平成5年度 運輸白書

第1章 平成4年度の運輸の概況と最近の動向

第1章 平成4年度の運輸の概況と最近の動向

第1節 一般経済の動向と運輸活動

    1 旅客輸送の動向
    2 貨物輸送の動向
    3 輸送指数の動向
    4 最近の輸送動向(5年4月〜7月の実績)
    5 円高が運輸作業に与える影響


1 旅客輸送の動向
(1) 国内輸送
(ア) 概況
 (景気後退により低調となった国内旅客輸送)
 平成4年度は、実質経済成長率はGDP(国内総生産)でみて、0.5%(3年度は3.3%)となり、旅客輸送の動向に影響が大きいとされる実質民間最終消費支出は1.0%増(3年度は2.6%増)と低い伸びとなった。家計消費をみると交通費(公共輸送機関関係)は1.8%増(3年度は2.2%増)と伸び率が低下したが、自動車等関係費(自家用車関係)は、6.0%増(3年度は5.8%増)であった〔2−1−1図〕
 このように諸指標が景気後退を示し、消費活動が低迷する中で、4年度の国内旅客輸送量は、営業用輸送機関を中心に低調な動きとなり、総輸送人員が818億人、対前年度比(以下同じ。)1.8%増、総輸送人キロが1兆3,533億人キロ、1.7%増となった〔2−1−2表〕
 (営業用輸送機関の分担率が縮小)
 4年度は、前年度に比べ各営業用輸送機関のシェアが縮小或いは、横這いで推移し、自家用乗用車等が拡大した〔2−1−3図〕
(イ) 輸送機関別の輸送動向
 (鉄道は低調に推移)
 JR(旅客会社)は、輸送人員1.6%増、輸送人キロ1.0%増(3年度はそれぞれ3.8%増、3.9%増)と低調であった。このうち、定期旅客は、輸送人員が1.7%増、輸送人キロが3.3%増となった。新幹線や首都圏の通勤列車の増強などを背景に長距離通勤化傾向が続き、平均輸送距離は1.5%長くなった。また、定期外旅客は、4年7月に開業した山形新幹線「つばさ」や輸送力を増強した成田エクスプレスによる輸送量の増加はあったが、景気後退の影響は否めず、輸送人員が1.4%増(3年度は4.3%増)、輸送人キロが0.5%減(3年度は3.3%増)で平均輸送距離は1.9%短くなった〔2−1−4図〕
 民鉄(JR(旅客会社)を除く。)は、定期旅客、定期外旅客とも低調で、全体では輸送人員0.1%減、輸送人キロ0.3%減となった。業態別でみると、大手民鉄(15社)は、輸送人員が0.6%減、輸送人キロが0.5%減となり、地下鉄は、輸送人員が0.4%増、輸送人キロが0.1%増と低調であったが、地方中小民鉄は、輸送人員が1.7%増、輸送人キロが1.4%増と堅調に推移した。
 (自動車輸送は営業用は低調、自家用は堅調)
 自動車のうち営業用自動車(バス、ハイヤー・タクシー)は、輸送人員2.8%減、輸送人キロ0.3%増と低調であった。また、自家用自動車は、バスが振るわなかったものの、全体では、輸送人員3.3%増、輸送人キロ2.4%増と堅調な動きであった。
 (伸び悩むバス輸送)
 営業用バスは、輸送人員2.1%減、輸送人キロ0.9%増であった。このうち、3年度には都市部において走行環境改善による増加傾向の兆しがみられた乗合バスは、4年度は他の輸送機関から高速バスへのシフトがみられたものの、景気後退を反映して輸送人員が2.1%減、輸送人キロが0.5%減となった〔2−1−5図〕
 また、貸切バスは、輸送人員が1.5%減、輸送人キロが2.1%増となり、自家用バスは、輸送人員が0.3%増、輸送人キロが7.3%減であった。
 (ハイヤー・タクシーは、景気後退で減少傾向に拍車)
 営業用乗用車(ハイヤー・タクシー)は、景気後退により減少傾向に拍車がかかり輸送人員4.3%減、輸送人キロ2.6%減となった。実働率(実働延日車/実在延日車×100)の低下傾向は労働力の需給緩和で乗務員が増加したことにより下げ止まったが、実車率(実車キロ/走行キロ×100)は景気後退下での旅客需要の減少により下落に転じた〔2−1−6図〕
 (自家用乗用車の増加傾向は続く)
 自家用乗用車は、保有車両数の伸びが小さくなってきているものの、実働率は前年度を上回っており、その利用が増えていることを示している。このような状況の下、輸送人員3.1%増、輸送人キロ2.9%増と他の輸送機関に比べ好調に推移した〔2−1−7図〕
 (幹線輸送が減少となった航空)
 航空は、輸送人員1.5%増(幹線1.8%減、ローカル線3.5%増)輸送人キロ2.4%増(幹線1.3%減、ローカル線5.5%増)であった。新規路線開設等により幹線、ローカル線とも輸送力を増強したが、幹線はビジネス需要を中心に減少に転じ、ローカル線も伸び率が低下したため、座席利用率は前年度の71.1%から66.3%へ4.8ポイント減少した〔2−1−8図〕
 (旅客船は減少幅拡大)
 旅客船(一般旅客定期航路、特定旅客定期航路及び旅客不定期航路の合計)は、国民の余暇活動の受皿の一つとしての旅客船に対するニーズの高まりから航路数を伸ばしてきているものの、輸送量は人員、人キロとも3年度には減少に転じ、4年度は景気後退の影響もあり、輸送人員2.5%減、輸送人キロ1.6%減とさらに減少幅が拡大した。
 また、長距離フェリー(片道の航路距離が300km以上であって陸上のバイパス的な役割を果たすもの)は輸送人員が2.2%減、自動車航送台数が1.2%減と減少に転じた。
(2) 国際輸送
 (海外旅行者数は史上最高、下半期には景気後退の影響)
 平成4年(暦年)における出国日本人数は、10.9%増(3年は3.3%減)の1,179万人となり、初めて1,000万人を超えた2年を79万人上回り、史上最高となった。上半期は、前年の湾岸戦争の影響による落ち込みの反動もあって対前年比(以下同じ。)27.4%増となったが、下半期は、景気後退を反映して9月以降減少が続き、1.4%減となった。
 出国日本人の旅行目的別シェアをみると観光等が全体の83.5%を占め、次いで業務等の12.9%となっている。
 男女別では、男性は5.9%増、女性は18.7%増と女性の伸び率が男性の3倍以上になっており、全出国者に対するシェアは、男性が58.3%、女性が41.7%(3年は、それぞれ61.0%、39.0%)と女性のシェアの拡大傾向が続いている〔2−1−9図〕
 渡航先シェアをみると、アジア州が535万人で全体の45.4%を占め、次いで北アメリカ州33.1%、ヨーロッパ州11.4%の順となったが、オセアニア州(伸び率80.3%)、アフリカ州(伸び率74.3%)の伸びが著しかった〔2−1−10図〕。さらに国別でみると、上位は前年と変わらず、アメリカ合衆国の31.1%を筆頭に韓国11.1%、香港7.9%、台湾6.2%の順となっている。
 (南アメリカからの入国者が減少)
 4年の入国外客数は1.4%増と伸び率が鈍化したが、史上最高であった前年を5万人上回り358万人となった。
 地域別にみると、アジア州が223万人で全体の62.3%を占め、次いで北アメリカ州18.0%、ヨーロッパ州14.9%の順になっており、伸び率では、ここ数年大幅な増加を続けてきた南アメリカ州が32.7%減となった〔2−1−11図〕。国別では、韓国が86万人で前年に引き続き最も多く、次いで台湾72万人、アメリカ合衆国56万人の順になっている。

