平成元年度 運輸白書

第10章 昭和63年度の概況と平成元年度の動き
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第10章 昭和63年度の概況と平成元年度の動き
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この章のポイント
○ 国内旅客輸送(人キロ)は、民間消費をはじめとした内需の好調さを反映し、対前年度比7.3%増(前年度の伸び率6.2%増)と前年度に引き続き大幅に増加した。
○ 国内貨物輸送(トンキロ)は、民間消費と設備投資を基調とした内需主導型の経済成長に伴い、同7.6%増と前年度の伸び率(同2.6%増)を大幅に上回ったのみならず、GNPの伸び率(5.1%)をも上回った。特に、鉄道の輸送分担率(トンキロベース)は、青函トンネル、瀬戸大橋開通等もあり、37年ぶりに上昇した。
○ 63年度の貨物輸送量の著しい増加は、民間消費の伸びに加え、公共投資やその誘発効果等も加わって活発化した民間企業設備投資、民間住宅投資などが建設関連資材への需要増となって現れたことによる。
○ 63年の出国日本人数は、円高による割安感等により対前年度比23.4%増の843万人と7年連続の史上最高を記録し、入国外客数も同9.3%増の236万人と、これまで最高だった60年の233万人を上回り、史上最高となった。
○ 我が国をめぐる国際貨物輸送(トン)は、内需主導型経済構造への転換を反映し、海運では、輸出が対前年度比0.7%減、輸入が同9.4%増となり、航空では、輸出が対前年度比9.5%増、輸入が同25.2%増となった。
○ 青函トンネル、瀬戸大橋の開通後一年を振り返ると、本州と北海道、四国間それぞれの人、物の交流が活発化し、特にJR(津軽海峡線及び瀬戸大橋線)が大幅な伸びを示す一方、フェリー、航空等その影響を受けている輸送機関もみられる。
○ 63年度の交通関係公共投資は、総額10兆5,926億円、対前年度比1.7%増と横ばい傾向であり、一方、運輸関連民間設備投資は、工事ベースで2兆3,537億円と前年度に比べ8.2%増と好調であった。
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第1節 輸送動向 |
1 旅客輸送の動向
2 貨物輸送の動向
3 輸送指数の動向
4 輸送関連の動向
5 最近の輸送動向(元年4月〜8月の実績)
- 1 旅客輸送の動向
- (1) 国内輸送
- (ア) 概況
- (依然高い伸びが続く国内旅客輸送)
昭和63年度の国内旅客輸送量は、総輸送人員603億人、対前年度比(以下同じ)5.3%増、総輸送人9,978億人キロ、7.3%増と前年度に引き続き大きく増加した。自家用の軽自動車及び貨物白動車による人員輸送を含めると、総輸送人員732億人、5.5%増、総輸送人キロ1兆1,907億人キロ、7.5%増と更に増加傾向が著しくなる。こうした中にあって、乗合バス、営業用乗用車、旅客船の輸送人員については低調に推移し、対前年度比で減少をみた〔2−10−1表〕。
63年度の旅客輸送の特徴としては、鉄道の伸びが依然として大きく、国鉄の分割民営化後のJR各社の好調ぶりが目立つこと、自家用乗用車による輸送の著しい増加が続いていること、航空の伸びが若干鈍化したこと等があげられる〔2−10−2図〕。なお、一時的には昭和天皇崩御に伴う自粛等の影響が各輸送機関に部分的にみられたことも特徴的なことであった。
こうした旅客輸送の好調さを裏付けるものは、消費をはじめとした内需の好調さと考えられる。
63年度の消費動向をみると、実質民間最終消費支出は、4.7%増と、62年度の伸び(4.5%増)を上回った。また、家計調査による実質家計消費支出も、2.7%増で、62年度の伸び(2.2%増)を上回っている。家計消費支出のうち、交通費は6.6%増と62年度の伸び(8.8%増)を下回ったものの、高い伸びが続いており、総旅客輸送の好調さを支えているものと考えられる〔2−10−3図〕。
- (イ) 輸送機関別の輸送動向
(JR(旅客会社)は、大きな伸びが続く)
- JR(旅客会社)は6社合計で、輸送人員5.5%増、輸送人キロ6.4%増となり、いずれも国鉄時代から引き続き6年連続の増加となり、62年度の伸び(それぞれ2.2%増、3.2%増)を著しく上回った。このうち定期旅客は、輸送人員が5.3%増、輸送人キロが5.9%増と近年にない高い伸びを示したが、これは景気の拡大に伴い就業者数が増加したこと等によるものと思われる〔2−10−4図〕〔2−10−5図〕。
また、定期外旅客についても、輸送人員5.9%増、輸送人キロ6.7%増と前年度の伸び(それぞれ3.4%増、3.7%増)を大きく上回った。
(民鉄は全般的に好調を持続)
民鉄(JR(旅客会社)を除く。)は、輸送人員2.9%増、輸送人キロ3.0%増となり、伸び率はいずれも62年度(それぞれ2.5%増、2.9%増)を上回った。このうち、定期旅客は輸送人員で3.1%増、輸送人キロでは3.4%増とJR同様好調を続けており、一方、定期外旅客はそれぞれ2.5%増、2.0%増であった。
