平成3年度 運輸白書

第2章 新たな交通体系の構築をめざして

第2節 国際化に対応した交通政策の展開

    1 国際交通サービスの充実
    2 輸出入構造の変化と企業活動のグローバル化に対応した物流体型の整備
    3 21世紀に向けた国際観光復興方策の展開


1 国際交通サービスの充実
(1) 国際航空政策の課題
 旅客需要の大幅な増大に直面し、国際交通サービスを「必要なときに、身近に、快適に」利用できるようにするため、我が国の国際航空政策は、次のような課題を抱えている。
 我が国の国際航空需要の増大に対応した国際航空ネットワークの充実が必要である。
 旅客需要の発生が大都市圏に集中しており、空港処理能力による航空機発着回数の制約が深刻化していることから、大都市圏空港の早期完成が最重要課題であり、また、空港施設の機能の向上や地方空港発着国際路線の充実も重要である。
 国際航空市場における公正な競争の促進が必要である。
 利用者の運賃に対する要求への適切な対応、高度化・多様化する利用者ニーズに対応したサービスの提供が必要である。
 今後、外国企業との競争の激化が予想されるなか、我が国の航空企業の生産性の向上が必要である。さらに、乗員養成に限界があるなかで、供給力をどう確保するかが重要である。
 アジア市場において航空企業のコスト競争力を確保し、高水準の航空サービスを提供するため、競争力の向上を念頭においた事業展開が必要である。
(2) 国際航空政策の課題への対応
(ア) 国際航空ネットワークの充実
 利用者に信頼される国際航空ネットワークを長期にわたり安定して提供できる国際航空市場を育成することが必要であるが、現状では、日本発着旅客が大都市圏に集中しているため、空港制約の深刻な大都市圏に外国企業の乗入れ希望が集中する一方、地方空港については、需要に応じて国際航空路線の開設が行われてきてはいるものの、必ずしも十分ではない実情にある。また、大都市圏における空港整備が進んだ後にも、需要の増大が見込まれることから、中・長期的には空港制約が顕在化すると予想される。
 そこで、国際航空ネットワークの形成にあたっては、空港別に次のような効率的な機能分担を図る必要がある。
(a) 大都市圏空港及び地方ブロック拠点空港
 新東京国際空港については、全方向のネットワークと高いフリークエンシ−を確保し、将来的には、主として首都圏の需要をカバーするとともに、東日本の需要を分担するほか、国際線の乗継ぎ需要を受け持ち、国際ハブ空港(長距離路線と中・近距離路線の結節点)としての機能を発揮する。関西国際空港については、アジア等中距離路線の比重がやや高くなると考えられるが、関西圏の需要をカバーするほか、国際線の乗継ぎ需要を受け持ち、国際ハブ空港としての機能を発揮する。また、名古屋、福岡等の大都市圏空港は、アジア、ハワイ等中距離路線を中心とした路線を展開する。
 広島、仙台等地方ブロック拠点空港においては、近・中距離路線を展開する。
(b) 空港制約下での国際航空路線形成と新規航空企業の参入
 大都市空港のように空港制約が存在する空港における国際航空路線の形成と新規航空企業の参入については、空港発着枠の有効利用の観点から優先順位を検討していく必要がある。一方、空港制約のない空港における路線形成と企業の参入については、相手国との実行上の権益均衡の考え方に必ずしもとらわれず、外国企業のみであっても定期便開設を認めることが適当である。
(c) 地方空港の路線展開
 ビジネス旅客は目的地まで直行するパターンが多く、観光客もアジア等への近距離客の場合は、目的地への直行パターンをとる「手軽な旅行」を好む傾向があるので、こうしたビジネス旅客や観光旅客のニーズに応えて、地方空港における直行路線を充実することが望ましい〔1−2−22図〕。また、新千歳空港等方面別ゲートウェイ(*1)の役割を期待される空港については、必要に応じ国内乗継路線の充実や国際乗継運賃の導入等の利用促進策を講じる。

(*1)方面別ゲートウェイ…北米、東南アジア等の各方面ごとに日本発着の拠点となる空港。例えば、新千歳空港は北米と日本を結ぶ路線のゲートウェイとなることを期待されている。

(d) 回遊型旅行に対応した路線の形成
 中・長距離の日本人観光旅客には回遊型旅行(数か所を航空機で回る旅行)をしたいとの希望が強い。こうした需要に対応するため、コードシェアリング(*2)、企業間提携、ウェットリース(*3)等を活用して効率的な回遊ネットワークを形成する。