2 貨物輸送の動向
(1) 国内輸送
(ア) 概況
 (トン、トンキロとも前年度実績を下回った国内貨物輸送)
 平成4年度の我が国経済は、設備投資、個人消費等全般にわたって低調に推移し、実質経済成長率はGDP(国内総生産)でみて、0.5%(3年度は3.3%)となった。平成3年度に鈍化した民間企業設備投資は、4年度には伸び率がマイナスとなり、3年度に大きく落ち込んだ民間住宅投資は、4年度に入って回復の兆しが見られたものの、伸び率は3年度に引続きマイナスとなった。一方、民間最終消費支出も4年度は1.0%増と3年度(2.6%増)の伸び率を下回った〔2−1−12図〕
 このような状況のなかで、4年度の国内貨物輸送量は総輸送トン数で67億2,540万トン、対前年度比(以下同じ。)2.8%減、総輸送トンキロで5,570億7,000万トンキロ、0.5%減とトン、トンキロとも3年度の実績を下回った。
 輸送トン数では、3年度まで前年度実績を上回っていた自動車が2.5%減となったほか、内航海運(5.5%減)、鉄道(3.8%減)、航空(2.2%減)と、全ての機関で3年度実績を下回った。また輸送トンキロでは、営業用自動車(0.3%増)が、僅かに前年度実績を上回ったが、自家用自動車を含む自動車計では0.8%減となった。その他の機関では、鉄道(1.8%減)、航空(1.0%減)内航海運(0.1%減)が、ともに3年度実績を下回った。〔2−1−13表〕
 また、輸送トンキロでみた輸送機関の分担率を見てみると、全体が輸送量を減らした中で輸送距離をのばした内航海運が、0.2ポイントシェアを拡げた〔2−1−14図〕
(イ) 輸送機関別輸送動向
 (景気後退で減少した鉄道貨物輸送)
 鉄道による貨物輸送は、低調な設備投資などの影響で、鉄道の輸送量の大半を占める生産関連貨物、建設関連貨物が伸び悩み、4年度の輸送量はトン数で3.8%減、トンキロで1.8%減と3年度の実績を確保できなかった。このうちJR(貨物会社)のコンテナ貨物は、米が3年の不作で荷動きが大幅に減少したほか、化学工業品、食料工業品等が振るわなかった。車扱貨物は、景気後退により、セメント、石灰石、紙・パルプ等が低迷したが、ピギーバック輸送は好調に推移した。
 このようなことから、JR(貨物会社)の輸送量は3年度に比べ、トン、トンキロとも減少し、トン数で3.1%減、トンキロで1.7%減となった。民鉄による貨物輸送もトン数で5.4%減、トンキロで7.1%減となった〔2−1−15図〕〔2−1−16図〕
 (減少に転じた自動車貨物輸送)
 景気低迷により、伸び率が鈍化してきた自動車による貨物輸送は、4年度には、国内需要の伸びがマイナスに転じたため輸送需要が減少し、トン数で2.5%減、トンキロで0.8%減と、昭和50年度以来はじめて前年度の実績を下回った〔2−1−17図〕
 営業用・自家用別にみると、営業用自動車の輸送量は、宅配貨物が時間指定や保冷輸送等の増加で好調に推移したものの、3年度に比べトン数で2.1%減、トンキロで0.3%増と低調であった。また、建設関連貨物が大きな割合を占める自家用自動車の輸送量も、トン数で2.8%減、トンキロで3.5%減となり、ともに3年度実績を下回った。
 (低調に推移する内航海運貨物)
 内航海運貨物のうち油送船による輸送は、比較的堅調であったが、貨物船による輸送は、設備投資や鉱工業生産が低調に推移したため、生産関連貨物等が減少し、低調であった。このため、トン数では5.5%減と3年度を大きく下回り、各機関のなかで最も大きい減少を示した。しかしながら輸送距離がのびたことによりトンキロは、0.1%減にとどまった。