これらを業態別にみると、大手民鉄は輸送人員で3.0%増、輸送人キロで2.5%増と伸び率が増加した。地下鉄については、輸送人員は3.9%増、輸送人キロは4.4%増となっている。一方、地方中小民鉄は、輸送人員が0.7%減、輸送人キロは3.3%増となっており、依然低迷傾向にある。
また、国鉄改革に伴い分離された第三セクター鉄道は、輸送人員で46.3%増(21社の合計値)、輸送人キロで39.3%増(同)と全体としては極めて好調に推移しているが、個別の路線によっては前年度水準に達していないものもあり、今後慎重に推移を見守っていく必要がある。
(自動車は依然として大きな伸び。特に自家用は好調)
自動車は、自家用乗用車の伸びが大きく寄与し、輸送人員は6.2%増、輸送人キロは9.0%増となり、いずれも高い伸びが続いている。自家用の軽自動車及び貨物自動車による人員輸送を含めると、輸送人員は6.2%増、輸送人キロは8.8%増であった。
自動車の内訳をみると、バスは輸送人員0.8%増、輸送人キロ4.2%増、乗用車は輸送人員7.7%増、輸送人キロ10.1%増、軽自動車は輸送人員8.0%増、輸送人キロ10.0%増であり、貨物自動車は輸送人員2.8%増、輸送人キロ6.2%増であった。また、業態別にみると、営業用(バスと乗用車の合計)は輸送人員0.6%減、輸送人キロ3.8%増、自家用(バス、乗用車、軽自動車と貨物自動車の合計)は輸送人員8.0%増、輸送人キロ9.5%増と自家用の好調ぶりに比べ営業用は低迷しているのが目立った。
(好調な長距離路線バスと貸切バス)
営業用バスは輸送人員0.8%減、輸送人キロ4.7%増であった。このうち、乗合バスは、長期的漸減傾向が続くなかで63年度は輸送人員は1.0%減となったものの、輸送人キロでは1.6%増と8年ぶりに増加に転じた。これは路線距離が300kmを越える長距離路線バスが、63年度に一挙に25路線も新設されるなどその地歩を着実に築いており、それが乗合バスの輸送の回復に大きく貢献しているものと考えられる〔2−10−6図〕。
また、貸切バスは、旅行需要の活発化を反映し輸送人員5.4%増、輸送人キロ7.2%増と62年度の伸び(それぞれ2.4%増、6.4%増)を上回る勢いで増加している。自家用バスについても増加傾向(輸送人員8.1%増、輸送人キロ3.2%増)が強まっている。
(依然活発な自家用乗用車)
一方、乗用車全体として大きな伸びが続き、輸送人員で7.7%増、輸送人員キロで10.1%増であった。このうち自家用乗用車については、輸送人員8.7%増、輸送人キロ10.5%増と62年度(それぞれ9.4%増、10.3%増)に引き続き高い伸びを続けている。
輸送人キロの伸びを支える要因は、保有車両数と各車両の活動状況(実働1日1車当たりの輸送人キロ)であるが、ここ数年保有車両数の伸び率は、安定した増加を示しているのに対して、実働1日1車当たりの輸送人キロの伸び率は、62年度に引き続き63年度も高い伸びを示している〔2−10−7図〕。これは、さらに輸送人員、輸送回数、走行キロに分解されるが、このうちでは輸送回数の伸び率が特に大きい〔2−10−8図〕。以上のことから、最近の自家用乗用車による旅客輸送の高い伸びは、保有車両数の着実な増加と相まって、1車両当たりの輸送回数の増加、すなわち輸送活動の活発化に支えられたものであることが判る。
(ハイヤー・タクシーは依然低調)
営業用乗用車(ハイヤー・タクシー)は、輸送人員で0.5%減、輸送人キロで増減なしと、経済環境が活発にもかかわらず長期的な低迷状態を脱しきれないでいる〔2−10−9図〕。これは、〔2−10−10図〕にみられるように、実車率(実車キロ÷走行キロ×100)が好調にもかかわらず、実働率(実働延日車÷実在延日車×100)が運転手不足の影響を受け低迷しているためと考えられる。
また、63年度第4四半期の輸送実績には大きな落込みがみられるが、これは、昭和天皇崩御に伴ういわゆる“自粛ムード”による影響と考えられ、この影響は他機関と比べ特にハイヤー・タクシーにおいて顕著にあらわれている〔2−10−9図〕。
(軽自動車、引き続きシェア拡大)
我が国の軽自動車保有車両数(軽二輪車を除く。)は、63年度末で1,368万台と、全自動車保有車両数の24.8%を占めるに至っている。
軽自動車による旅客輸送(自家用軽貨物車による人員輸送を含む。)は、輸送人員8.0%増、輸送人キロ10.0%増と大きな伸びを示しており、全旅客輸送量のうち、輸送人員で12.9%、輸送人キロで9.8%を占めている。
(貨物白動車は堅調に推移)
貨物自動車による旅客輸送は、輸送人員2.8%増、輸送人キロ6.2%増と堅調に推移している。
(航空輸送は依然好調ながら伸び率鈍化)
航空は、輸送人員5.8%増(幹線6.4%増、ローカル線5.4%増)、輸送人キロ6.7%増(幹線6.4%増、ローカル線6.9%増)と引き続き大きな伸びを示しているものの伸び率では鈍化傾向がみられ、昭和天皇の御病状を懸念した自粛の影響もあり63年度の伸び率は62年度の伸び率(輸送人員7.9%増、輸送人キロ9.1%増)を下回った〔2−10−11図〕。
近年、企業間の適正な競争による航空輸送の活性化をめざした路線のダブル・トリプルトラック化が進められているが、61年度以降新たにダブル・トリプルトラック化した路線(9路線)の伸び率は8.4%増(輸送人員)とそれ以外の路線の伸び率5.3%増を大きく上回っている。