(*2)コードシェアリング…A社の自社運航便に接続する以遠路線等において、B社の運航する便にB社の便名のほか、A社の便名を付して座席予約や航空券販売を行うことにより、A社において集客力を強め、販売上のメリットを獲得する方式。
(*3)ウェットリース…A社の所有機をB社がリースで借りる際、あわせてA社の乗員も借りる方式。

(イ) 空港の整備と空港施設の機能向上
 旅客需要の発生が二大都市圏に集中し、空港制約が深刻となっているため、二大都市圏の空港の早期完成が最重要課題であり〔1−2−23図〕、第6次空港整備五箇年計画(平成3年度〜7年度)に基づく整備を進めていく。また、方面別ゲートウェイの役割を期待される空港について、C・I・Q(通関、入国審査、検疫)体制の充実を進め、国際路線の乗入れを促進する必要がある。
(ウ) 国際航空市場における公正な競争の促進
(a) 競争促進の基本的考え方
 航空政策の基本は、市場における航空企業間の競争を通じ、利用者に、良質な航空サービスが長期にわたり安定的に供給されることを確保することにあり、政府は、市場における公正な競争が、有効かつ安定的に継続されるとともに、利用者の受ける航空サ−ビスが公平なものとなるよう確保することが必要である。また、航空企業においては、競争思想を社内に浸透させ、企業体質の強化を図っていく必要がある。
(b) 競争促進の方向
 競争促進のため、需要の多い路線を中心に我が国航空企業の複数社化(一路線に複数の日本の航空企業が就航すること)を推進しているが、今後も我が国企業の事情、相手国の政策、路線の特性等を総合的に判断しつつ高需要路線を中心に一層推進する。また、運賃については、特別運賃のゾーン制(*4)の導入等航空企業の自主的判断による弾力的な価格設定の可能性を一層進める方向で制度を改善する。

(*4)ゾーン制…予め定められた上限、下限の範囲内で航空企業が運賃を設定しようとする場合には、航空当局が自動的にこれを認可するという制度。

(c) 米国、ECの動向への対応
 米国、ECの動向の競争政策については、その動向を注意深く見守っていく必要があるが、我が国の国際航空市場における広い意味での利用者利益を害しない観点から、慎重に対応する。
(エ) 利用者の運賃に対する要求への対応
(a) 運賃制度の改善
 近年、利用者の価格意識がとみに高まってきており、運賃の水準や内容についての利用者の要求に適切に対応することが重要な課題となっている。特に、「格安航空券」の存在等から利用者の運賃に対する不明瞭感や不信感が強い状況にあるため、運賃制度の改善を早急に行う必要がある。
(b) 運賃認可についての考え方
 国際航空運賃の設定は、基本的には、各企業の自主的な判断と創意工夫のもとに行われるべきであるが、寡占化された路線での運賃高騰や原価を大幅に割るような市場収奪運賃等の防止を図る観点からの規制が必要である。また、相手国が自国企業保護を目的とした運賃政策をとる可能性もあることから、二重認可方式(*5)をとることが適当である。

(*5)二重認可方式…国際航空運賃は関係国の認可を受けて発効するシステムがとられており、例えば、日英間の運賃が正式発効するためには両国政府の認可を必要とするという方式。

