平成5年度 運輸白書

第2章 変貌する国際経済社会と運輸

第2章 変貌する国際経済社会と運輸

 (我が国の国際運輸の状況)
 現在我が国の経済規模は、世界の15%以上を占めるに至っているが、運輸の分野においても、日本の海上貿易量は7億9,219万トンで世界 (42億700万トン)の18.8%(平成4年)、日本を発着した国際航空旅客は、約3,300万人で世界(2億6,600万人)の12.6%に及ぶ(3年)など、我が国を中心とする国際運輸活動が世界に占めるウエイトは大きいものとなっている〔2−2−1図〕
 我が国の経済は、諸外国の人・物との円滑な交流による相互依存関係の深化に伴って発展してきたが、特に近年、円高の進行や経済摩擦の激化、これらに対応した日本企業の海外進出や国際分業の進展、内需主導型経済への移行等経済構造の変化が進んでおり、我が国を取り巻く経済環境は大きく変化している。また、4年に1,179万人にのぼった海外旅行者は、今後さらに着実な増加が予想される。
 こうした状況の中で我が国は国際交通網の整備や国際政策協調を進めるとともに、交通安全対策の実施、開発途上国への経済協力等を通じて日本の進んだ運輸技術・ノウハウの提供等の積極的な貢献を引き続き進めるなど、国際運輸の充実に努力していくことが求められている。

第1節 国際交通サービスの充実

    1 国際交通網の充実
    2 国際輸送の安全対策


1 国際交通網の充実
 経済活動、国民生活両面にわたる本格的な国際化時代を迎えて、我が国を中心とした国際的な人と物の流れがかつてない程活発化しており、このため、国際交通網の一層の整備、充実が重要課題となっている。
 航空については、関係二国間の航空協定に基づいて国際定期航空運送事業が運営されており、我が国としては、航空交渉に際し、利用者の利便に適切に対応した輸送力を確保し、国際的な人的交流及び物的流通の促進を図ることを基本的目標としている。
 現在、6年9月開港予定の関西国際空港における国際路線を充実させるため、同空港への乗り入れを希望している国々との間で航空交渉を精力的に推進しており、4年9月から5年8月までに39ヶ国との間で38回の協議が行われた。これらにより、5年7月までにネパール、南アフリカ、ベトナム等の新規の航空協定締結国を含む30ヶ国と、関西国際空港への新規乗り入れや既乗り入れ国の増便の取決め等について合意した。4年10月の第1回に引き続き、5年8月に第2回日米航空交渉を開催し、関西国際空港への乗り入れ問題、日米航空権益の不均衡問題等について米国政府と議論を行っているところである。
 また、海運については、我が国は「海運自由の原則」を政策の基本として、OECD、GATT、UNCTAD等の国際機関における活動に参加するとともに、米国、EC等と海運政策の調整及び意見交換を行ってきている。また、中国、韓国等の近隣諸国との間では二国間協議により、両国海運企業が互恵平等の原則で航路開設や営業活動の確保ができるよう努めており、最近の日中政府間協議においては、最大の懸案事項であった日本/上海定期フェリー航路の第2船投入問題及び海運企業の相手国内における営業活動の自由化の問題が解決された。

2 国際輸送の安全対策
 (海上安全対策の推進)
 我が国は従来から、海上安全確保及び海洋環境保護については、関係諸国や国際機関との国際協調のもと積極的にその対策を推進してきているが、昨今のタンカーの重大事故の続発に対応して、5年2月、国際海事機関(IMO)に対し、油タンカーの二重構造化の推進、PSC(寄港国による監督)の強化並びに包括的な船舶の安全運航管理体制の確立を目的とした国際安全管理コード(ISMコード)の早期採択及び実施を主な内容とする「油タンカーの安全確保及び海洋環境保護に関する総会決 議案」を提案した。同提案は5月の海上安全委員会(MSC)、7月の海洋環境保護委員会(MEPC)で概ね了承され、10月のIMO総会で採択された。マラッカ・シンガポール海峡についても、MSCに航行安全問題を検討するためのワーキング・グループが設立され、我が国も同海峡の現地調査に積極的に協力し、同海峡における航行安全の確保に貢献しているところである。
 (核物質輸送に係る安全の確保)
 原子力開発利用の進展に伴い、使用済み核燃料をはじめとする放射性物質の国際輸送の機会が増大しており、事故による災害や核物質の盗取等を防止するための安全対策、防護対策等の適切な実施が重要となっている。4年11月から5年1月にかけてのフランスから日本へのプルトニウムの海上輸送については、核物質の輸送用に特別に設定された輸送船の使用等十分な安全対策を講じるとともに、海上保安庁においては護衛に当たる巡視船の派遣、輸送船への海上保安官の乗船等の措置を講じ、総日数60日、総航程約2万海里に及ぶ長期間にわたって、万全の体制で護衛を実施した。



平成5年度

目次