(旅客船は増加から減少へ)
旅客船(一般旅客定期航路、特定旅客定期航路及び旅客不定期航路の合計)は、輸送人員0.9%減、輸送人キロ3.0%減と、62年度の増加から減少に転じた。これは、主として瀬戸大橋、青函トンネルの影響によるものと考えられる。
しかし、長距離フェリー(片道の航路距離が300km以上であって陸上のバイパス的な役割を果たすもの)の輸送人員については、3.2%増(62年度3.1%増)と引き続き伸びた。なお、フェリーによる自動車の航送台数は1.1%減となった。
(分担率では自家用乗用車の増加が続く)
旅客輸送人キロの輸送機関別分担率をみると、63年度は自家用乗用車及び軽自動車等による輸送の伸びが大きかったことにより、これらの分担率の合計が55.3%となった。他の機関については、その影響を受け軒並み微減となっている〔2−10−12図〕。
- (2) 国際輸送
- (世界の国際旅行者は6年連続増加)
1988年の世界における国際旅行者数は世界観光機関(WTO)の推計によれば、到着数で3億9,000万人、対前年比(以下同じ。)8.7%増と6年連続の増加であった。これを地域別にみるとアフリカ及び東アジア・太平洋地域の伸びが特に目立っている。
(出国日本人数は800万人を越える)
我が国をめぐる国際旅行の動向をみると、63年(暦年)における出国日本人数は、円高による割安感等により23.4%増(62年は23.8%増)と62年に引き続き大幅に増加し、史上初めて800万人の大台を突破する843万人となり、7年連続して史上最高を記録した〔2−10−13図〕。
出国日本人の旅行目的別シェアをみると、観光旅行が前年に比べ0.8ポイント増の83.4%、業務旅行は1.8ポイント減の12.2%となった。
男女別では、男性が62.0%、女性が38.0%(前年は、それぞれ62.4%、37.6%)と、依然男性が多いが、女性の比率が徐々に高まっていることが注目される〔2−10−14図〕。
行き先別では、男性はアジア州(54.6%)、女性は北アメリカ州(41.8%)がそれぞれ最も多い。
年齢別では、男性は40歳代が男性全体の25.3%と最も多く、次いで30歳代(24.6%)の順となっている。これに対し女性は、20歳代が女性全体の42.0%と圧倒的に多く、次いで30歳代(14.1%)の順となっている。また、男女共10歳代、40歳代の伸び率が高い。
(入国外客数は史上最高)
63年の入国外客数は、9.3%増の236万人と、これまで最高だった60年の233万人を上回り、史上最高となった。
入国外客の訪問目的をみると、観光が112万人、4.4%増、商用が68万人、13.2%増と商用客の増加が著しい。これは、我が国経済の国際的な地位の向上に伴い、我が国を舞台とする商取引が増大しているためと考えられる。
観光客についてみると、全観光客に占めるアジア人観光客のシェアは、53.7%と史上初めて50%を上回った。これは、韓国における海外渡航の自由化の影響が大きく現れたものと思われる。
入国外客の内訳を地域別にみるとアジア、中近東が126万人で全体の53.4%、次いで北アメリカ59万人(全体の25%)、ヨーロッパ40万人(同17%)の順となっている。
国・地域別にみると、アメリカが52万人と依然第1位であるが、これは6.2%の減少であり実数では59年の水準にまで落ち込んだ。台湾は、7.2%増の41万人、また、韓国は同国の規制緩和の影響もあり、57.7%増の34万人を記録した。以下、イギリス15万人(4.2%増)、中国11万人(55.0%増)の順となっている〔2−10−15図〕。
(我が国航空企業による積取比率は減少)
63年度に我が国に出入国した旅客(乗換通過客を含む。)のうち航空機を利用した旅客は、2,664万人(対前年度比18.4%増)であった。このうち、我が国航空企業(4社)を利用した者は978万人(同16.2%増)であり、国際線に就航する企業数及び路線数が増加したにもかかわらず我が国航空企業による積取比率は前年度に比べ0.7ポイント減の36.7%となった〔2−10−16表〕。
- 2 貨物輸送の動向
- (1) 国内輸送
- (ア) 概況
- (国内貨物輸送量は、過去最高を記録)
63年度の我が国経済は、民間消費と設備投資を基調とした内需主導型の景気拡大が急速に進展し、実質経済成長率も5.1%(62年度5.2%)と、政府見通しの4.9%を上回る高成長を遂げた。
このようななかで、63年度の国内貨物輸送量をみると、総輸送トン数(軽自動車を除く。以下同じ。)は、60億990万トン、対前年度比(以下同じ。)7.5%増と前年度伸び率1.7%増を大幅に上回ったばかりか、GNPの伸び率をも2.4ポイント上回った。
63年度の貨物輸送の特徴的なことは、鉄道の輸送量(トン数)が第2次石油ショック以降の長期的低落傾向に歯止めをかけ、9年ぶりに増加に転じたことを含め、各輸送機関で増加していることである。
また、総輸送トンキロは4,807億トンキロと7.6%増で推移しており、トン数同様GNP伸び率を2.5ポイントも上回る大幅な上昇であった〔2−10−17表〕。
