平成4年度 運輸白書

第4章 運輸サービスの高度化・多様化を目指して
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第3節 高齢者・障害者等の対策への取組み |
1 高齢者・障害者等の対策の必要性
2 高齢者・障害者等の対策の推進
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1 高齢者・障害者等の対策の必要性
- 人間が社会生活を送っていくうえで、仕事、買物、旅行等さまざまな場面において、移動という行為が果たす役割は重要であり、公共輸送機関の整備を進めていくに際しては、健常者のみならず、その利用において制約の多い高齢者・障害者等を視点に入れていかなければならない。
一方、我が国は高齢化社会を迎えつつあり、2007年には5人に1人、2018年には4人に1人が65歳以上の高齢者になると見込まれているほか、身体障害者も年々増加している。また、高齢者や身体障害者の就労意欲や余暇・社会活動への参加意欲は強い〔1−4−8図〕。このため、高齢者・障害者等の対策の必要性がこれまで以上に高まっているといえ、これからの交通機関の整備にあたっては、高齢者・障害者等の視点に立って、だれもが利用しやすいようなものにしていくことが求められている。
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2 高齢者・障害者等の対策の推進
- (1) 高齢者・障害者等のための施設整備等
- 高齢者・障害者等が交通機関を利用するに際して、ターミナル内での移動や車両の乗降等が大きな問題となる。
このため、ターミナルについては、エスカレーター、エレベーター、スロープ、幅広の改札口等の整備を進め、移動を容易にするように努めている。また、点字テープ付券売機、車椅子でも利用できる券売機、身体障害者用トイレ等を設置し、利便性を向上させるとともに、誘導・警告ブロック、転落防止棚等を設置し、安全性の向上を図っている〔1−4−9表〕。
一方、車両については、バスの低床・広ドア化、リフト付バスやタクシーの導入、車両内の車椅子用スペースの設定等を進めている〔1−4−10図〕。
これらは、平成3年6月の「鉄道駅におけるエスカレーターの整備指針」をはじめとする各種のガイドライン等に沿って進められているが、技術開発の進展等を踏まえ、新たに交通ターミナル全般にわたっての高齢者・障害者等のための施設整備に向けたガイドラインの整備を行うこととしている。
また、3年12月からは、鉄道、バス、タクシー、航空等において、精神薄弱者に対し身体障害者と同様の運賃割引制度を導入している。
- (2) 高齢者・障害者等の対策の新たな展開
- 我が国経済社会の国際化に伴い、高齢者や身体障害者のための対策に加えて、外国語による表示を行うなど外国人にも配慮した交通施設づくりを進めていく必要性が高まっている。また、最近では、高齢者や身体障害者の旅行へのニーズが高まっていること等に対応して、シルバー割引等高齢者向けの旅行企画商品や車椅子でも行ける海外や国内への団体旅行パックが導入されたり、身体障害者向けの旅行ガイドブックが作成されたりするなど新しい動きが出てきている。
なお、今後の高齢者・障害者等の対策においては、高齢者・障害者等の視点に立って、出発地から目的地にいたる移動ニーズを満足させることができるような連続性のある交通体系の構築をめざして、事業者の理解と協力を得つつ、高齢者・障害者等のための施設整備を進めるとともに、わかりやすい案内表示によるより良い情報提供を行うなど、ハード・ソフト両面からの総合的な対策が必要である。また、高齢者・障害者等が安心して交通機関を利用することができるよう周囲の利用者が進んで手助けをするという社会全体の環境づくりも重要である。

平成4年度

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