平成3年度 運輸白書

第4章 貨物流通の円滑化

第4章 貨物流通の円滑化

第1節 効率的な物流システムの形成

    1 物流効率化の必要性
    2 物流効率化の方策


1 物流効率化の必要性
 近年、物流事業は国民生活の向上や産業構造の変化に対応し、多品種、小ロット化、高頻度輸送、定時性の確保等産業界のニーズへの対応、宅配便、トランクルーム等消費者のニーズへの対応等主として物流の質的な高度化に努めてきた。
 しかしながら、労働力不足、道路混雑、環境問題等が深刻化し、量的な拡大にせよ質的な高度化にせよ、従来のように荷主の要請に物流がそのまま対応していくことが困難になるとともに、物流事業がこの点を克服しようとすると、コストが高くついたり、社会的な批判を受けるなどの問題が生じるようになった。
 一方、産業界においては、最近物流を顧客サービスの一部としてとらえ、企業戦略的にその充実を図っていこうとする動きが強く、また国民生活の面においても豊かさに見合ったくらしの実現が求められていることから、物流の高度化、多様化への要請は今後さらに高まっていくものと考えられる。
 したがって、これからは制約要因の中で物流の高度化、多様化を図っていくこと、そのために一層の物流の効率化を進めていくことが必要である。さもないと制約要因の深刻化とともに物流が経済の発展や国民性活の向上のネックとなっていくおそれがある。
 このため、幹線のモーダルシフト、都市内の積合せ促進等物流事業が自ら効率化のための取組みを行うことがまず必要であるが、これらの取組みは産業側の協力なくして効果をあげられるものではなく、産業界においても物流事業のこのような努力が実るよう支援していくことが必要である。
 また、物流事業の対応にとどまらず、産業界においても物流拠点の集約、配送の共同化等自らの工夫で物流の効率化を進めるとともに、死に筋商品の排除、ジャスト・イン・タイムの見直し等物流を前提に生産や販売を見直す動きが生じており、物流事業としてもこのような動きに協力していくことが求められる。
 物流効率化への取組みは、従来からも行われてきたか、これまでは、どちらかといえば、企業内での取組みが中心であった。これからは他企業、他業界との連携、さらには社会との調和というより広い視野に立った取組みが必要である。

2 物流効率化の方策
(1) 幹線物流におけるモーダルシフト
 トラックはドア・ツー・ドアの輸送が可能であり、その利便性や機動性から幹線、端末を問わず物流の担い手として急速に成長し、今や国内貨物輸送量の半分以上のシェアを占めるにいたっている。しかしながら物流をめぐる制約要因が深刻化する中で、物流の効率化を図っていくためには、幹線の部分はトラックからより効率のよい鉄道や海運を使っていくことが望ましく、これをモーダルシフトと呼んでいる。
 モーダルシフトを推進していくためには、まず、モーダルシフトの実現に向けた物流事業者の努力が大切であるか、同時に荷主である産業界の協力も不可欠である。
 また、運輸省としても鉄道貨物輸送力増強への助成、ユニットロードターミナル等の港湾整備、ピギーバック用車両に対する税制上の優遇措置等を通じて、これらの努力を支援していくこととしている。
 なお、モーダルシフトとは別であるがトラック輸送自体の効率化を図っていくことも大切であり、このような見地から、運輸省において車両総重量等車両諸元に関する制限の緩和について関係省庁との意見調整を進めている。
(2) 都市内物流における積合せ輸送
都市内物流の分野はトラック輸送に頼らざるをえないだけに、制約要因の厳しい中で、多品種、小ロット化、高頻度輸送等の要請に対応していくためには、都市内のトラック輸送を自家用トラックからより輸送効率の高い営業用トラックへできる限り切り換えていくとともに、営業用トラックについてもできる限り複数荷主の貨物の積合せを進めることにより積載効率を一層高めていくことが大切である。このため物流事業者が荷主である産業界の協力を得つつ、営業用トラック利用の呼びかけ、トラックの共同利用等を進めていく必要がある。
 運輸省においてもトラックの共同利用の拠点となる配送センターの整備について支援していくこととしている。
(3) 荷役作業効率化及び情報システム化
 物流の効率化等を図るためには倉庫、トラックターミナル、配送センター等の物流拠点における保管や荷役作業の効率化が重要である。このため、プッシュプルフォークリフト(*1)等の省力化荷役機器やスライド・バン・ボディ(*2)等の省力型車両、立体自動倉庫等の無人化システムの導入が進められている。
 また、物流の効率化を図るためには情報システム化を進めることも重要である。このためトラック輸送においては、帰り荷斡旋等を行うシステムKITの導入が進められている。
 倉庫においても、在庫管理の情報システム化が進められているほか、内航においても荷主への小口貨物輸送に関する効果的な情報提供を目的とした内航雑貨情報システムの開発が進められている。
 運輸省としては、荷役作業の省力化を支援するとともに、関係団体と協力して情報システム化の推進を図ることとしている。

(*1)プッシュプルフォークリフト・・・一般のパレットに比べ軽くて薄いシートパレットを使用した貨物の荷役専用のフォークリフト。
(*2)スライド・バン・ボディ・・・エンジンの動力を活用して、鉄道貨車に横付けしたトラックからコンテナを直接鉄道貨車に横滑りさせて荷役する機能を有するトラック。

(4) 日本物流団体連合会の設立
 物流業をとりまく環境の変化の中で物流が国民生活や産業活動の基盤としての役割を十全に果たしていくためには、物流業界における各部門の連絡を図り、物流に関する内外の諸問題について物流業界の意見をとりまとめ、その実現に努力し、あわせて経済界をはじめとする関係者の理解と協力を求めていくことが必要である。
 このため、主要物流企業及び物流団体を広汎に網羅する社団法人日本物流団体連合会(「物流連」)が平成3年9月に設立されたところであり、今後の活躍が期待される。



平成3年度

目次