(輸送量の増大には建設関連貨物が大きく貢献)
石油ショック以降の輸送トン数、トンキロの伸び率をみると、53、54両年度を除き、62年度迄は常にGNPの伸び率を下回る動きを示していたが、63年度は共にGNP伸び率を大きく上回った〔2−10−18図〕。
62年度迄のトン数の動向をみると、50〜51年度、56〜61年度の動きに示されるようにGNPが上昇してもマイナスとなるケース、52年度、55年度、62年度のようにGNP伸び率を大きく下回るケースが一般的になっており、トンキロの動きもほぼ同様である。これは、我が国においては石油ショック以降、技術革新の進展、産業構造の変化、国民意識の変化等に伴って製品の軽薄短小化が進み、GNPが上昇しても貨物の輸送量が伸びない傾向が定着していたためである。
ところが、53〜54年度のような内需主導型の景気拡大局面では、63年度と同様、輸送量の伸びがGNP伸び率を大きく上回っている。
この原因をみるため、主要輸送品目のうち代表的な建設関連資材である「木材」、「砂利・砂・石材」、「窯業品」(以下「建設関連貨物」という。)の合計輸送量と「その他の貨物」の動きをみると、「建設関連貨物」の輸送量は、53〜54年度、63年度のような強い内需主導型の景気上昇期以外は、むしろ減少しており、総輸送量の増減は、その動きに大きく左右されている。今回と同様、景気拡大期であった58年度は、輸出の好調さを反映したいわゆる外需主導型の拡大であり、こうした場合には建設関連貨物の輸送量は増大せず、そのマイナスが全体の輸送量を落ち込ませていることがわかる〔2−10−19図〕。
一方、「その他の貨物」については、貨物の軽薄短小化を反映し、GNPが伸びているにもかかわらず、ほぼ横ばいで推移しているが、53〜54年度、63年度の強い内需による景気上昇期では、消費などの好調さを受けて著しく増大している。
以上のことから、今回の輸送量の著しい増加は、62年度に実施された緊急経済対策に基づく総額5兆円にのぼる公共投資の追加や、その誘発効果等も加わって活発化した民間企業設備投資、民間住宅投資などが建設関連資材への需要増となって現れ、「その他の貨物」の伸びと相まってもたらされたものであることがわかる〔2−10−20図〕。
(軽自動車は昨年度に比べトン、トンキロとも減少)
軽自動車による貨物輸送量は、営業用で伸びているもののトータルでは、輸送トン数が1億4,470万トン、8.5%減、輸送トンキロが22億トンキロ、6.6%減と昨年度に比べ減少している。軽自動車による輸送を含めた総輸送トン数は61億5,450万トン、7.0%増となり、総輸送トンキロは4,829億トンキロ、7.6%増と他の輸送機関が好調だったため、著しく増加した〔2−10−21表〕。
(四半期別の輸送動向)
最近の四半期別の輸送動向(輸送トン数)をみると、総輸送量(軽自動車を除く。)は、62年4〜6月期まで減少を続けていたが、62年7〜9月期以降大幅な増加基調にある。
これを輸送機関別にみると、JR(貨物会社)は、総輸送量の回復に遅れ62年7〜9月期までは大幅な減少を続けていたが、それ以降は減少幅も徐々に小幅になり、63年4〜6月期から同10〜12月期にかけて増加に転じている〔2−10−22図〕〔2−10−23図〕。
自動車は、営業用はほぼ一貫して増加傾向にあったが、自家用は総輸送量の推移とほぼ同様の傾向を示している。
内航海運(営業用)は、総輸送量よりもいち早く増加に転じ、以後、建設関連貨物の国内向け出荷が高水準で推移していること等の影響を受け順調に推移している。
航空は、61年10月〜12月以降2ケタ以上の大幅な伸びを継続してきたものの、63年10月〜12月期以降の伸び率はやや鈍化している。これは、白粛ムードに伴い、高付加価値の生鮮食料品等の輸送需要が減少したためである。
- (イ) 輸送機関別輸送量
- 輸送機関別に輸送量(トンキロ)の伸び率を最近5年間の推移〔2−10−24図〕でみると、航空は全期間を通じ平均11.6%増の高い伸びを、また、営業用自動車も平均6.5%増と堅調な伸びを示している。61年度まで低迷状態にあったその他の輸送機関についても62年度に各輸送機関ともプラスに転じ、63年度はさらに高い伸び率となっており、景気拡大の効果が顕著にあらわれている。特に、長期低迷を続けていたJRの63年度の伸びが著しく、全輸送機関中一番高くなったことが注目される。
(鉄道輸送トン数は9年ぶりに増加)
JR(貨物会社)は、津軽海峡線と本四備讃線の開通やコンテナ列車の増発にともない、輸送トン数では0.7%増と9年ぶりに増加に転じ、輸送トンキロでは長距離輸送を中心とするコンテナの伸びに支えられて15.0%増と大幅に増加している。その反面、民鉄の輸送量は、トン、トンキロとも減少しており、それぞれ0.9%減、0.3%減であった。ただし、その減少幅は、昨年度に比べ小幅となっている。
JR貨物の車扱いは、3,956万トンと最盛期の5分の1近くに落ち込み、63年度も引き続き4.8%減となった。これを品目別にみると、石油製品、セメント、紙・パルプ、砂利・砂・石材、木材などは増加しているが、石炭、石灰石等の重量貨物、化学薬品の減少が著しい〔2−10−25図〕〔2−10−28表〕。
