平成3年度 運輸白書

第3章 観光レクリエーションの振興

第3章 観光レクリエーションの振興

第1節 観光の振興

    1 観光交流拡大計画(Two Way Tourism 21)の推進
    2 90年代観光振興行動計画(TAP90's)の推進等


1 観光交流拡大計画(Two Way Tourism 21)の推進
(1) 海外旅行倍増計画の成果
(ア) 計画の策定・推進
 日本人の海外旅行は、国際相互理解の増進に役立つだけでなく、我が国及び相手国の国際収支のバランス改善等にも寄与するものであることから、運輸省はその促進を図るため、昭和62年9月に日本人海外旅行者数(61年552万人)をおおむね5年間で1,000万人に倍増することを目標とする「海外旅行倍増計画(テン・ミリオン計画)」を策定し、同計画に基づいて、海外旅行促進ミッションの派遣等の施策を強力に推進してきた。
(イ) 計画の具体的成果
 テン・ミリオン計画に基づく海外旅行の振興のための施策の結果、円高による海外旅行費用の割安感や好景気の影響もあって、平成2年に海外旅行者数は1,100万人に達し、テン・ミリオン計画は予定よりも一年早くその量的目標を達成するなど所期の成果を挙げている〔2−3−1表〕
(2) 観光交流拡大計画の策定
 国際間の相互依存関係がますます深まっており、我が国の国際社会における地位が極めて重要なものになっているため、国際間の相互理解の増進及び市民レベルの国際交流の拡大を図り、我が国の国際社会における安定的地位の維持・発展に努めることがますます重要になってきている。一方、日本人の海外旅行は有名地の駆け足観光やショッピングなど画一的なものが多く、モラルやマナーに依然問題があり、国民が海外旅行が本来持つ多様な価値を理解し、その個性に合ったより豊かな海外旅行を楽しむことができるようその質的向上を図っていく必要がある。そのため、運輸省は、運輸政策審議会の答申をも踏まえ、21世紀を展望した新たな国際観光の振興のための行動計画として観光交流拡大計画(Two Way Tourism 21)を策定し、双方向の観光交流の拡大と海外旅行の質的向上を重点とした施策を強力に推進している。
(3) 旅行業に係る施策
(ア) 旅行業の現状
 国民のレジャー指向の高まりを背景に旅行需要は年々増大しており、旅行業者のうち主要35社の2年度の取扱高は、湾岸戦争の影響を受けて2、3月は落ちこんだものの、通年では4兆7,600億円と元年度の4兆3,755億円に比べ、8.8%の伸びとなった。
 また、旅行業者の数も年々増加し、3年4月1日現在、一般旅行業者796社、国内旅行業者6,578社、旅行業代理店業者4,024社の計11,398社となっているが、従業員数50人以下の中小事業者が全体の約8割を占めている。
(イ) 旅行者の保護
 運輸省では、旅行業法に基づく規制のほか、旅行者の保護の観点から以下の施策を行った。
@ 外務省から渡航自粛勧告等の渡航情報を受け、旅行業者に対しその周知徹底を図ることにより、旅行者に対する安全指導を行った。また、湾岸危機の際には、中近東地域における旅行者の状況等について情報収集に努め、旅行者の安全確保を図った。
 さらに、3年6月及び9月に第4回及び第5回の日本人海外旅行安全等対策研究会を開催し、国民の海外旅行をより一層安全なものとするための万策の検討を行った。
