平成元年度 運輸白書

第6章 新たな航空の展開

第2節 進展する空港整備

    1 空港整備五箇年計画
    2 基幹空港の整備
    3 一般空港の整備


1 空港整備五箇年計画
(1) 第5次空港整備五箇年計画
 計画的な空港整備を推進するため、運輸省は昭和42年度以来「空港整備五箇年計画」を策定してきている。61年11月28日には、関西国際空港の整備、新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開の三大プロジェクトの推進、一般空港の整備、環境対策並びに航空保安施設の整備を内容とする第5次空港整備五箇年計画(計画期間61年度〜平成2年度、総事業費1兆9,200億円(対前回計画比12.3%増)を策定し、空港整備を進めているところである(平成元年度末までの進捗率見込81.7%)。
(2) 空港整備の財源対策
 空港整備については、45年度に「空港整備特別会計」が創設され、一般会計とは別個に経理されている〔2−6−10図〕
 近年、三大プロジェクトの推進をはじめとする空港整備事業に要する資金の需要が大幅に増大しており、これに対応した財源の確保が必要となっている。
 こうした状況から、61年度から東京国際空港の沖合展開事業を対象として資金運用部からの長期借入金を導入し(平成元年度予算額300億円)、また、62年度には、完全民営化した日本航空株式会社の政府保有株式の売払収入の一部を活用し、産業投資特別会計から関西国際空港株式会社に対し622億円の出資が行われたところである。さらに、NTT株式の売却益を活用した無利子貸付制度を、62年度補正予算からはヘリポート整備に、63年度予算からはコミューター空港等の整備に導入しているところである。
 今後とも、空港整備に必要な財源を安定的に確保し、長期的視点に立って空港整備の円滑な推進を図るため、空港整備特別会計の財源対策について引き続き検討を加えていく必要がある。

2 基幹空港の整備
(1) 関西国際空港の整備
(ア) 空港建設の進捗状況
 現在の大阪国際空港は、我が国の国際及び国内航空ネットワークの二大拠点の一つを形成しているにもかかわらず、環境対策上の配慮から離着陸回数の制限など多くの制約を受けているため、我が国の航空輸送の発展の上で大きなボトルネックとなっている。このような状況に適切に対応するため、関西国際空港の早期開港が望まれている。
 59年10月に設立された関西国際空港株式会社は、62年1月、空港建設工事に着手し、空港島及び空港連絡橋の工事を行っている。空港島については、平成元年6月、護岸が開口部を除き完成し、現在埋立工事を進めている。
 また、旅客ターミナルビル等の空港諸施設については基本設計等の作業を進めている。
(イ) 空港計画の概要
 関西国際空港は、大阪湾南東部の泉州沖の海上(陸岸からの距離約5kmの沖合)に設置される我が国初の本格的な24時間運用可能な国際空港であり、将来の全体構想を踏まえて段階的に整備を図ることとし、第1期計画の建設を進めている〔2−6−11表〕
(ウ) 関西国際空港関連施設の整備
 関西国際空港の立地に伴い必要となる道路、鉄道等の関連施設の整備については、60年12月の関西国際空港関係閣僚会議において決定された関西国際空港関連施設整備大綱に基づき、関係省庁、関係地方公共団体等と十分連絡・調整を図り、空港建設の進捗状況に対応して計画的に進めることとしている〔2−6−12図〕
 空港連絡鉄道(仮称)については、JR阪和線日根野駅から空港までの間は関西国際空港(株)が、南海本線泉佐野駅から空港対岸までの間は南海電鉄(株)がそれぞれ建設を行い、日根野駅から空港までの間は西日本旅客鉄道(株)が、泉佐野駅から空港までの間は南海電鉄(株)がそれぞれ運営を行うこととなっている。関西国際空港(株)は、現在、大阪府土地開発公社に委託して必要な用地買収作業を進めている。
(エ) 今後の進め方
 平成2年度以降、埋立工事が完了した地区から順次ターミナルビル等の空港諸施設の整備を進める。また、63年度から、全体構想について検討するための基礎調査を実施している。
 関西国際空港の建設及び運営に際しては、民間活力を導入した特殊法人たる株式会社として創意工夫を凝らすとともに、環境保全に十分留意し、地元の理解と協力を得つつ進めていくこととしている。
(オ) 大阪国際空港の存廃問題
 関西国際空港の建設が進捗する中、重要な課題となっている大阪国際空港の存廃問題については、大阪国際空港騒音調停申請事件に係る55年の調停条項に基づき、58年度より調査を実施しており、当該調査結果を地元地方公共団体、調停団等に開示し、意見を聴取した上で結論を出すこととしている。
(2) 新東京国際空港の早期完全空港化〔2−6−13図〕
(ア) 空港の現状
 新東京国際空港における現供用施設の処理能力は限界に近づきつつあり、数年後には新規乗り入れ希望に対応できないどころか、厳しい便数制限等の規制を講じなければならなくなる。その結果として、国際空港としての機能を全うすることが困難となることが予想され、早期完全空港化が急務となっている。
 このため、第5次空港整備五箇年計画に基づき、B・C滑走路、エプロン、第2旅客ターミナルビル等を、平成2年度末までに概成させることとしている。
(イ) 当面の課題
(a) 用地問題
 現在、空港敷地内の未買収地は21.3ha、敷地内農家8戸であるが、これらの未買収地の取得が完全空港化のための最大の課題となっており、千葉県等の協力を得つつ敷地内農家等との話合いを一層集中的、精力的に行うこととしている。
 なお、いわゆる過激派による妨害に対しては、8月29日と9月19日の両日にわたり、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法第3条第1項に基づく使用禁止命令を空港内外に存する10カ所のいわゆる団結小屋等にかけたところである。
(b) 混雑緩和対策
 現在でも繁忙期のピーク時には相当の混雑が生じている。このため、当面の対策として、既に実施した乗継客のためのサテライトの待合室の増設、駐車場の新設等に加え、地下駅コンコースの一部を利用する到着ロビー拡充工事等を実施するほかエプロンスポットの増設等を検討することとしている。
 また、空港アクセス関連では、成田空港高速鉄道株式会社が昭和63年12月22日に第3種鉄道事業免許を取得した。さらに、アクセス鉄道の都心ターミナルにおけるチェックインサービス機能の導入についても検討を進める。
 一方、貨物についても取扱貨物量の著しい増加により、供用施設は混雑を極めている。このため、当面まず貨物地区及び現有施設の運営をより効率化するための緊急対策を実施するとともに、中期的混雑緩和対策として空港貨物地区の全面利用及び高度利用を検討している。
(3) 東京国際空港の沖合展開事業の推進
 東京国際空港は、全国36空港との間に1日約460便のネットワークが形成され、年間約3,000万人が利用する国内航空交通の最大拠点である。本事業は、この機能を将来とも確保するとともに、航空機騒音問題の解決を図るため、東京都の羽田沖廃棄物理立地を活用し、空港を沖合展開するものである。
 本事業においては、全体を3期に分け段階供用を行うこととしており、第1期については、63年7月2日の新A滑走路供用開始をもって完了し、滑走路年間処理能力は以前の16万回から18万回へと向上した。これに伴い、63年及び元年の夏ダイヤから各々約10便の増便がなされている。
 これに引き続き、第2期として西側ターミナルの整備を、4年度後半供用を目途として推進している。これにより、既存旅客ターミナルビルの約3倍の規模をもつ西側旅客ターミナルビルや約5000台収容可能な立体駐車場等のターミナル施設が整備され、また、空港アクセスとして東京モノレールの新ターミナルへの延伸、京浜急行の東京モノレールとの接続、湾岸道路・環状8号線の延伸が図られる予定である。この結果、旅客サービスレベルは、首都圏の空の玄関にふさわしいレベルへと向上することとなる。
 さらにその後には、21世紀の航空需要に対応しうる滑走路処理能力を確保するとともに騒音問題の解決を図るため、2本の滑走路の沖合移転及び東側ターミナルの整備等を第3期として行い、沖合展開事業を完了する予定である〔2−6−14図〕