(自動車の輸送トン数は2年連続の大幅増加)
自動車は、輸送トン数で7.7%増と大幅に増加した。その内訳をみると、営業用、自家用とも住宅建設や公共工事等の好調さを背景とした建設関連貨物等の高い伸びに支えられ、営業用で8.1%増、自家用で7.4%増となっている。
また、自動車輸送の長距離化にともない、輸送トンキロは年々輸送トン数を上回る増加傾向を示しているが、63年度は前年度に比べ8.8%の増加となっている〔2−10−26図〕。
一方、軽自動車の輸送量をみると、営業用は62〜63年度にかけてトン、トンキロともそれぞれ11.8%、7.7%増加しているものの、軽自動車の輸送量で大半を占める自家用はトン数で9.7%減、トンキロで9.2%減であった。
次に、自動車(軽自動車を含む。)の輸送トン数を品目別にみると、営業用は、石灰石、原油等の工業用非金属鉱物、セメントなどの窯業品、繊維工業品等が増加し、自家用は、木材、砂利・砂・石材、工業用非金属鉱物、紙・パルプ、日用品等が増加している〔2−10−28表〕。
(内航海運は建設関連貨物が好調)
内航海運は、セメント、砂利・砂・石材等の建設関連貨物、機械が大幅に増加したことや石灰石、鉄鋼、石油製品等の輸送トン数が増加したことなどから、輸送トン数(自家用を含む。)で6.6%増、輸送トンキロで5.6%増と昨年度に引続き増加傾向が続いている〔2−10−27図〕〔2−10−28表〕。
航空は、輸送トン数で9.0%増、輸送トンキロで8.9%増と増加基調にあるものの、その伸び率は昨年度(それぞれ15.9%増、16.3%増)に比べ鈍化している。これを幹線、ローカル線別にみると、幹線は輸送トン数で6.9%増、輸送トンキロで6.3%増であり、ローカル線はそれぞれ10.6%増、11.9%増であった。品目別には、生鮮魚介類、果実・野菜等の食料品の荷動きが好調であった。
(分担率が上昇した鉄道輸送)
63年度の国内貨物輸送トンキロの輸送機関別分担率は、鉄道が前年度に比べ0.3ポイント増の4.9%(うちJR(貨物会社)は0.3ポイント増の4.8%)、自動車は0.5ポイント増の50.9%(営業用は0.7ポイント増の35.3%、自家用は0.2ポイント減の15.6%)、内航海運は0.9ポイント減の44.0%であった。63年度も引き続き営業用自動車の分担率の上昇傾向がみられる〔2−10−29図〕。
62年度まで一貫してシェアの減少傾向を示していた鉄道貨物は、活発なコンテナ輸送や、津軽海峡線、本四備讃線の開通による輸送ネットワークの広域化の効果によって、37年ぶりにそのシェアを上昇させた。
(輸送機関別距離帯別輸送量シェアの推移)
輸送量(輸送トン数)の輸送機関別距離帯別シェアの推移(58〜62年度の推移)をみると、2−10−30図に示すとおりである。
鉄道は、一般に中距離輸送に適していると言われているが、距離帯別シェアでは100km未満の短距離輸送のシェアが約4割を占め、第1位になっていることが注目される。しかし、そのシェアは58年度の42.1%から62年度の40.8%に減少している。また、100km〜500kmまでの中距離帯のシェアは、58年度37.3%、62年度34.3%とさらにその割合を落としている。このことは、自動車との競合による影響が短距離帯のみならず中距離帯でも大きくなっていることをあらわしている。一方、500kmを超える長距離帯のシェアは大幅に伸びている。
自動車は、100kmまでの短距離帯で依然約9割を占めているが、58年度から62年度にかけてそのシェアを落としており、路線トラックを中心とする長距離帯輸送が順調に推移していることがうかがえる。
内航海運は、100kmまでの短距離帯及び1000km以上の長距離帯のシェアが減少し、それらの中間の距離帯で上昇する傾向を示している。特に、内航海運の特性が最も発揮されるといわれている1000km以上の距離帯で1.1ポイント減となっていることは、注目する必要がある。
(長距離化するJR(貨物会社)と短距離化する内航海運)
63年度の全輸送機関(軽自動車を除く。)の平均輸送距離は、0.1%増の80.0kmであった。
これを輸送機関別にみると、JR(貨物会社)は413.5km、自動車は営業用が79.7km、自家用が22.3km、内航海運は413.3km、航空は906.6kmである。それぞれの対前年度伸び率をみると、JRが14.2%増、自動車の営業用が1.6%増、自家用が0.8%減、内航海運が0.9%減、航空が0.1%減と、JRの大幅な伸びと内航海運の4年連続の減少が目立つ。
JRについて、この3年間をみると、輸送距離が着実に長くなっている。これは、61年11月のダイヤの大幅な改正にともない車扱の運転本数を大幅に削減したため、短距離輸送を中心とする車扱の貨物が減少し、長距離輸送を中心とするコンテナ貨物が増加したためである〔2−10−31図〕〔2−10−32図〕。
内航海運は、ここ数年輸送距離が短くなる傾向を示しており、63年度は431.3kmとJRより17.8km長いだけであった。これは、油送船の輸送距離が60年度以降、精油所の統廃合等の影響から年々短くなっており、その間に14.7%も減少したことが影響している。
- (2) 国際輸送