 内航海運の輸送量は、昭和54年度末の第二次石油ショック以降、産業構造が重厚長大型から軽薄短小型へ移行の動きをみせたのに伴い輸送量も低迷したが、その後61年度以降の景気拡大で、公共事業等の建設工事に伴う建設関連貨物の増加等もあり輸送量が大幅に増加した。しかしながら、平成3年度以降は、景気減速が顕著になり、輸送量の伸びは鈍化し、4年度にはマイナスに転じた〔2−1−18図〕
 (景気後退で低迷する国内航空貨物)
 4年度の国内航空貨物輸送量は、景気後退により、企業貨物が減少したことに加え、生鮮品等の消費関連貨物も伸び悩んだため、トン数で2.2%減、トンキロで1.0%減となり、ともに3年度の実績を下回った〔2−1−19図〕
(2) 国際輸送
(ア) 世界の輸送活動
 (微増となった世界の海上荷動き量)
 OECD諸国の経済が低迷しているなかで、アジア諸国の経済が比較的好調なことなどから、平成4年の世界の海上荷動き量の合計は、トンベースで42億700万トン、対前年比(以下同じ。)2.4%増、トン・マイルベースで18兆2,800億トン・マイル、2.3%増となり、いずれも過去最高となっている。これを品目別の動向でみると、石油はトンベースで3.9%増、鉄鉱石は我が国の粗鋼生産が大幅に減少したことなどから、5.9%減、石炭は電力需要が堅調なことから、0.3%増、また穀物は2.5%増となった。なお、世界の海上荷動き量に占める我が国輸出入貨物の割合はトンベースで18.7%、トン・マイルベースで22.6%となった〔2−1−20表〕
(イ) 我が国の海上貿易量の動向
 (輸出が大幅に増加)
 4年の我が国の海上貿易量(トンベース)は、輸出入合計で、0.5%減(3年は2.5%増)の7億8,549万トンとなり、減少に転じた。
 輸出は、14.5%増で2年連続の増加となった。これを品目別にみると、セメント(54.9%増)が大幅に増加したほか、鉄鋼(5.4%増)、機械類(5.3%増)が増加した。一方、乗用車(2.5%減)、電気製品(0.1%減)は減少した。輸入については、昭和62年以来増加を続けていたが、平成4年には対前年比2.0%減の6億9,988万トンと減少に転じた。輸入を品目別でみると乾貨物では鉄鉱石(10.5%減)、石炭(0.4%減)、木材(2.7%減)、チップ(3.4%減)等が減少した。油類では、前年同様、原油(5.0%増)は増加を続け、重油(13.0%減)は大幅な減少を続けた〔2−1−21表〕
(ウ) 我が国商船隊による海上輸送活動
 (輸出、三国間は増加、輸入は減少)
 4年の我が国商船隊による海上輸送量は、全体で6億4,900万トンで0.7%の微増となった。このうち輸出は、油送船の輸送量が大幅に増加したほか、定期船、不定期船の輸送量も伸びたため、3、969万トン(14.7%増)となった。一方輸入は、油送船の輸送量が増加したものの、定期船、不定期船は減少したため、0.9%減の5億18万トンとなった。また、三国間輸送は定期船、不定期船、油送船の全てで輸送量が伸びており、全体で3.8%増の1億913万トンとなった〔2−1−22表〕
(エ) 国際航空による貨物輸送
 (低迷する国際航空貨物)
 平成4年度の我が国の国際航空貨物輸送量(継越貨物を除く。)は、輸出はトンベースで対前年度比(以下同じ。)7.2%減の48万トン、輸入は、0.2%減の66万トンとなった。
 我が国の航空企業による輸送量(トンベース、継越貨物を含む。)をみると、輸出は3.2%増、輸入は6.6%増となり、積取比率は3年度に比べ、輸出は2.2ポイント増の40.0%、輸入は1.5ポイント増の40.2%となった〔2−1−23表〕

