改修時期を迎えた中小ビルについて、社会課題に対応する改修事例を調査し、ESG改修投資の拡大加速を図る。また、環境不動産等の良質な不動産の形成を促進するため、耐震・環境不動産形成促進事業においては、令和6年度には約21.6億円の出資を決定した。

④不動産に係る情報の環境整備

 国土交通省では、不動産市場の透明化、不動産取引の円滑化・活性化等を図るため、以下のとおり、不動産に係る情報を公表している。

(ア)不動産情報ライブラリ

 地価公示等の価格情報、防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等の不動産に関するオープンデータを利用者のニーズに応じて地図上に分かりやすく表示するWebGISシステムを令和6年4月1日より公開している(令和6年度時点累計PV数:17,979,921回)。掲載情報の一部については、API連携で民間事業者等へ提供しており、不動産取引の円滑化に寄与している。今後は、不動産取引の活性化や防災・まちづくり等に資するシステムとするために、ユーザーニーズを踏まえながら、掲載コンテンツの充実やシステムの基盤的な機能強化を行う。

【関連リンク】

不動産情報ライブラリ

URL:https://www.reinfolib.mlit.go.jp/

(イ)不動産取引価格情報

 全国の不動産の取引価格等の調査を行っている。調査によって得られた情報は、個別の物件が特定できないよう配慮した上で、国土交通省ホームページ(不動産情報ライブラリ)で、取引された不動産の所在、面積、価格等を四半期ごとに公表している(令和7年3月末現在の提供件数は、約547万件)。

(ウ)不動産価格指数

 国際通貨基金(IMF)等の国際機関が作成した基準に基づき、不動産価格指数(住宅)を毎月、不動産価格指数(商業用不動産・試験運用)を四半期ごとに公表している。即時的な動向把握を可能とするため、令和2年6月より、季節調整を加えた指数の公表を開始した。

(エ)既存住宅販売量指数

 令和2年4月より、建物の売買を原因とした所有権移転登記個数を基に、個人が購入した既存住宅の販売量に係る動向を指数化した「既存住宅販売量指数」の公表(試験運用)を開始した。

(オ)法人取引量指数

 令和4年3月より、建物の売買を原因とした所有権移転登記件数を基に、法人が購入した既存建物の取引量に係る動向を指数化した「法人取引量指数」の公表(試験運用)を開始した。

⑤市場の活性化のための環境整備

 既存住宅の流通促進を図るため、建物状況調査(インスペクション)の活用促進や、建物状況調査が行われた既存住宅であること等を示す「安心R住宅」制度等を通じ、消費者が安心して既存住宅を取引できる市場環境の整備を推進している。さらに、令和6年6月に「不動産業による空き家対策推進プログラム」を公表し、不動産取引に関するノウハウを有する不動産業が、地域とともに新しい価値を創造していくことを図るとともに、「全国版空き家・空き地バンク」の活用促進を通じて、空き家等の取引を促進している。

 加えて、「宅地建物取引業法」改正(令和4年)により可能となった不動産取引における書面の電磁的方法による提供等に関し、不動産事業者向けの新たな導入・活用支援ツールの公表、不動産取引契約に伴う各種業務や手続へのデジタル技術の導入・活用に係る実証事業の実施等、不動産取引のオンライン化に係る環境整備を行った。

⑥土地税制の活用

 令和7年度税制改正においては、不動産市場の資金調達力強化の観点から、一層の不動産証券化の拡大を図るため、リート及び特定目的会社が取得する不動産に係る特例措置を継続することとした。加えて、不動産特定共同事業において取得される不動産に係る特例措置については適用期限を延長するとともに、要件を一部見直したうえ不動産取得後の着工までの期間の要件を緩和することとした。

 このほか、地域福利増進事業に係る固定資産税等の課税標準の特例について適用期限の延長を行った。

⑦「不動産ID」の活用による不動産関連情報の連携・活用促進

 我が国の不動産については、各主体が保有する不動産データの住所や地番に表記ゆれが存在するために物件情報の照合やデータ連携が困難となっている。不動産IDは、全国の不動産それぞれに番号(不動産ID)を付与し、不動産IDを連携キーとして用いることにより、各不動産情報の名寄せや連携をスムーズに行えるようにするものである。令和6年度より、建物に関する不動産ID(建物ID)については、日本郵便株式会社の保有するデータを用いることとしており、令和9年度中の一部試験運用の開始を目指して検討を推進している。

⑧不動産鑑定評価の信頼性の向上

 不動産市場を支える制度インフラである不動産鑑定評価の信頼性を更に向上させるため、不動産鑑定業者に対する立入検査等を内容とする鑑定評価モニタリングを引き続き実施した。

  1. 注9 国民経済計算をもとに建物、構築物及び土地の資産額を合計。
  2. 注10 Jリート、私募リート、不動産特定共同事業。
  3. 注11 不動産特定共同事業については、令和5年度末時点の数値を使用。
  4. 注12 トークンという形でデジタル化された証券。