平成5年度 運輸白書

第1章 平成4年度の運輸の概況と最近の動向
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第2節 施設整備の動向 |
1 公共投資
2 民間設備投資
- 1 公共投資
- (交通関係公共投資は増加)
平成4年度の交通関係公共投資は、〔2−1−29表〕のとおりであり、総額15兆0,774億円、対前年度比(以下同じ。)13.3%増となっている。個別部門についてみると次のとおりである。
(1) 鉄道
鉄道全体では、6,304億円、36.3%増となっている。
4年度の内訳をみると、日本鉄道建設公団(貸付線)は、元年度に着工した北陸新幹線(高崎・軽井沢間)及び3年度に着工した東北新幹線(盛岡・青森間)、北陸新幹線(軽井沢・長野間)及び九州新幹線(八戸・西鹿児島間)の工事が本格化したことにより、152.5%増の1,399億円となった。公営地下鉄は、東京都、名古屋市、大阪市等の工事が進捗したことにより、全体では21.5%増の3,216億円となった。営団地下鉄は、南北線の工事が進捗したことにより、24.7%増の1,365億円となった。公営ニュータウン鉄道は、横浜市3号線の工事が進捗したことにより、30.1%増の324億円となった。
(2) 港湾
港湾全体では、1兆0,953億円、19.1%増となっている。
4年度の内訳をみると、港湾整備事業は、鹿島港、川崎港等16港における外貿コンテナターミナルの整備、青森港、室蘭港等21港における内貿ユニットロードターミナルの整備、横浜港、名古屋港等33港における港湾の再開発、和歌山下津港等3港における沖合人工島の整備、清水港、徳山下松港等37港における公共マリーナの整備等を重点課題として事業を推進した。港湾機能施設整備事業等は、港湾関係起債事業、民活事業の強い整備要請を受け、24.8%増の1,895億円となった。海岸事業は、東京港、新潟港、津田港等295港で海岸保全施設の整備、神戸港、博多港等95港で海岸環境の整備が進められ、3.9%増の737億円となった。
(3) 空港
空港全体では、4,533億円、前年度比97.2%となっている。4年度については、第6次空港整備五箇年計画に従い、3年度に引き続き三大空港プロジェクトを最優先課題として空港整備を推進した。
その内訳をみると、空港整備全体は前年度比89.3%となっているが、その主な要因としては、事業のピークをむかえている東京国際空港の沖合展開の事業費は大きく伸びたものの、3年度に過去最高の事業費が認められた新東京国際空港の事業費が大幅な減となったことが挙げられる。
また、三大空港プロジェクトの進捗に伴う航空交通流の増加に対応するため、航空交通流管理センター等の整備を進めたため、航空保安施設については前年度比22.0%増となっている。
(4) 道路
道路全体では、12兆8,984億円、12.5%増となった。
- 2 民間設備投資
- (1) 民間設備投資の動向
- 4年度の民間設備投資は、大蔵省「法人企業統計年報」によれば、57兆5,414億円で、運輸・通信業をはじめ多くの業種で減少したこと等から、全体では対前年度比(以下同じ。)10.3%減と大幅に減少した。業種別の増加率をみると、製造業は16.0%減、非製造業は7.3%減少となっている。製造業では、石油・石炭製品、食料品が増加したほかは、どの業種も大幅に減少している。一方、非製造業では、建設業、電気業、不動産業等が2桁の大きな伸びを示したものの、運輸・通信業は大幅に減少している。
- (2) 運輸関連民間設備投資の動向
- (4年度の運輸関連民間設備投資実績は引き続き増加)
「運輸関連企業設備投資動向調査」(原則として資本金1億円以上の3,252社調査)によると、4年度の運輸関連民間設備投資の実績額は、工事ベースで総額3兆7,797億円、6.7%増と、3年度に引き続き増加となった〔2−1−30表〕。このうち、「運送業部門」は3.1%増で、港湾運送業、国内旅客船業、バス業、鉄道業等が増加、ハイヤー・タクシー業、鉄道利用運送業、内航海運業等が減少となった。「製造業部門」は2.7%増で、舶用工業、造船業が増加、鉄道車両製造業が減少となった。「その他部門」は30.0%増で、自動車ターミナル業、登録ホテル業等が増加、港湾建設業が減少となった。
(鉄道業、航空関連施設業等が大幅増加)
主な事業ごとにその設備投資動向をみると、鉄道業は、用地が減少になったものの、構築物を中心に7.4%増、航空関連施設業は、用地が減少になったものの、構築物、給油施設を中心に41.8%増、登録ホテル業は、新築、構築物等を中心に42.4%増となっており、20業種中13業種で投資額が増加した。
一方、トラック運送業は、自動車、車庫及び修理工場を中心に10.2%減となった。
(エネルギー対策、研究開発のための投資が引き続き増加)
4年度設備投資実績(工事ベース)を投資目的別〔2−1−31表〕にみると、「エネルギー対策のための投資」(192.4%増)、「研究開発のための投資」(77.1%増)、「公害防止設備及び環境整備のための投資」(23.2%増)、「合理化及び省力化のための投資」(11.9%増)等、「サービス改善のための投資」(0.9%減)を除く全ての項目にわたって増加している。また、シェアでは能力増強投資が約6割を占めている。
(外部資金は引き続き増加)
4年度設備投資実績を支払ベースでみると、3兆5,428億円、5.7%増となった。資金調達別には、内部資金が1兆4,892億円、2.5%増、外部資金が1兆0,536億円、8.2%増となっている。
この結果、投資総額に占める外部資金の割合は58.0%、1.4ポイント増となり、その調達内訳では、株式(23.8%増)、政府系金融機関(13.4%増)、民間金融機関(12.6%増)等がシェアを伸ばしたのに対し、社債(18.4%減)、外資(12.8%減)のシェアが減少した〔2−1−30表〕は、総額3兆4,809億円、7.9%減と、昭和62年度調査の6.7%減以来6年ぶりにマイナスに転じた。主な事業ごとの投資計画をみると、鉄道業は、新線建設に伴う構築物や用地等に対する投資の増加で、1兆4,326億円、1.8%増、航空関連施設業は、東京国際空港の沖合展開工事や関西国際空港の第1期工事の進展に伴う空港施設及び構築物等に対する投資の増加により、4,107億円、29.2%増となっている。このほか、航空利用運送業の投資計画額が増加している。その他は全ての業種で投資計画額が減少している〔2−1−33表〕。
また、投資目的別内訳にみると、「研究開発のための投資」(67.7%増)、「公害防止設備投資及び環境整備のための投資」(13.7%増)については、増加しているものの、その他の目的については全て前年度比マイナスを示した。

平成5年度

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