(c) 運賃認可の弾力的運用
 実際の運賃認可にあたっては、航空企業の弾力的な運賃設定を極力可能とし、利用者の保護、健全な航空企業の育成を確保するため、バランスがとれ、かつ、市場原理が有効に機能しうる運賃政策をとることが必要である。
(d) 新エコノミークラス運賃の設定
 現在のエコノミー運賃はほとんど活用されていないため、新エコノミークラス運賃を設定し、企業の出張等個人客に広く利用される基準的運賃とすることが必要である。
 すでに3年10月から日本〜欧州間に新エコノミークラス運賃を設定したところである。
(e) 特別運賃についてのゾーン制の導入
 季節性のある特別運賃(団体包括旅行運賃、特別回遊運賃等)については、ゾーン制を導入し、航空企業の弾力的な運賃設定を可能とすることが必要である。
(f) 地方空港活用のための乗継運賃の検討
 地方都市から新千歳空港等方面別ゲートウェイ空港を経由して出国することが容易となるよう、新東京国際空港経由での出国に比べて旅客負担が軽くなるような国際乗継運賃の検討が必要である。
(g) チャーター運賃の弾力化
 チャーター運賃については、チャーターの実施内容等に応じた柔軟な設定ができるようにするため、包括的に幅をもって認可する仕組みを導入する必要がある。
(オ) 高度化・多様化する利用者ニーズに対応したサービスの提供
 高度化・多様化する利用者ニーズに対応し、利用者利便の向上を図るため、次のような対策が必要である。
(a) 「手軽さ」の開拓
 我が国発着の国際航空旅客は観光客が中心であるため、ゴールデンウィークや夏休み等に需要が集中する傾向がある〔1−2−24図〕。こうした需要を平準化するため、オフピーク時における低廉な旅行の実現等を図っていく必要がある。
(b) 旅行の快適性の確保
 一飛行における機内滞在時間が相当長くなっていることから、機内の居住性を高め、機上で快適な時間を過ごせる工夫をするなど、快適な旅行の実現のため細心の配慮に努める必要がある。
(c) 旅行ニーズの多様化への対応
 海外旅行者の旅行目的、形態、目的地等が多様化していることから〔1−2−25図〕、航空企業においては、海外旅行の多様なニーズを積極的に把握して、新規ルートの設定等航空サービスの充実を図り、トータルとしての旅行商品の魅力度の向上に今後とも努める必要がある。
(カ) 我が国航空企業の供給力の充実と効率化の推進
(a) 供給力充実と効率化の必要性
 近い将来大都市での空港制約が緩和された場合、増大する需要に対応して飛躍的な供給力増が必要となろうが、我が国航空企業は、乗員供給力の制約等があるため、厳しい競争環境に直面すると予想される。このため、供給力の充実と効率化の推進を積極的に行うことが必要である。
(b) 供給力充実の方策
 我が国航空企業においては、乗員の自社養成を進めるとともに、必要に応じ、外国人乗員の導入を図る必要がある。また、我が国航空企業から外国航空企業に対する「運航委託」方式の導入により、多角的に供給力を確保していくことも必要である。
(c) 効率化の推進方策
 自社のサービス供給体制の効率化を基本としつつ、チャーター輸送等特定の航空市場の需要に対応したサービス供給体制の分化(分社化等)により効率化を進めることが必要である。また、ウェットリース、コードシェアリング、ゲートウェイにおける機材の変更等の方策を活用していくことも必要である。
(キ) アジア市場等近距離国際航空における我が国航空企業の競争力を確保した事業展開のための方策
(a) 競争力確保の必要性
 アジア市場においては、アジアの航空企業がコスト競争力及び運賃等サービス面における優位性を背景として競争力を発揮してくるものと考えられる。このため、我が国航空企業においても、これに対応した競争力を確保する必要があり、アジア市場において低コスト化の図られた定期航空会社が必要となってきている。
(b) 地方発着の推進と国際チャーターの拡大
 アジア等近距離国際航空の分野では、利用者の利便を向上させるため地方空港発着の直行路線の設定を一層推進する。
 また、地方における国際チャーター拡大のため 〔1−2−26図〕、チャーター運賃規制の弾力化、国際チャーター専門会社の活用、C・I・Q体制の整備が必要である。

