本格的な国際時代の到来に伴い、国際航空については、その需要が増大しており、また、世界的な航空に関する規制緩和の潮流の中で、国際航空市場における航空企業間の競争は一層激化していくことが予想される。このため、これらの変化に的確に対応して、その発展を期すことが重要な課題となっている。このような国際航空をとりまく環境の変化、また、これに伴う国際航空への要請の変化に対応するため、3年6月、運輸政策審議会答申「今後の国際航空政策のあり方について」において21世紀を展望した90年代の国際航空政策の基本的な方向が示されたところであり、運輸省としてはこの答申を踏まえ、前述の新国際航空運賃政策のほか、下記の政策を推進しているところである。
- (1) 国際航空ネットワークの充実
- (我が国利用者の多様なニーズに対応した旅行パターンの実現)
- (ア) 国際航空ネットワークの形成の方向
- 我が国発着の旅客需要に対しては、近年の旺盛な日本人観光客を対象とした乗入れ希望国が多数に上っており、我が国に対し航空協定の締結を申し入れている国は44か国に達している。こうした外国企業の多くは、日本人客の発生地が東京・大阪等大都市圏中心となっていることから、大都市圏への乗入れを希望している。
一方、発着枠の制約のない地方空港については、需要に応じて国際路線の開設が行われてきているが、必ずしも十分でない実情にある。このような状況の下においては、大都市の空港については、発着枠の制約が中長期的には顕在化してくるものと考えられることから、こうした国際航空の需要構造を前提にすると、大都市空港のように空港制約が存在する場合における路線形成と企業の新規参入については、発着枠の有効な利用の観点から優先順位を検討していくことが必要であり、一方、空港制約のない空港における路線形成と企業の参入については、相手国との実行上の権益均衡の考え方に必ずしもとらわれず、外国企業のみであっても定期便開設を認めるべきものと考えられる。
- (イ) 効率的な直行ルートと回遊ルートの形成によるネットワークの形成
- ビジネス旅客及び近距離の観光旅客に多い直行型の旅行パターンに対応した直行路線の充実を図るとともに、中・長距離の日本人旅客に多い回遊型の旅行パターンに対応した回遊型ネットワークの形成と利用者ニーズに対応した国際航空ネットワークの充実を図ることが必要である。
これらの考え方に基づき、航空交渉等を通じ、国際航空ネットワークの拡充を実施することとしており、平成4年においては、大阪−ケアンズ−シドニー線(日本航空)(3月)、名古屋−ロンドン(英国航空)(4月)等10月現在までで合計17の新規路線を開設している。
- (2) 我が国航空企業の供給力の充実と効率化の推進
- (国際旅客の増加、競争環境の激化に対応した供給力、コスト競争力の確保)
- (ア) 供給力の充実
- 我が国発着の国際航空旅客需要は、今後とも堅調な伸びが見込まれるが、近い将来、大都市における空港制約が緩和された場合には、飛躍的な供給力の増加が求められるものと考えられる。しかしながら、我が国航空企業においては、今後、大量に操縦者の定年退職者が発生することが見込まれることから、乗員の供給力の増加を図るため、各企業における自社養成を積極的に進めるとともに、長距離路線における乗員編成基準の見直しや操縦士の60歳制限年齢の延長等を検討していくこととしており、また、必要に応じて、外国人乗員の導入を図ることとしている。さらに、多角的に供給力を確保するため、外国航空企業に運航を委託して事業を遂行する方式の導入を認めたところであり、日本航空が3年5月から千歳−アンカレッジ−ニューヨーク線、4年4月から東京−シドニー線等の路線において運航委託を実施している。
- (イ) 効率化の推進
- 我が国航空企業による生産体制の効率化を一層推進するためには、ウェットリース、コードシェアリング、ゲートウェイにおける機材変更等の方策の活用を図ることが必要であり、また、チャーター輸送、国内航空貨物輸送、コミューター輸送等の特定の航空市場の需要に対応した分社化等の推進を図る必要がある。ウェットリースについては、3年2月から福岡−ホノルル線、千歳−ホノルル線においてジャパン・エア・チャーターから日本航空へのウェットリースが実施されている。また、チャーター輸送については、国際チャーター専門会社であるワールド・エアー・ネットワークが3年3月から大分−シンガポール間等を、また、ジャパン・エア・チャーターが3年7月から福岡−ホノルル間等の運航を行っている。
- (3) 近距離国際航空施策
- (「地方発直行型の手軽な旅行」の実現)
- (ア) 地方空港の国際化
- 最近の国際航空旅客需要をみると、特に近距離国際航空の分野では我が国の地方都市から目的地へ直行するパターンが好まれることもあり、地方空港の国際化が重要な課題となっている。4年度においては、新たに大分、高松、那覇の各空港にソウル線(4月)、広島空港に香港線(7月)を開設するなど、地方空港発着の直行路線の開設を推進している。また、5年4月には、CIQ等の体制を整備した上で、富山空港にソウル線の開設を予定している。
- (イ) 国際チャーターの拡大
- 地方空港の国際化のためには、国際定期路線の開設のほか、チャーター便の活用により地方における旅行需要の開拓をしていく必要がある。現在、我が国の国際チャーター便の利用状況は全体の輸送量の1%程度と低い水準にとどまっていることから、チャーター運賃に関する規制の弾力化、「フライ・アンド・クルーズ」等の多彩なパック旅行に対応した片道のみの包括旅行チャーターの実施等の施策を講じるほか、2年度に設立された我が国の国際チャーター専門会社を活用することにより、地方におけるチャーター需要を開拓していくことが重要である。
このような観点から、国際チャーター専門会社であるワールド・エアー・ネットワークが3年3月から大分−シンガポール間等の運航を開始して以来、4年8月までに合計288便(片道ベース)のチャーター便を運航し、旅客数が約5万6,000人(片道ベース)に達した。また、ジャパン・エア・チャーターが、3年7月から福岡−ホノルル間等の運航を開始して以来、4年8月までに合計275便(片道ベース)のチャーター便を運航し、旅客数が約6万4,000人(片道ベース)に達した。
- (4) 利用者利便の向上
- (質の高い航空サービスの追及)
高度化する利用者ニーズに応え、「快適」な旅行を提供するためにも、機内サービス、空港サービスについて、その一層の向上を図るなど、航空企業において細心の配慮に努めていくことが必要である。
また、国際航空における事故の際の旅客への賠償額の水準は、質の高い航空サービスの観点からも重要な要素であるが、運送約款における責任限度額は実際に支払われる賠償額と比較した場合必ずしも十分なものということはできないことから、世界的な動向を勘案しながら、その見直しについての検討を行うことが必要である。
4 民間航空再開40周年を記念して「空の日」、「空の旬間」の事業を展開〔2−9−12図〕
- 平成4年は、昭和27年の民間航空再開から40周年に当たることから、「空の日」(9月20日)・「空の旬間」(9月20日〜30日)を中心に、民間航空再開40周年記念事業が行われた。本事業は、これまでの航空の発展に貢献された方々に感謝するとともに、今後の一層の安全と成長を祈念し、国民の航空に対する理解を得ることを目的として行われたものである。
「もっと感動、空はフロンティア」をキャッチフレーズに、記念式典の航空国際フェスタ '92、記念論文の募集、空の日芸術賞による若手芸術家の海外研修派遣のほか、全国各地の空港などで一日空港長、施設見学、体験搭乗、絵画展等、多彩な催しが開催された。