3 輸送指数の動向
 (低い伸びとなった輸送指数)
 4年度の輸送指数(輸送業総合)は、131.4、対前年度比(以下同じ。)0.1%増となった。輸送指数は、実質GNPの着実な成長に従って順調に伸びてきたが、4年度の実質GNP成長率(0.8%)の鈍化に伴い、成長率を下回る伸びとなった〔2−1−24図〕
 また、4年度の自家輸送を含む輸送指数(輸送活動総合)は、140.0で1.2%増と、前年度を僅かに上回った。
 (GNP弾性値の動き)
 4年度の実質GNPの動きと輸送指数の動きを対比した、GNP弾性値(輸送指数の伸び率/実質GNPの伸び率)をみてみると、国内貨物輸送業が1.5から0.3へ、国内旅客輸送業が0.7から-0.5へ減少したため、貨物と旅客を統合した輸送業総合は、1.0を大きく下回った。これは、景気の減速以上に輸送業の経済活動が落ち込んだということを示している。また、自家輸送を含む輸送活動総合のGNP弾性値は1.5であった〔2−1−25表〕


<輸送指数とは>

 輸送指数とは、我が国の国内旅客・貨物輸送活動及び我が国企業による国際輸送活動を総合的にとらえ、指数化したものである。具体的には、各輸送機関別の旅客・貨物輸送量(原則として旅客は人キロ、貨物はトンキロ)を、それぞれの輸送機関の創出した粗付加値額(雇用者所有・営業余剰等)をウエイトとして、基準時加重相対法(ラスパイレス方式)により総合化している。
 従って、人や人キロまたはトンやトンキロを単位とするそれぞれの輸送量に対して、輸送活動を経済的側からとらえた総合的な指数であり、鉱工業生産指数や国民総生産(GNP)等と対比してととらえられることができるものである。
 この指数の系列のうち、輸送業総合は、営業輸送だけからなるもので、輸送活動総合は、自家輸送を含んだすべての輸送からなるものである。