- (ア) 世界の輸送活動
- (好調な世界の海上荷動き量)
1988年の世界経済は、87年10月の株価大幅下落のデフレ効果も軽微なものにとどまり、87年、88年と、いずれも前年を上回る成長率を示し、順調な拡大を続けている。
米国経済は、企業収益が好調となったことを背景に輸出と設備投資が拡大基調を維持したため、88年の実質GNP成長率は3.9%(87年3.4%)であった。また、西欧諸国においては、外需が引き続き縮小してはいるものの、個人消費と設備投資が好調であったため、内需が一層拡大している。
このようななかで、88年の世界の海上荷動き量は、トンベースで対前年比(以下同じ。)6.0%増の36億6,600万トン、トン・マイルベースで6.3%増の15兆1,700億トン・マイルとなった〔2−10−33図〕〔2−10−34表〕。
(石油、鉄鋼、コンテナとも大幅増)
これを品目別にみると、石油は世界的に需要が拡大基調であったことに加え、63年8月にイラン・イラク紛争が停戦となりOPECの結束が強化され原油価格が上昇するとの見通しから荷動きが活発化し、63年の荷動き量は13億6,500万トン(6.7%増)、6兆4,300億トン・マイル(7.3%増)となった。
鉄鉱石は、世界の粗鋼生産が堅調であったため、63年の海上輸送量合計は3億4,500万トン(8.2%増)となった。また、石炭は、原料炭、一般炭とも堅調であり、前年に比べ5.3%増の2億9,800万トンとなった。
コンテナ貨物については、世界の主要20港湾における取扱量が過去3年間平均約10%の伸びをみせており、63年には約3,700万TEU(注)に達した。特に、香港、台湾、シンガポール、釜山などで取扱量が増加している。
(世界の四分の一(トン・マイルベース)を占める我が国海上輸出入貨物)
世界における我が国輸出入貨物の海上荷動き量は、7億3,000万トン、3兆8,000億トン・マイルベースのシェアで0.5ポイント増の20.0%、トン・マイルベースのシェアで0.4ポイント増の25.3%となった。このうち品目別の世界全体に占める我が国のシェアは、トン・マイルベースで原油が17.4%、鉄鉱石が41.3%、石炭が29.3%、穀物が24.5%であった。
(世界の航空貨物量は増加)
1988年の世界の航空貨物輸送量(定期航空)は、412億トンキロで前年に比べ12.3%増加した。このうち我が国のシェアはICAO(国際民間航空機関)加盟160カ国中アメリカに次いで第2位の10.1%であるが、前年に比べシェアで0.3ポイント低下している。ただし、輸送量は8.7%の増加である。
(注)TEU:Twenty feet Equivalent Unitの略。20フィート型コンテナ換算個数
- (イ) 我が国をめぐる輸送活動
- (海上貿易量、輸出は減、輸入は増)
63年(暦年)の我が国の海上貿易量は、輸出入合計で7億3,137万トンと前年に比べ8.3%増加している〔2−10−35表〕〔2−10−36図〕。
これを輸出入別にみると、輸出は7.071万トン(0.7%減)と4年連続の減少となっているが、機械類、セメントが比較的好調に推移したため前年(6.0%減)に比べその減少幅は小さくなっている。
一方、輸入は、6億6,066万トン(9.4%増)と2年連続の増加となった。これを品目別にみると、鉄鉱石(10.1%増)、石炭(12.6%増)等の乾貨物が12.0%増加しており、輸入量全体の増加に大きく寄与している。また、油類も比較的好調に推移しており、5.5%の増加であった。欧米をはじめとする諸外国から強く求められている製品輸入については、円高を反映して機械類、金属・金属製品等を中心に35.9%増と、引続き大幅な増加を示した〔2−10−37表〕。
(我が国商船隊の輸送量は全体として増加)
63年の我が国商船隊(外国用船を含む。)の輸送量をみると、輸出と三国間輸送は減少したものの、輸入が大幅に増加したため、全体としては8.3%増の5億8,385万トンであった。輸出は、不定期船の輸送量が62年に引続き減少したため0.4%減の3,441万トンであった。輸入は、不定期船、油送船、コンテナ船の伸びが2ケタ以上であったため、全体としては、11.9%増の4億4,126万トンとなった。このうち日本船の輸送量は、輸出が24.8%減の740万トン、輸入が0.8%増の2億3,413万トンであった〔2−10−35表〕。
この結果、我が国商船隊の積取比率は、輸出が0.2ポイント増の48.7%、輸入は1.5ポイント増の66.8%となった。このうち日本船の積取比率は、輸出は3.4ポイント減の10.4%、輸入は3.1ポイント減の35.4%となった。
なお、三国間輸送は、コンテナ船の輸送量が大幅に増加したものの、在来定期船、油送船の輸送量が減少したため1.7%減の1億818万トンとなった。
(好調な国際航空貨物)
63年度の国際航空による我が国の貨物輸送量(継越貨物を除く。)は、輸出はトンベースで対前年度比(以下同じ。)9.5%増の43万トン、ドルベースで28.8%増の401億ドルと、トンベース、ドルベースともに大幅な伸びとなった。品目別(ドルベース)では、機械機器の輸出が大きく増加しており、なかでも半導体等電子部品や事務用機器の伸びが著しい〔2−10−38表〕〔2−10−39図〕。