2 輸出入構造の変化と企業活動のグローバル化に対応した物流体型の整備
(1) 国際物流に関する課題
 我が国の輸出入構造の変化に伴い、近年、輸出品の高付加価値化や製品輸入、生鮮食品の輸入の増加を反映して国際航空貨物が急増しているほか〔1−2−28図〕、同空港の容量制約が大きな問題となっている。このため、国際貨物輸送の円滑化と利便性の向上を図るとともに、トランジット貨物の中継機能を充実させることが課題となっている。
(イ) 国際航空貨物輸送の課題への対応策
 上記課題に対応して、次のような国際航空貨物施策を推進する必要がある。
(a) 新東京国際空港一極集中への対応
 新東京国際空港内外の国際貨物取扱施設等の拡充・整備を進めるとともに、新千歳空港をヨーロッパ路線、北米路線の貨物の国内中継拠点とするなど地方空港の活用を推進する。
 また、新千歳空港等地方空港を活用した貨物チャーター便の運航を継続し、貨物需要の定着を推進する。
 なお、地方空港の活用にあたっては、JRと地方空港との接続の改善、国内貨物専用会社の積極的活用等により国内転送の改善を図る必要がある。
(b) 運航委託の活用による国際貨物定期便の拡充
 我が国の航空企業においては、自社の機材・乗員のみでは、急激に増加する国際航空貨物需要に対応しえない状況にあることから、外国航空企業に運航を委託して事業を遂行する「運航委託」方式等を活用し、国際航空貨物定期便を拡充する。
(c) 国際航空貨物運賃の弾力化
 航空貨物運賃については、実勢運賃と認可運賃のかい離がみられるが、基本的に市場原理に基づいて設定される性質のものであること等から、その実態に即した運賃とするため、包括的に幅をもって認可する制度を導入し、柔軟な運賃設定を可能とする。
(d) フォワーダーチャーターの導入
 国際航空貨物輸送量の増大、荷主のニーズの高度化・多様化等に対応したさまざまな国際航空輸送サービスの提供を促進するため、利用運送事業者が複数荷主の貨物をまとめ、航空機を借り切る形のチャーターであるフォワーダーチャーターの導入について検討する必要がある。
(3) 国際海上貨物輸送のあり方
(ア) 貿易構造の変化に対応した施設整備
 貿易構造の変化により製品輸入、食料品輸入が増大しているが、これに伴い、国際海上コンテナ輸送は、荷役の効率化による輸送時間の短縮と複合一貫輸送を可能にするというコンテナ輸送の利点を背景に、飛躍的に発展し、2年の我が国外航海運におけるコンテナ化率は84.6%となるなど、コンテナ貨物量が増加しているとともに、コンテナ船の大型化が進んでいる。また、近海、東南アジア航路においては、我が国の三大湾以外の地方の港湾にコンテナ船が直接寄港するなど、コンテナ貨物の地方での取扱いも増加している〔1−2−30図〕
 また、LNGの安定供給を確保するためには、その基地となる港湾の整備を促進することも必要である。
(ウ) 国際化時代における海上コンテナ輸送の課題
 国際海上コンテナ輸送は、輸送ニーズの高度化のなかで、次のような課題を抱えている。
 船社は、ボート・ツー・ボートの輸送から内陸ポイントへの輸送、さらには荷主のドアまでの輸送ニーズに対応できる体制を整備することが求められてきており、このため、外航海運企業においても、船社業務に加えて内陸輸送についても利用運送等により担っていくことが必要となっている。
 現在の荷主の国際物流ニーズは、単なる貨物の輸送にとどまらず、広範なサービスの付加を強く求めており、輸送それ自体を生産工程の一部ないし流通在庫としてとらえ、よりトータルな物流管理を求めている。この要請に応えるためには、海上輸送のサービス分野において、スケジュール管理の正確性の向上に加えて、貨物の保管、管理、集配送等の体制を整備することが必要となっている。また、情報サービス等広範なサービスの付加等高度化する荷主のニーズへの対応も求められている。
(エ) 海上コンテナ輸送の課題への対応策
 以上のような課題に応えるため、外航海運企業と行政には、次のような対応が求められている。
 外航海運企業においては、今後とも安定的で健全かつ信頼できる輸送サービスを提供していくため、企業のグループ化等による経営基盤の強化、総合物流業化による高品質のサービスの提供、適正な運賃収受の確保等による航路秩序の安定化等の努力を払うことが必要である。
 一方、行政においては、外航海運企業が安定的な輸送サービスを提供しうるようにするため、二国間、多国間の国際会議等を通じての自由かつ公正な外航海運活動の推進、米国、ECとの政策調整、不公正価格競争の防止対策の検討等に努めることが必要である。
(オ) 我が国商船隊の維持
 昭和54年の第2次石油危機や60年以降の大幅な円高の進行により、我が国外航海運企業は厳しい経営を余儀なくされ、こうしたなかで円高による船員費格差の一層の拡大等により、我が国商船隊の中核をなす日本船の国際競争力が著しく低下した。このため、フラッギング・アウト(日本船の海外流出)が急速に進み、日本船の隻数は60年央の1,028隻から平成2年央の449隻へと激減した。
 我が国が今後とも貿易立国として安定的発展を維持していくためには、健全な商船隊を擁する外航海運業の保持が不可欠であり、我が国商船隊を全体として国際競争力のあるものとして維持していくことが必要である。そのなかで日本船は、安定輸送力の提供、船舶の運航ノウハウの維持、償却資産の保有による経営基盤の強化、日本人船員の安定した職域の確保、環境保全・安全確保、緊急時の信頼性、国家主権に基づく対応の可能性等の観点から意義があり、我が国商船隊の中核として位置づけられ、所要の国際競争力を確保しつつ、その整備を推進していくことが必要である。こうしたなかで、日本船のフラッギング・アウトを防止するため、2年3月から日本籍一般外航船について外国人船員との混乗が開始された。しかし、現在のところ日本船のフラッギング・アウトに歯止めをかけるにはいたっておらず、今後、既存船への混乗の一層の推進、競争力強化のための配乗構成の見直し等の方策について、関係者間でさらに検討を進める必要がある。また、近代化船についても、一層の国際競争力の向上が必要となっており、新しい近代化船のあり方について検討を進めているところである。

