平成3年度 運輸白書

第5章 国民のニーズに応える鉄道輸送の展開

第2節 鉄道輸送サービスの充実

 鉄道は、大量性、定時性及び安全性に優れた公共輸送機関であるが、近年の国民の生活水準の向上等に伴い、鉄道輸送に対しても快適性や利便性が求められており、より質の高いサービスの提供を図る必要がある。

    1 利便性、快適さの向上
    2 新たなニーズに対応したサービスの充実


1 利便性、快適さの向上
(1) 車両冷房化の進捗状況
 車両冷房化については、車両の新製及び改造により逐次改善を進めてきた結果、3年夏には東京・大阪地区の旅客会社(JR)の冷房化率が98.3%、大手民鉄15社合計の冷房化率が96.9%となるなど、年々着実に向上している。従来、トンネルの狭さが冷房化の障害とされてきた一部地下鉄路線についても、薄型冷房機器の技術革新により、今後、積極的な車両冷房化が計画されているところである。
(2) 駅施設の改善
 駅施設の改善については、通路・階段の拡幅、ホームの拡幅等により、旅客の移動を円滑化することにより、混雑の緩和、危険の防止、通勤時間の短縮が図られている。
 また、交通弱者の移動の利便性を確保する観点から、運輸省では、身体障害者のための施設・設備が整備されるよう指導しており、各鉄道事業者においても、計画的に、エレベーター、エスカレーター、車椅子通路、誘導ブロック、身障者用トイレ等の整備が進められている。
 特にエスカレーターについては、3年6月に運輸省において「鉄道駅におけるエスカレーターの整備指針」を策定し、利用者の多い駅から順次整備していくこととしている。
(3) 相互乗り入れ
 都市においては、鉄道ネットワ一クが形成されていることから、乗り換え不便を解消することが利便性の向上に欠かせなくなっており、鉄道の相互乗り入れや乗り換え駅の施設の改善を進めることがますます重要になってきている。
 このうち、都市鉄道の相互乗り入れについてみると、北総開発鉄道の京成高砂・新鎌ヶ谷間開業により、北総、京成、都営、京浜の4線相互直通運転が開始され、都心へ乗り入れるなど、順次拡大されてきており、3年8月現在、46区間816.6kmにおいて行われている。

2 新たなニーズに対応したサービスの充実
(1) 車両・列車の多様化
 国民の所得水準の向上等に伴う価値観の多様化に対応し、スペーシア、あさぎり、北斗星、スーパービュ一踊り子号のように旅自体あるいは沿線の景観を楽しめるよう配慮したり、個室やサロン室を設けるなど車内居住性の向上を図った新型車両の導入、女性専用車両を連結した寝台特急列車の運行、お座敷列車等種々の企画列車の運行等が進められている〔2−5−4図〕
(2) 深夜輸送サービスの改善
 近年需要が増大しつつある大都市における深夜輸送サービスについては、深夜時間帯における運行本数の増大や終電時刻の延長により対応してきたところであるが、今後、さらに深夜時間帯における電車の接続を考慮した終電時刻の延長等が計画されているところである。
(3) 運賃・料金の多様化
 運賃・料金については、利用者ニーズの多様化に対応して、周遊券、Qきっぷ、フルムーンパス等の豊富な企画商品が設定されている。



平成3年度

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