4 最近の輸送動向(5年4月〜7月の実績)
(1) 国内旅客輸送の動向
 (JR(旅客会社)は定期旅客が低調)
 JR(旅客会社)は、6社合計で、5年4月〜7月の輸送人員は、対前年度同期比(以下同じ。)0.9%増と低調な動きとなっている。このうち、定期旅客は0.7%増、定期外旅客は1.3%増となっている。
 (民鉄は定期旅客が減少)
 民鉄は、定期旅客1.3%減、定期外旅客1.1%増で全体では、0.4%減となっている。
 (東京のバス、タクシーともに減少)
 東京のバスは、2.7%減と減少傾向が続いている。また、タクシーは1.5%減となっているものの、6月以降、前年の反動で増加に転じている。
 (航空は幹線が大幅減少)
 航空は、幹線が6.5%減と大幅な減少となっており、ローカル線も1.5%減となっているため、全体では3.6%減となっている〔2−1−26表〕
(2) 国内貨物輸送の動向
 (JR(貨物会社)は依然減少)
 鉄道による貨物輸送量は前年割れを継続しており、車扱は6.0%減、コンテナは4.3%減、鉄道全体で5.4%減となっている。景気減速による貨物量の減少が依然として続いていると考えられる。
 (特別積合せトラックは減少が続く)
 特別積合せトラックは、工業品、農産品等各種品目とも減少傾向となっており、全体で、0.6%減となっている。
 (内航海運は横這い)
 内航海運は、横這いの推移となっている。このうち、貨物船は、セメント、石灰石等が増加していたが、7月に入ってほとんどの品目で大幅な減少となり全体で0.5%減となっている。油送船は、増加傾向が続いていたが、6月以降減少に転じ、0.7%増となっている。
 (航空は増加)
 航空は、景気減速による4年度の貨物量の落ちこみが大きかった反動もあり、全体では1.4%増となっている〔2−1−27表〕
(3) 国際輸送の動向
 (国際航空旅客は低調)
 国際航空旅客は、企業関係の業務用渡航が低調で、海外旅行需要も伸び悩んでいるため、7.3%減となっているが、7月には急激な円高による渡航費の下落等により出国日本人数が11ケ月ぶりに対前年同月比で増加となった。
 (外航海運貨物は増加)
 外航海運貨物は輸出が11.0%増、輸入が2.8%増、三国間が5.4%増となっており、全体で3.8%増となっている。
 (国際航空貨物は輸出、輸入ともに増加)
 国際航空貨物は、輸出、輸入ともに増加し、輸出入計で5.4%増となっている〔2−1−28表〕

5 円高が運輸産業に与える影響
 このところ、円高が急速に進行している。円の対ドルレートは、4年末には、約125円であったが、5年8月には、一時的には100円に近づくまでに至っている。こうした急速な円高の進行は、我が国の経済に様々な影響を及ぼしているが、運輸の分野でも、国際的な事業活動を行っている外航海運業や造船業の事業経営は、これにより大きな影響を受けている。
 外航海運業においては、営業収入に占めるドル建収入の金額が、営業費用中のドル建て費用の金額を上回ることから、円高の進行は大幅な減益要因として作用する。さらに、円高による輸出産業の不振や景気の低迷に伴う海上荷動き量の減少による収益の落ち込みも予想されており、その経営は大変厳しい状況に直面している。このため、外航海運各社においては、一層の経費削減と費用のドル化の一層の促進等により、現在の苦境に対処しようとしている。また、中・長期的には、円建て運賃の拡大を図りたい意向である。
 造船業においては、既輸出船契約の大部分が円建てであるため、円高によって為替差損が生じる可能性は少ないものの、新規受注に関しては円高の進行が国際競争力の急激な低下をもたらし、商談で撤退するケースが目立ってきている。このため、生産システムの合理化、経営資源の有効活用等により価格競争力を強化する一方、創造的な商品開発につながる技術競争力の向上等非価格的競争力の強化を図っていく必要がある。
 なお、国際航空においては、収入面、支出面でのドル建て比率がほぼ均衡しているため、円高の影響はほとんど受けないものと予想される。
 一方、現下の経済情勢を踏まえ、政府においては、5年9月16日、規制緩和、円高差益の還元に加え、国民が直面する厳しい経済情勢等に対し速効的に対応し得る幅広い諸施策から成る緊急経済対策を決定した。
 その中で運輸省における円高差益の還元等の対策については、一般輸入消費財等の円高差益還元の項目の中に海外旅行サービスが盛り込まれた。海外パック旅行については、従来より円高等による仕入れ価格の動向を反映した価格設定がなされているが、今後とも引き続きこうした円高等を反映した価格設定を行うよう要請したところである。
 また、公共料金等の円高差益還元等の項目の中には、円高差益還元策とは別に内需拡大・利用者サービスの拡充等の施策の一環として航空、鉄道、国内旅客船の割引運賃の拡充などについて盛り込まれており、これらについても随時実施が図られることとなった。



平成5年度

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