A ホームステイに係るトラブルが多発していることから、(社)日本旅行業協会に対し「ホームステイツアー主催取扱ガイドライン」の見直しを指導し、3年4月に、旅行業者と受入機関との交流及び参加者とホストファミリーとのコミュニケーションの推進を内容とする改訂が行われた。
 また、3年5月から9月にかけて、さらに実りあるホームステイの実現を図るため、(社)日本旅行業協会に対し「ベターホームステイツアー」キャンペーンの実施について指導した。
 さらに、3年6月に官民合同のホームステイ実態調査団を米国 へ派遣した。
B 3年3月に旅行業者に対する立入検査等、旅行業法遵守状況の総点検を行うとともに、旅行に際しての注意事項を喚起する(社)日本旅行業協会及び(社)全国旅行業協会の「いい旅しよう'91」キャンペーンを後援した。
C 海外における宿泊施設等旅行手配業務の向上を図るため、3年8月には、当該手配に関する連絡体制の整備、研修等を行う日本海外ツアー・オペレーター協会の社団法人化を行った。
(4) 外国人訪日旅行の促進
(ア) 外客誘致活動の充実
 外客の招致は、国際的な相互依存関係がますます高まる中で、文化的背景の異なる諸国との相互理解・相互交流の機会を提供し、市民レベルでの国際親善を進めていくうえで、積極的な意義を有している。
 このため運輸省としては、海外における観光宣伝や、外国人観光客に対する情報提供といった外客の来訪促進のための事業を、(特)国際観光振興会を通じて行うとともに、外客に低廉な宿泊施設を紹介するウエルカム・イン予約センターの充実について(財)国際観光サービスセンターを指導するほか、訪日外客の利便を増進し、国際交流を一層促進するため、国際観光振興会や地方公共団体と連携しながら以下の諸施策を実施している。
(イ) 国際観光モデル地区の整備
 国際観光モデル地区構想は、外客が安心して一人歩きできる環境をつくり、同地域への外客の来訪を促進し、地方の国際化、国際的相互理解の増進等に寄与しようというものであり、現在34道県36地区が国際観光モデル地区に指定されている。同地区においては、他方公共団体等が中心となって整備実施計画を策定し、この計画に基づき、国際観光振興会と連携して「i」案内所、総合案内板、各種標識等の整備、パンフレットの充実、善意通訳、ホーム・ビジットの普及等外客受入体制の整備を推進している。
 この結果、3年4月には、指定された36地区において、「i」案内所は指定前の29カ所から79カ所に、総合案内板〔2−3−2図〕は228カ所から942カ所にそれぞれ増加した。
 特に今年度は、当初の目的どおり外客が安心してひとり歩きできるように効果的な整備が進んでいるかを把握するため、外国人による整備推進状況モニター調査を12地区で行うこととしている。
(ウ) 国際交流村の整備
 国際交流村は、国際観光モデル地区における外客誘致の拠点として、外客に地域の自然、文化、歴史等の紹介や外客の伝統的生活文化体験のための施設、イベントを通じた外客と地域住民の交流の場となる施設等を一体的に整備するもので、現在、3地区において整備が終了し、6地区において整備が行われている。
(エ) 国際市民交流基盤施設の整備
 市民レベルにおける国際化の促進に資する交流拠点の形成を図るため、民活法に基づき「国際市民交流基盤施設(*)」の整備を行う民間事業者に対して金融、税制の支援措置を講じている。

