平成3年度 運輸白書

第1章 平成2年度の運輸の概況と最近の動向

第2節 施設整備の動向

    1 公共投資
    2 民間設備投資


1 公共投資
 (交通関係公共投資は横ばい)
 平成2年度の交通関係公共投資は、〔2−1−27表〕のとおりであり、総額12兆158億円、対前年度比(以下同じ。)2.6%増となっている。
 個別部門についてみると次のとおりである。
 〔鉄道〕
 鉄道全体では、3,865億円、9.4%減と減少傾向が続いている。
 2年度の内訳をみると、日本鉄道建設公団(貸付線)は、元年度に着工した北陸新幹線(高崎・軽井沢間)の工事が本格化したものの、京葉線の2年3月の全線開業等により6.5%減の449億円となった。新幹線鉄道保有機構は、東北新幹線上野〜東京間の建設工事が本体工事から開業関連工事に移ったことにより、25.7%減の159億円となった。公営地下鉄は、東京都12号線光が丘〜新宿間等の工事が進捗しているが、京都市烏丸線北山〜北大路間が完成したため、全体では15.8%減の2,197億円となった。営団地下鉄は、7号線目黒〜岩淵町間の工事が進捗したことにより、14.8%増の831億円となった。公営ニュータウン鉄道は、横浜市3号線新羽〜あざみ野間の工事が進捗しており、0.9%減の229億円となった。
 〔港湾〕
 港湾全体では、9,511億円、5.9%増と増加傾向が続いている。
 2年度の内訳をみると、港湾整備事業費は、全体としては、横ばいであるが、大阪港、博多港等28港における外貿コンテナターミナルの整備、東京港、大阪港等28港における港湾の再開発、和歌山下津港における沖合人工島の整備、小名浜港、和歌山下津港等30港における公共マリーナの整備等を重点課題として事業を推進した。港湾機能施設整備事業等は、港湾関係起債事業、民活事業の強い整備要請を受け、23.6%増の2,064億円となった。海岸事業は、東京港、新潟港、津田港等311港で海岸保全施設の整備、神戸港、博多港等83港で海岸環境の整備が進められ、0.3%増の675億円となった。
 〔空港〕
 空港全体では、3,704億円、元年度の11.6%増に引き続き、17.0%増と高い伸びが続いている。
 2年度の内訳をみると、空港整備費は、2,704億円、16.3%増と高い伸びとなっているが、これは新東京国際空港2期工事費の39.5%増が大きく影響している。また、航空保安施設の整備費が62.8%増の612億円と高い伸びとなった。
 〔道路〕
 道路全体では10兆3,078億円、2.4%増となった。

2 民間設備投資
 2年度の民間設備投資は、大蔵省「法人企業統計年報」によれば、57兆4,599億円で内需関連産業を中心に積極的な投資が行われた結果、対前年度比14.1%増と引き続き大幅な伸びを示した。
 業種別に増加率をみると、製造業は対前年度比16.7%増、非製造業は同12.6%増となった。製造業では、ほとんどの業種で2桁の増加となっており、特に鉄鋼、石油・石炭製品、一般機械、輸送用機械、化学等の伸びが大幅であった。非製造業では、卸売・小売業がほぼ横ばいであったが、ほとんどの業種が2桁の増加となっており、特に建設業、不動産業等の伸びが大幅であった。
(1) 運輸関連民間設備投資の動向
 (運輸関連民間設備投資は引き続き増加)
 「運輸関連企業設備投資動向調査」(原則として資本金5,000万円以上の3,069社調査)によると、2年度の運輸関連民間設備投資の実績額は、工事ベースで総額3兆2,929億円と16.5%増となった〔2−1−28表〕
 このうち、「運送業部門」 は、14.2%増で、内航海運業、ハイヤー・タクシー業、倉庫業、航空運送業、トラック運送業等が増加、元年度に大幅に増加した国内旅客船業は減少となった。「製造業部門」は、30.8%増と前年度に引き続き全体的に増加となった。「その他部門」は、29.1%増で、航空関連施設業、港湾建設業等が増加、自動車道業、自動車ターミナル業は減少となった。
 (鉄道業、航空運送業の設備投資は活発)
 主な事業ごとにその設備投資動向をみると、鉄道業は、輸送力増強のために、用地、構築物等を中心に13.0%増となった。航空運送業は、地上施設、航空機を中心に、倉庫業は、普通倉庫、冷蔵倉庫を中心に、トラック運送業は、ターミナル施設、車庫及び修理工場を中心に増加となっており、19業種中16業種が投資額を増加させた。
 一方、国内旅客船業は一般旅客船、水中翼船等は増加したものの、自動車航送船、高速艇が減少したことに伴い2.9%減となった。
 (研究開発、合理化及び省力化のための投資増加)
 2年度設備投資実績(工事ベース)を投資動機別〔2−1−29表〕にみると、「研究開発のための投資」(45.6%増)、「合理化及び省力化のための投資」(41.6%増)、「能力増強投資」(20.4%増)、「安全対策のための投資」(20.2%増)等が増加、「サービス改善のための投資」(2.7%減)、「公害防止設備及び環境整備のための投資」(14.3%減)が減少した。シェアでは能力増強投資が約6割を占めている。
 (内部資金の増加)
 2年度設備投資実績を支払ベースでみると、設備投資の大幅な増加に対応して、3兆1,493億円と元年度実績に比べ15.7%増となった。調達資金別には、外部資金調達環境の悪化の影響を受け、内部資金が同34.6%増、1兆5,345億円、外部資金が同2.1%増、1兆6,148億円となっている。
 この結果、投資総額に占める外部資金の割合は、51.3%と元年度に比べ6.8ポイント減となり、外部資金調達内訳では、民間金融機関(34.1%増)、政府系金融機関(25.7%増)等がシェアを伸ばしたのに対し、社債(49.7%減)、外資(36.3%減)等のシェアが減少した〔2−1−30表〕
 (引き続き堅調な3年度投資計画)
 3年度の設備投資計画(工事ベース)〔2−1−28表〕は、総額3兆6,654億円、対前年度実績比11.3%増と、金利情勢、景気の先行き等不透明な部分はあるものの、元年度実績に引き続き堅調に推移している。主な事業の投資計画をみると、鉄道業は軌道改良工事、駅舎の増改築等に対し対前年度実績比16.7%増の1兆3,477億円、航空運送業は地上施設、航空機等に対し同16.0%増の5,785億円と引き続き高い投資が計画されているほか、鉄道車両製造業、航空関連施設業、造船業等でも活発な投資が計画されている〔2−1−31表〕
 また、投資動機別内訳をみると、「研究開発のための投資」(252.8%増)が引き続き高い伸びを示しているとともに、「エネルギー対策のための投資」(37.9%増)、「公害防止設備及び環境整備のための投資」(35.7%増)、「安全対策のための投資」(16.7%増)の伸び率が「能力増強投資」(14.6%増)の伸び率を上回っていることが特徴である。



平成3年度

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