輸入はトンベースで25.2%増の59万トン、ドルベースで24.9%増の416億ドルと大幅に伸び、昨年に続きトンベース、ドルベースとも輸出を上回っている。品目別(ドルベース)では、機械機器の増加が輸入の増加に大きく寄与しており、なかでも事務用機器、半導体等電子部品等の寄与が高い。また、化学製品、食料品といった品目も輸入の増加に貢献している。
我が国航空企業による輸送量(トンベース、継越貨物を含む。)をみると、輸出は8.1%増、輸入は18.9%増となり、積取比率は62年度に比べ、輸出は0.2ポイント減の39.4%、輸入は0.5ポイント減の38.9%となった〔2−10−38表〕。
- 3 輸送指数の動向
- (1) 63年度の輸送指数の動向
- 63年度の我が国の経済は、内需が好調に推移したことにより実質GNP成長率は5.1%となった。このような状況のなかで、63年度の輸送指数(輸送業総合)は、経済の順調な拡大を反映し115.3、対前年度比6.4%増とGNP成長率を上回る伸びを示したが、四半期別にみると後半において若干伸びは鈍化している。
自家輸送を含んだ輸送指数(輸送活動総合)は、120.4で対前年度比8.5%増と高い伸びになっており、四半期別にみても年間を通じて実質GNPを上回る勢いを示した。〔2−10−40図〕。
輸送指数
輸送指数とは、我が国の国内旅客・貨物輸送活動及び国際旅客・貨物輸送活動を総合的にとらえ、指数化したものである。具体的には、各輸送機関別の旅客・貨物輸送量(原則として旅客は人キロ、貨物はトンキロ)を、それぞれの輸送機関の創出した付加価値額(雇用者取得・営業余剰等)をウエイトとして総合化している。従って、人や人キロまたはトンやトンキロを単位とするそれぞれの輸送量に対して輸送活動を経済的側面からとらえた総合的な指数であり、鉱工業生産指数や国民総生産(GNP)等と対比してとらえることができるものである。
<輸送指数の計算方法>
- (2) 輸送指数の長期的動向
- (GNPと輸送指数)
輸送指数のここ10数年間の推移をみると、55年度以降若干鈍化していた伸びが61年度以降高いものとなっており、とりわけ63年度は対前年度比6.4%増と大幅な伸びを示した。これを実質GNPの動きと対比してみると、概ね似た傾向となっているが、輸送業総合、輸送活動総合それぞれの輸送指数についてGNP弾性値(輸送指数の伸び率/GNPの伸び率)を計算してみると、53〜54年度、61〜63年度の景気上昇期は年平均で概ね1.0を超えるものとなっているが、その他の安定成長期にあっては1.0を下回り、GNPの伸びほどは輸送指数は伸びない傾向にある。特に、55〜60年度にかけての平均弾性値は0.56(輸送業総合)と低迷しているが、これは、この間に重厚長大型の産業構造から軽薄短小型のそれへと転換が進んだことをうかがわせる〔2−10−41図〕。
(景気変動と輸送指数)
輸送指数(輸送業総合)の変動を景気の山谷との関係でみると、若干のずれはあるものの概ね景気の山谷に対応した動きとなっている。今回の昭和61年10〜12月期を底とした現在までの景気上昇過程の指数の変動パターンは、内需主導型の景気変動によるものであるという点において、前々回の昭和53年から昭和55年に至る景気上昇過程におけるそれと類似した動きを示している。前回の昭和58年から昭和60年に至る景気上昇は、外需の拡大によってもたらされたものであり、指数の変動は今回とは異なるパターンであった〔2−10−42図〕。
- 4 輸送関連の動向
- (1) 造船
- 63年度の新造船受注量(建造許可ベース:2,500総トン以上)は、景気の拡大を反映して、485万総トン(対前年度比10.4%増)と5年ぶりに増加に転じた。国内船・輸出船別にみると、国内船は61万総トン(16.3%増)、輸出船は423万総トン(9.6%増)と、ともに大幅な増加であったが輸出船のシェアが87.2%と圧倒的に高い。これは、我が国船主によるフラッキング・アウトが影響しているためと考えられる。船種別にみると、油送船は178万総トン、21.5%減と大きく減ったが、貨物船は299万トン、43.1%増と大きく増加した。
一方、63年度の新造船工事量(竣工ベース:2,500総トン以上)は、433万総トン、1.0%減とほぼ横ばいであった。なお、63年度末の新造船手持工事量は528万総トンとなっている。
また、暦年ベースの63年の新造船工事量(ロイド統計による竣工ベース:100総トン以上)は、404万総トン(対前年比29.2%減)で、世界におけるシェアは昨年の46.6%から37.0%へと大幅に減少した。
なお、63年の舶用工業の生産額は7,319億円、13.0%増であった。
- (2) 鉄道車両
- 63年度の鉄道車両の生産実績(新造)は、JR各社の積極的な設備投資や大手民鉄の第7次輸送力等増強計画を中心とした国内需要増により、生産両数2,670両(対前年度比53.6%増)、生産金額1,678億円(40.7%増)と大幅な増加となった。需要先別にみると、国内向けは、貨物車が312両、524.0%増と大きく増加し、旅客車も1,994両、61.2%増と増加したため、2,321両(80.3%増)、1,378億円(93.0%増)と生産両数、生産金額とも大幅に増加した。また、輸出は、旅客車が319両、27.6%増となったものの、機関車が30両、77.1%減と大幅に減少したため、生産両数は349両(22.6%減)と減少し、生産金額も300億円(37.2%減)と減少に転じた。
