平成3年度 運輸白書

第4章 貨物流通の円滑化
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第2節 貨物運送取扱事業の展開 |
1 貨物運送取扱事業法の施行
2 貨物運送取扱事業の展開
3 国際複合一貫輸送
- 1 貨物運送取扱事業法の施行
- (1) 貨物運送取扱事業は、自らは鉄道、船舶、航空機等の運送手段を保有せず他の者の行う運送を利用し、又は他の者に運送を取り次ぐことにより、多様な利用者ニーズに対応したサービスを提供する事業である。
近年、物流に対する荷主のニーズが高度化、多様化する一方、実運送も大型化、高度化、専用化、ユニットロードシステム化が進むなど変化しているので、貨物運送取扱事業も単に実運送を補完するばかりでなく、荷主と実運送事業者との間のコーディネーターとして積極的な役割を果たすことが期待されている。
このような変化に対応して、鉄道、航空等各輸送機関ごとに実運送を補完する事業として位置づけられていた貨物運送取扱事業を見直して、各運送機関にまたがり、独立した機能を果たす事業として位置づけるとともに、あわせて事業規制の簡素・合理化を行うことにより事業の活性化を図ることを目的として、2年12月1日貨物運送取扱事業法が施行された。
(2) 貨物運送取扱事業法施行前に通運事業法等に基づき免許、許可等を取得している事業者は、本法のもとで許可又は登録を受けたものとみなされることになっている。また、本法施行前に事業規制のなかった外航海運の利用運送事業や国際宅配便事業については本法施行後6ケ月間(3年5月末まで)に手続を行うこととされている。この結果、本法が施行されてからほぼ1年にあたる3年10月の時点で、法施行後新規に参入した事業者を含め、第一種利用運送事業は41,700、第二種利用運送事業は686、運送取次事業は40,395となっている。
また、運賃・料金の面でも、例えば、国際宅配便において日本からの商品サンプル等について特別の運賃設定が行われるなど利用者のニーズに合った多様な運賃設定が行われるようになっており、貨物運送取扱事業法は順調に定着してきている。
- 2 貨物運送取扱業の展開
- (1) 鉄道利用運送事業
- 鉄道利用運送事業は、荷主と鉄道事業者の間にたって鉄道コンテナの手配、トラックによる貨物の集荷、配送等を行い、総合的なコーディネーターとして鉄道を利用するドア・ツー・ドアの輸送サービスを提供する事業である。
鉄道利用運送事業は、鉄道貨物運送の発展とともに発展してきた長い歴史を持っているが, 昭和45年度の年間2億4,400万トンをピークとして、62年度には年間7,500万トンまで取扱貨物量が減少した。しかし、63年度には、7,900万トン、平成元年度には8,200万トンとここのところ回復基調にある。
近年、鉄道利用運送事業においても労働力不足や作業員の高齢化等の問題が深刻化してきており、機械荷役等による省力化を進めることが重要な課題となっている。
このため、運輸省では、パレットデポの整備やプッシュプルフォークリフトの導入を促進するとともに、広く物流業界及び鉄道利用運送業界に対し一貫パレチゼーションの必要性についての周知活動を行うなど一貫パレチゼーションの普及に向けて努力している。
- (2) 利用航空運送事業
- 鉄道利用運送事業が鉄道を利用した一貫輸送を行うのに対し、利用航空運送事業は、航空を利用した一貫輸送を行う事業である。その取扱貨物量の航空貨物全体に占める割合は国内で約80%、国際で約90%に達するなど航空貨物輸送において重要な役割を果たしている。今後、豊かな国民生活の定着や産業構造の高度化に伴い、一層の量的拡大と質的高度化が求められていくものと考えられるが、その大宗を担う利用航空運送業においては、これに対応して、航空と鉄道輸送を結びつけたエア・アンド・レール輸送や小口貨物をドア・ツー・ドアで輸送する航空宅配便等の新たなサービスの提供に取り組んでいる。
また、国際航空貨物輸送においても、迅速な航空輸送と運賃の低廉な海上輸送を組み合わせたシー・アンド・エア輸送や、国際宅配便を利用して国内で輸入品を購入できる国際産直システム等の多様なサービスが出現しつつある。
航空貨物輸送は今後とも物流システムの中で重要な役割を担いながら拡大していくものと考えられることから、利用航空運送事業においても、これに対応した事業展開を図っていくためには、利用航空運送事業に関する内外の諸問題について意見をとりまとめ、その実現に努力し、あわせて経済界をはじめとする関係者の理解と協力を求めていくことが必要である。このため、国内、国際の利用航空企業を広範に網羅する社団法人航空貨物運送協会が3年6月に設立されたところであり、今後の活躍が期待される。
- 3 国際複合一貫輸送
- 近年、国際物流の分野においては、船舶、鉄道、航空機、トラックといった複数の輸送機関にまたがるサービスを単独の運送事業者が一貫してき引き受ける国際複合一貫輸送が発展している。
国際複合一貫輸送の担い手としては、船社、航空会社のように運送手段を保有するいわゆる実運送事業のほか、運送手段を保有せず利用運送の立場に立つフレイト・フォワーダーがある。フレイト・フォワーダーの国際複合一貫輸送は、多様なルートの設定が可能等の利点があるためその輸送量は増加傾向にある。さらに、最近の我が国企業の海外直接投資の推進に対応し, フレイト・フォワーダーの海外拠点作りも積極的に進められており、輸送ルートの多様化とサービスの向上に寄与している。
国際複合一貫輸送の輸送ルートとしては、シベリア鉄道経由欧州・中近東向け一貫輸送(シベリア・ランドブリッジ)、海上運送と航空運送を組み合わせた一貫輸送(シー・アンド・エア)、米国、欧州、韓国、中国等の内陸までの一貫輸送等がある。
運輸省としては、標準運送約款の策定、資格認定制度の導入、情報システム化の促進等を通じて国際複合一貫輸送の基盤整備に取り組んでいる。

平成3年度

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