平成4年度 運輸白書

第2章 国際化の進展と運輸
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第2章 国際化の進展と運輸 |
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第1節 国際問題への取組み |
- 旧ソ連・東欧諸国における共産主義体制の崩壊に伴い、東西冷戦構造が終焉するとともに、これら諸国における計画経済から市場経済への円滑な移行が喫緊の課題となっているが、その道程は厳しい状況にある。また、多国間の公正かつ自由な貿易体制の強化を目指して、GATTにおいては、サービス分野をも取り込んだウルグアイラウンド交渉が大詰めを迎えている。他方、EC域内市場統合、北米自由貿易協定交渉等、地域経済統合の動きが進展している。運輸の面でもこのような国際政治・経済の枠組みの変動に適切に対処していく必要がある。
また、複雑化した国際社会が直面する諸問題の解決のため、国際社会の中でますます地位を高めている我が国に対しては、技術協力・財政的援助・人的貢献の分野でのより一層の積極的な対応が求められている。
これに対応し運輸省では、平成3年に設置された運輸審議官を中心に対外政策推進体制を強化し、積極的な国際運輸政策を展開している。
1 国際輸送の変化への対応
2 国際社会と調和した運輸行政の展開
- 1 国際輸送の変化への対応
- (国際交通網の充実)
産業、国民生活両面にわたる本格的な国際化時代を迎えて、我が国を中心とした国際的な人と物の流れがかつてないほど活発化しており、このため、国際交通網の一層の整備、充実が重要課題となっている。
航空については、関係二国間の航空協定に基づいて国際定期航空運送事業が運営されており、我が国としては、航空交渉に際し、機会均等という航空協定の基本的原則に従って輸送力を確保し、国際的な人的交流及び物的流通の促進を図ることを航空交渉の基本的目標としている。3年9月から 4年8月までに25か国との間で30回の協議が行われ、これらの協議において我が国航空企業による国際線の複数社体制の推進、新規乗り入れ地点の追加、地方空港への国際路線開設、増便取り決め等、利用者利便の向上に向けて航空交渉が推進された。特に、4年から、我が国への乗り入れを希望している国々と関西国際空港への乗り入れを前提とした新規の二国間航空協定締結のための航空交渉を推進しているところである。
また、海運については、我が国は「海運自由の原則」を政策の基本として、OECD、GATT、UNCTAD等の国際機関における活動に参加するとともに、米国、EC等と海運政策の調整及び意見交換を行ってきている。また、中国、韓国等の近隣諸国との間では二国間協議により、定期航路の新設や、邦船社の自由な活動の確保に努めている。
(重要海峡等における円滑かつ安全な航行の確保のための国際協調)
マラッカ・シンガポール海峡等においては、海難事故防止及び海洋環境保護に対する沿岸国の意識が高まってきている。これらの問題に対処するためには、関係諸国や国際機関の協調が不可欠であり、我が国としてもより一層積極的に取り組んでいく必要がある。
(核物質輸送に係る安全の確保)
原子力開発利用の進展に伴い、使用済み核燃料を始めとする放射性物質の国際輸送の機会が増大しており、核物質の盗取や事故による災害等を防止するための適切な防護対策等を講じていくことが重要となっている。特に、欧州から日本へのプルトニウムの海上輸送については、海上保安庁において護衛巡視船の派遣、輸送船への武装海上保安官の乗船等の措置を講じ、万全の体制で護衛を実施することとしている。
2 国際社会と調和した運輸行政の展開
- (運輸ハイレベル協議)
運輸省では、主要国運輸当局首脳と密接な意思疎通を図ることにより、運輸行政を円滑に推進するため、運輸審議官と諸外国の次官クラスとの間で、運輸ハイレベル協議を実施している。
4年4月には、EC委員会第7総局長を迎え、EC共通政策、海運、航空分野を中心に協議が行われたところである。
(日米構造問題協議フォローアップ会合)
日米構造問題協議(SII)については、2年6月にまとめられた最終報告で空港、港湾等の輸入インフラの整備等が盛り込まれていた。その後、SIIフォローアップ会合が行われ、3年5月、第1回年次報告がまとめられた。さらに4年1月のブッシュ大統領訪日時に作成された行動計画にSIIの再活性化が盛り込まれたのを受け、同会合は4年2月より再開され、4年7月、独禁法適用除外制度の具体的見直し、政府調達の一層の開放、輸入手続きの迅速化等を含む日米双方の新たなコミットメントが盛り込まれた第2回年次報告がまとめられた。運輸省としても、同報告に沿った施策を着実に推進していくこととしている。
(大型公共事業への外国企業の参入)
大型公共事業への外国企業の参入に関しては、3年7月の閣議了解に基づき、大型公共事業への参入機会等に関する我が国政府の追加的措置(以下「MPA」という。)を着実に実施してきているところである。そのレビューのため、4年8月以降、日米政府間でMPAの実施状況、将来プロジェクトの状況、MPA手続きに関する事項等に関する協議が行われている。
(ガットウルグアイラウンド)
昭和61年から開始されたガットウルグアイラウンドにおいては、農業等の14項目に加え、新たに運輸、金融、建設、電気通信等のサービス貿易が取り上げられ、その自由化を促進するための協定の策定作業が進められており、運輸省では航空、海運等の分野を中心に積極的に対応してきている。同交渉は大詰めの段階を迎え、平成3年12月にダンケル・ガット事務局長より各国に提示されたウルグアイラウンド最終合意案をもとに個別の自由化交渉が行われている。
(自動車基準・認証制度の国際化)
我が国は、自動車基準・認証について、従来より諸外国の意見等を踏まえ必要な措置を講じてきている。4年1月のブッシュ大統領訪日の際、米国より要望のあった自動車の基準・認証に係る14項目については、市場開放問題苦情処理推進本部(OTO)の手続きの下で、我が国の政府認証制度を前提として、解決又は解決への方向付けがなされ、日米グローバル.パートナーシップ行動計画としてとりまとめられている。
今後とも、欧米の政府機関及び業界との意思疎通を図るとともに、国連欧州経済委員会自動車安全公害専門家会議に積極的に参画し、基準の一層の国際化を図っていくこととしている。
(造船助成の削減問題)
元年、米国造船工業会による通商法第301条に基づく提訴を契機として、現在、OECD造船部会において、政府助成削減に関し、従来の紳士協定に替わる条約を策定する方向で協議が行われれている。我が国は、世界最大の造船国として、当該条約が公正な競争条件を確立し、造船業の健全な発展に資するとの観点から、適正な条約の成立を目指し、努力しているところである。

平成4年度

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