- (3) 自動車数
- 63年度の自動車新車登録台数は501万台(対前年度比10.0%増)となり、このうち旅客自動車(乗用車とバスの合計値)は379万台(8.0%増)、貨物自動車(特種(殊)車を除く。)は110万台(16.7%増)となった。また、軽自動車販売台数(二輪車を除く。)は177万台(5.2%増)となっている。
63年度も引続きトラック輸送が好調であったこと等の影響により貨物自動車の販売台数が伸びていること、消費景気が堅調に推移するなか、軽自動車(5.2%増)よりも小型自動車(9.2%増)、小型自動車よりも普通自動車(19.8%増)と、より大型の車種の売れ行きの伸びが高いことが特徴である。
また、このように好調な新車の販売を反映し、63年度末の自動車保有車両数は5,514万台(4.7%増)となった。このうち自家用自動車(軽自動車を除く。)は2,872万台(4.2%増)、自家用貨物自動車(軽自動車を除く。)は773万台(1.9%増)、営業用貨物自動車(軽自動車を除く。)は75万台(6.5%増)、軽自動車(二輪車を除く。)は1,368万台(7.1%増)となった。
- (4) 旅行業の取扱額
- 一般旅行業者(62年12月31日現在の568社)の62年における年間旅行取扱額は、国内旅行が約2兆6,017億円(対前年比7.3%増)、海外旅行が約1兆9,366億円(16.5%増)、外人旅行が約390億円(3.6%増)となっている。なお、主要旅行業者35社の63年度実績は、国内旅行取扱額2兆4,089億円(対前年比3.7%増)、海外旅行取扱額1兆5,756億円(17.6%増)、外人旅行取扱額284億円(4.8%減)となっており、全体として引続き好調に推移している。
- 5 最近の輸送動向(元年4月〜8月の実績)
- (1) 国内旅客輸送の動向
- (JR(旅客会社)は堅調に推移)
JR(旅客会社)は6社合計で、元年4月〜8月までの輸送人員は、対前年同期比(以下同じ。)3.6%増と堅調に推移している。青函トンネル及び瀬戸大橋の開業から1年が経過したこともあり伸び率は鈍化したものの、定期旅客は4.6%増、定期外旅客は2.0%増と、定期の伸びが著しい〔2−10−43表〕。
(民鉄は増加傾向を維持)
民鉄は、2.5%増と増加傾向を維持している。このうち、定期旅客は3.2%増、定期外旅客は1.3%増とJR同様、定期の伸びが目立つ。
(東京のバスはほぼ横ばい)
東京のバスは、0.7%減とほぼ横ばいに推移した。
なお、高速バス(12系統)は、全体的には好調に推移しているが、一部他の交通機関との競合により輸送人員が減少しているところがある。
(東京のタクシーは輸送人員減少)
東京のタクシーは、輸送人員で3.5%減となっているが、実車率でみると0.6ポイント増の55.1%となっている。これは、運転手不足の影響により実働率が2.4ポイント減となっているためである。
(大きな伸びを続ける国内航空)
国内航空は、10.1%増と幹線、ローカル線とも高い伸びが続いている。
- (2) 国内貨物輸送の動向
- (JR(貨物会社)は順調)
コンテナは、酒・ビール、紙・パルプ、化学薬品の増加が目立っており、その他も好調に推移し、10.9%増と高い伸びが続いている。車扱は、石炭、石油等が減少していることにより、2.7%減と減少が続いているが、ピギーバックについては新路線の開設等により増加している。全体では、コンテナの増加により、1.2%増と増加した〔2−10−44表〕。
(路線トラックは微増)
路線トラックは、日用品、食料工業品等内需関連の貨物が好調に推移し、2.5%増となっている。
(内航海運は堅調に推移)
油送船は、黒油を中心に増えたことにより、1.4%増となっているが、石油業界の合理化、統廃合の影響により、石油販売量の伸びほど輸送量は伸びていない。
貨物船は、政府予算成立の遅れによる公共事業関連資材の輸送減はあったものの、鉄鋼、紙・パルプ、穀物等が増えたために同1.6%増と堅調に推移している。
(航空は好調を持続)
航空は、札幌発、沖縄発の生鮮貨物、東京発の一般雑貨等が増加し、6.5%増と依然として好調を持続している。
- (3) 国際輸送の動向
- (国際航空旅客は依然好調)
国際航空旅客は、9.6%増と依然として増加を続けているが、中国の政情不安の影響もあり、7、8月は2年3カ月ぶりに1桁の伸びにとどまった〔2−10−45表〕。
(外航海運貨物は三国間輸送で大きな伸び)
外航海運貨物は、輸出6.5%減、輸入2.5%減であるものの三国間が7.6%増であるため全体では0.5%減となった。
(国際航空貨物は好調を持続)
国際航空貨物は、10.4%増と依然高い伸びを続けているが、6、7月と伸びの鈍化がみられる。

平成元年度

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