平成3年度 運輸白書

第6章 自動車交通の発展と公共輸送サービスの充実
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第6章 自動車交通の発展と公共輸送サービスの充実 |
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第1節 道路交通混雑問題への対応 |
1 自動車交通の現状と課題
2 道路交通混雑の緩和をめざして
- 1 自動車交通の現状と課題
- (1) 成熟段階に入ったモータリゼーション
- 我が国の自動車保有台数は、平成3年3月末で6,050万台であり、依然として着実に増加している〔2−6−1図〕。これは国民2.0人に1台、世帯当たり1.4台の割合であり、モータリゼーションが成熟段階に入ったと言える。
- (2) 深刻化する道路交通混雑
- 自動車保有台数の伸びに対応して道路インフラの整備も進められているが、道路交通混雑は依然緩和されておらず、自動車交通量が道路の適正な容量を超えている区間の延長が引き続き増大している〔2−6−2表〕。
特に、大都市圏においては、マイカー等の増加が道路交通混雑を招き、道路交通機能の低下が深刻な状態に立ちいたっている〔2−6−3図〕。こうした走行環境の悪化により、バス等の公共輸送機関は定時走行を行うことが極めて困難となってきていること等から信頼性を大きく損ない、利用者のニーズに十分応じられない状況となっている。
- 2 道路交通混雑の緩和をめざして
- (1) 公共輸送機関の利用の促進
- 道路整備推進の努力にもかかわらず、道路交通需要はそれを上回る速度で増加してきており、需給バランスの不整合が道路交通混雑の激化等を生み出す結果となっている。
大都市における道路交通混雑の深刻化に対しては、昭和63年7月の政府の交通対策本部決定「大都市における道路交通円滑化対策について」に従って、関係省庁が一体となって施策を推進する必要がある。運輸省としては、鉄道、バス等公共輸送機関の整備、サービスの向上を図るとともに、物流施設の整備、共同輸送の促進等貨物流通の合理化を進め、大都市における道路交通の円滑化を図ることとしている。
特に、過密化する道路交通において、バス等の公共輸送機関の利用を促進することは、道路空間の有効利用、道路交通の円滑化に資するものであることから、マイカーからの誘導を図るため、バス等の公共輸送機関を利用者のニーズにより適合するものとするとともに、バス優先・専用レーンの設置、違法駐車の排除等を都道府県公安委員会等に働きかけるなどバス等の走行環境の改善を進めるほか、関係行政機関との連携により、鉄道駅前広場へのバス等の乗入れ場所の整備等公共輸送機関の結節点であるターミナル施設の整備等を推進することが必要である。
- (2) 公共輸送機関とマイカーとの調和
- 限られた道路交通容量の下では、増加するマイカーとバス等の公共輸送機関との調和をいかに確保するかが問題となる。近年、都市周辺部の鉄道駅又はバス停に駐車場を設置し、そこから都心までの間を公共輸送機関を利用することにより公共輸送機関の利用促進と都心部のマイカーの削減を狙ったパーク・アンド・ライドシステムの導入事例や、朝のラッシュ時間帯に道路交通混雑の激しい鉄道駅の周辺道路においてバス・タクシー以外の自動車の走行を規制している事例も出現している〔2−6−4表〕が、今後とも、公共輸送機関とマイカーとの調和をめざし、地域の実情に応じた具体的施策の導入促進を図る必要がある。

平成3年度

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