平成元年度 運輸白書

第8章 国際協力の拡充

第2節 国際科学技術協力

    1 国際科学技術協力の動向
    2 運輸省における国際科学技術協力への取り組み
    3 運輸省における各分野毎の国際科学技術協力活動


1 国際科学技術協力の動向
 近年、著しく国際的地位の高まった我が国は、科学技術分野においても、従来の欧米諸国の研究成果の吸収型から、世界に貢献できる科学技術の創造型へと転換が迫られている。こうした観点から、我が国に対して諸外国は、従前の科学技術協力のあり方の見直しや新たな協力関係の強化等、多様な要請をしてきている。
 特に最近では、昭和63年6月に新たな日米科学技術協力協定、10月には、日伊科学技術協力協定が締結されており、また、平成元年7月には英国との第1回科学技術協力実務者会合が開催されるなど、我が国との科学技術協力関係の強化が非常に重要視されてきている。

2 運輸省における国際科学技術協力への取り組み
 運輸関係の技術は、例えば、船舶の安全性、航空保安システム、気象観測等に関する技術のように世界中で使用されているため、技術開発の成果が国際基準や国際ネットワークの中に反映されることが多く、国際的な研究協力の意義が非常に大きな分野である。また、一方では、鉄道、船舶、気象関係等の技術のような日本の優れた技術は、我が国が世界に貢献できる余地が大きな分野でもある。このため、運輸省においては、所掌する自動車、鉄道、船舶、港湾、航空、海上保安、気象等の各分野について、情報交換、専門家交流、共同研究等の国際的な科学技術協力を積極的に進めているところである。
 また、今後の国際科学技術協力推進のためには、協力案件の増加のみならずその質的な充実を図っていくことが重要と考えており、運輸省では平成元年度に、国際共同研究のプロジェクトとして、科学技術庁の個別重要国際共同研究の制度を利用して、マルチナロービーム測深機による海洋測量に関する米国との共同研究、共通仕様の模型を用いた水槽実験による船舶の転覆原因に関する西独との共同研究、及び、海洋汚染に関する韓国との共同研究を実施している。
 また、研究者の交流を促進するために昭和63年度に科学技術庁に創設された国際流動基礎研究の制度を利用して、気象庁を中心とした関係省庁と米国、豪、西独の研究者が気象庁の気象研究所において気候変動に関係の深い大気内の化学反応の研究を共同で実施している。
 現在、運輸省が関係している国際科学技術協力の案件は、〔2−8−5図〕に示すように年々増加しており、14か国、75テーマ(63年度末)に及んでいる。

3 運輸省における各分野毎の国際科学技術協力活動
(ア) 自動車関係
 米国、西独と自動車の排出ガスの計測方法並びに低減技術等の公害対策に関する情報交換等の協力を行っている。
(イ) 鉄道関係
 西独と常電導磁気浮上式鉄道について、また、カナダと超電導磁気浮上式鉄道等についての情報交換を行っている。
(ウ) 船舶関係
 「天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)」の海洋構造物専門部会において、日米の海洋開発の現状及び21世紀に向けての船舶技術に関連した天然資源開発用海洋構造物、環境保全技術、先進船舶技術、沖合・水中技術、沿岸海洋空間利用及び海洋観測システム等の課題について情報交換をしている。
 また、西独との船舶の安定性等に係る共同研究、カナダやフィンランドとの氷海域輸送に係る研究開発等を行っている。一方、ノルウェーとの波浪に対する海洋構造物の応答、西独との船尾振動、西独及び中国との海洋汚染、豪とのプラズマ溶射による機能性被膜に係る情報交換等の協力を行っている。
(エ) 港湾関係
 港湾、航路、漁港及び沿岸域の技術に関する国際機関である「国際航路会議協会(PIANC)」において、捨石防波堤の解析等の研究協力を実施している。
 また、「天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)」において海洋構造物専門部会、耐風・耐震構造専門部会、海洋鉱物資源専門部会で、港湾等に関する活発な情報交換を行っている。
 また、カナダとの「港湾沿岸工学」分野における協力、西独、仏等との港湾海洋構造物に係る情報交換、米国との「日米有害底質の処理処分に関する専門家会議」の開催、西独、豪等との港湾・海洋の汚染の防止・浄化等に関する情報交換、その他カナダ、中国、韓国等との港湾工学関係の協力を行っている。
(オ) 航空関係
 米国とMLS(マイクロ波着陸システム)、航空衛星の利用、洋上管制ルートの改善等航空保安システム技術に係る協力を毎年交互に会議を開催して行っている。
(カ) 海上保安関係
 「天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)」の海底調査専門部会の開催を日米交互に行っている。また、海洋測地に関して、人工衛星レーザー測距による測地の研究を米、仏、中国等と行っている。一方海洋、海底地形等に係るデータ交換に関する協力を米、仏、西独、カナダ、豪、スウェーデン、ノルウェー等と行っている。また、海洋汚染に係る協力を中国、韓国と行っている。
(キ) 気象関係
 豪や仏(ニューカレドニア)等の気象局と静止気象衛星「ひまわり」を介した気象観測データの収集の協力や、インド、ブラジルの気象機関と衛星受信資料の解析に係る共同研究を行っている。更に、中国国家海洋局との日中黒潮共同調査、スウェーデン気象水文研究所との海氷の数値予報のモデルに関する研究、カナダ大気環境庁との気候変動に関する情報交換をはじめとして、米国、西独、豪、中国、インド、ブラジル等と気象及び海洋の調査研究に関する協力を行っている。



平成元年度

目次