3 21世紀に向けた国際観光復興方策の展開

(1) 国際観光の果たすべき役割
 所得水準の向上と自由時間の増大に伴い、国民はゆとりや生きがいといった精神的な充足感をもたらすものを求めるようになってきている。こうした国民意識の変化を背景として、日本人の海外旅行者は大幅に増加し〔1−2−31図〕、年間1,000万人を超えるにいたっている。
 国際観光は、「豊かさを実感できる国民生活」の実現に大きく寄与すると同時に、草の根レベルの国際交流として国際相互理解の増進にも大きな役割を果たしていることから、質的向上に重点をおきながら、引き続き海外旅行の振興を図る必要がある。
 他方、外国人の日本に対する理解を深め、国際化を通じた地域振興を推進するため、外国人の訪日旅行を促進する必要がある。
(2) 国際観光振興のための具体的施策
(ア) 外国人訪日旅行の促進
(a) 海外観光宣伝の充実・強化
 外国人の旅行ニーズ等についての綿密な調査・現状分析等を行い、外客動向・ニーズの把握に努める。また、アジア地域からの訪日外国人が増加していること〔1−2−32図〕等を踏まえ、韓国等アジア諸国に重点を置いて観光宣伝のためのパンフレットなどを作成・配布するとともに、アジア等における(特)国際観光振興会の観光宣伝事務所の体制の見直し等を行う。
 さらに、外客の関心の高い新たな観光メニューの宣伝等を推進するほか、農村、日常生活の紹介等多面的な日本紹介を行い、日本の正しいイメージを諸外国に伝える必要がある。
(b) 外国人訪日旅行の容易化
 空港の整備、地方空港の活用、チャーター便の活用等による旅行費用の低廉化などに取り組み、日本への移動の容易化を推進するとともに、国際観光モデル地区における案内標識等の整備、外国人旅行者に対して総合的な観光案内を行う「i」案内所等案内・情報提供体制の充実、ホテル・旅館の政府登録制度の充実等により外国人旅行者の受入体制の整備を図る。
(c) 国際交流機会の拡大
 コンベンションシティとしての基礎的条件が整っている都市を指定し、国際会議の誘致・受入体制の整備を図る国際コンベンションシティ構想等を推進し、国際コンベンションの振興を図るとともに、外国人旅行者が日本の家庭を訪問し、その日常生活に触れることができるホームビジット制度等の拡充・利用促進等を行い、市民レベルでの国際交流の促進を図る〔1−2−33図〕
(イ) 日本人海外旅行の促進
(a) 旅行環境の整備
 週休二日制の普及、リフレッシュ休暇制度の導入等による休暇制度の改善と観光週間等のキャンペーンの充実が必要である。
(b) 海外旅行の容易化・サービスの向上
 チャーター便の活用、個人向け・家族向け割引運賃制度の充実等により海外旅行費用の低廉化を推進するとともに、国際空港の整備、空港アクセスの改善等により交通手段の改善を図る。
 また、海外旅行に関する情報提供の適正化と旅行者の安全対策を推進するほか、旅行業者の体質の強化等により旅行サービスの向上を図ることが必要である。
(c) 海外旅行の質的向上
 海外旅行者のニーズについては、海外旅行経験者の増加〔1−2−34図〕等に伴い、「代表的観光地をめぐる旅行」、「海や山への旅行」といった従来型の海外旅行へのニーズが減少し、「ゆっくり滞在する旅行」、「その土地の生活や習慣にふれる旅行」、「民俗芸能・美術・音楽の旅行」といった新しいタイプの海外旅行へのニーズが増加しており、その多様化の傾向が顕著となっている〔1−2−35図〕
 このため、このような海外旅行者のニーズの多様化に対応した個性的な商品・優良な商品の企画の促進等により海外旅行の多様化を推進し、諸外国に対する理解の増進を図る必要がある。また、各種ガイドブックの作成担当者による会議を開催し、外国の文化、社会等に関する記載の適正化を図ることも必要である。
 さらに、日本人旅行者のマナーについて観光教育の一環としてその意識の向上を図るほか、日本人旅行者が相手国の人々との交流を実践することを支援するため、日本の文化、歴史等を紹介したハンドブックの作成等を行うことが重要である。
(3) 観光交流拡大計画の推進
 以上の施策を推進するため、運輸省では、日本人海外旅行者数を1,000万人にすることを目標として昭和62年9月に策定した「海外旅行倍増計画」(テン・ミリオン計画)が予定よりも1年早い平成2年に達成されたことをも踏まえ、21世紀を展望した総合的な国際観光振興のための行動計画として、3年7月に観光交流拡大計画(Two Way Tourism 21)を策定しており、今後、その着実な実施を図ることとしている〔1−2−36表〕。




平成3年度

目次