3 一般空港の整備
 (整備の現状)
 航空輸送は昭和40年代以降急激な伸びを示し、今や国民の足として定着してきており、今後とも、高速輸送の主要な担い手として着実に伸びていくものと考えられる。このため、空港整備については昭和42年度の第1次から現在の第5次に至る空港整備五箇年計画に基づき着実に実施してきており、昭和42年においては空港数52、うちジェット化空港は全空港の12%に当たる6空港、2,500m以上の滑走路を有する大型ジェット機の就航可能な空港は全空港の4%に当たる2空港であったものが、現在空港数81、うちジェット化空港は56%に当たる45空港、大型ジェット機の就航可能な空港は22%に当たる18空港となっている〔2−6−15図〕。その結果、輸送構造を見ると国内航空の166の航空路線のうち65%に当たる107路線がジェット化され、ジェット機就航路線の旅客数は全旅客数の93%に当たる4,931万人を占めるまでに至っており(平成元年4月現在)、また、航空輸送需要は東京・大阪両基幹空港への二極集中構造となっている。
 また、平成元年末においては昭和58年度から大型ジェット機の就航可能な空港として整備を進めてきた新高松空港が供用を開始する予定である。
 (将来の展望)
 平成元年度には新規事業として新潟空港及び岡山空港の滑走路の延長事業、並びにコミューター空港として四万十空港及び天草空港の2空港の新設事業に着手するなど、コミューター空港の4空港も含めて27空港において滑走路の新設・延長事業を進めているが、これらが完成すると空港の数は現在の81から90(関西国際空港を含む)に、ジェット化空港の数は45から54に増加することとなる。
 また、昭和60年度以降国内航空旅客輸送の伸びは対前年度比6〜8%と順調に推移してきており、我が国の経済社会における時間価値の上昇等により今後とも国内航空旅客輸送は増大することが予想され、将来の航空需要に対応していくためには一般空港のジェット化・大型化を更に推進していく必要がある。さらに、航空サービスを享受し得ない地域や離島における空港の整備等をその需要動向、開発効果、路線運営の見通し、投資効率等を勘案しつつ、計画的に進めていく必要がある。



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