*「国際市民交流基盤施設」・・・我が国又は外国の経済・社会・技術等を効果的に紹介するための一群の施設のことであり、以下の施設を一定のエリア内に整備するもののことである。
1.展示施設(ex.歴史博物館、観光情報インフォメーションセンター等)
2.展示物として供される建物又は構築物(ex.城の再現、外国の街並みの再現等)
3.観覧場その他の共同利用施設(ex.イベントスペース、総合案内所等)

(オ) 登録ホテル・旅館等の整備
 訪日外国人の利便の増進等による国際観光の振興の観点から、国際観光ホテル整備法に基づき、施設・設備の優れたホテル・旅館を登録するとともに、国際観光レストラン登録規程に基づき、外国人旅行者が容易にかつ快適に食事ができる優秀なレストランを登録することにより、外客接遇の充実を図っており、運輸省としては、登録を受けたホテル・旅館等については税制等の支援措置を講じている。これにより、3年10月現在、627軒のホテル、1,638軒の旅館及び146軒のレストランが登録されている。
 これらのホテル・旅館の政府登録制度については、近年における訪日外国人の増大、方面別構成やニーズの多様化等に対応した見直しを行い、本制度を一層有効に活用していくこととしている。
(5) コンベンションの振興
(ア) 国際コンベンション・シティ構想の推進等
 国際及び国内の各種会議、見本市・展示会等のコンベンションの振興は、地域へ人とともに物、情報、文化等を呼び込むことを通じて、人的交流等による国際相互理解の増進、地域経済の活性化及び地方都市の国際化等に大きく寄与するものであることから、近年、多くの地方都市がその振興に熱心に取り組んでいる。
 このような状況に対応して、運輸省では、国際コンベンション・シティ構想に基づき、昭和63年4月及び12月に全国の25都市を国際コンベンション・シティとして指定し、(特)国際観光振興会の海外宣伝事務所を通じた諸外国への宣伝、(財)日本コンベンション振興協会によるセミナー、シンポジウム、トレ一ドショー等による人材育成、ノウハウ及び情報の提供等の支援措置を講じている。
 また、地域におけるコンベンションの誘致・受入れ、主催者に対する支援等の活動を行う中核的推進機関である地方コンベンションビューローの設立等に対する指導を通じて、地域における振興体制の整備を推進している。これまで運輸省の指導のもとに仙台、福岡、横浜、宮崎、岐阜、浜松、千葉、前橋、富山、北九州、名古屋、松山、富士吉田、鹿児島及び札幌で財団法人としてコンベンションビューローが設立された。
(イ) 国際会議場施設の整備
 民活法に基づき、国際会議場施設の整備を行う民間事業者に対して、金融・税制の支援措置を講じている。同法に基づき、63年1月に横浜国際平和会議場、平成元年2月には、富山県の宇奈月国際会館に係る整備計画の認定を行っており、横浜国際平和会議場については、3年7月に竣工し、宇奈月国際会館については、3年度において引き続き整備を推進している。

2 90年代観光振興行動計画(TAP90's)の推進等
(1) 観光立県推進会議の開催
 運輸省では観光の振興が地域の活性化、国民のゆとりある生活の実現、国際相互理解の増進等に大いに貢献することから、21世紀をめざして観光のより一層の振興を図るため昭和63年4月「90年代観光振興行動計画(TAP90's)」を策定した。
 この行動計画は、中央及び選定された地方ごとに有識者からなる観光立県推進会議を開催し、官・民、中央・地方が一体となって観光振興に関する具体的施策を提言し、実行に移そうとするものである。
 観光立県推進地方会議は、平成2年度までに4回開催され、3年度は、6月5日から7日まで和歌山・三重・奈良県において第5回地方会議が、9月17日から19日まで青森・岩手・秋田県において第6回地方会議が、さらに11月6日から8日まで鳥取・島根県において第7回地方会議が開催された。これらの地方会議では、それぞれの地域の特質に応じた観光振興方策について活発な審議が行われ、会議での提言は、各地域の協議会等フォローアップ推進組織を通して、逐次実施に移されるなど、観光立県推進運動は着実な成果をあげている。
(2) 新たな観光地づくり
(ア) 家族旅行村の整備
 家族旅行村は、家族が恵まれた自然の中で手軽に観光レクリエーション活動ができるようキャンプ場、ピクニック緑地、スポーツレクリエーション施設、簡易宿泊施設等を整備するもので、現在、33地区において供用が開始され、14地区において整備が行われている。
(イ) 総合保養地域の整備
 ゆとりある国民生活の実現と地域の振興等を図ることを目的とした総合保養地域整備法に基づき、3年8月末までに総合保養地域の整備に関する30道府県の基本構想が承認されている。
 運輸省としても、自然環境の保全、周辺の既存観光地との調和やその積極的活用等に十分配慮した魅力ある総合保養地域の整備の促進が図られるよう、積極的に支援していくこととしている。



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