第2節 国際経済問題に対応した運輸行政の展開 |
我が国としても、保護主義的な動きに留意しつつ、国際協調の進展と経済成長の実現が図られるよう、適切に対応する必要がある。
(運輸ハイレベル協議)
運輸省では、主要運輸当局と密接な意思疎通を図ることにより、運輸分野における諸課題について円滑な調整を行うため、運輸審議官と諸外国の次官クラスとの間で、運輸ハイレベル協議を実施している。平成5年3月には、EC委員会第7総局長(運輸担当)を迎え、EC共通運輸政策等を中心に協議が行われた。
(日米経済パートナーシップ協議)
5年7月の日米首脳会談で、従来の日米構造問題協議(SII)に代え、新たにセクター別・構造面での協議及び交渉並びに地球的展望に立った協力のための共通の課題を扱う枠組みが合意された。この中には、運輸技術協力等運輸分野に関する事項が含まれており、運輸省としても、適切な対応が必要とされるところである。
(日米建設協議)
関西国際空港プロジェクト等大型公共事業への外国企業の参入等に関しては、日米両国間で合意された「大型公共事業への参入機会等に関する我が国政府の措置」(昭和63年)及びその追加的措置(平成3年)を着実に実施してきたところである。しかしながら、米国は、日本の市場の閉鎖性を理由として制裁措置を背景にー般競争入札制度の導入等新たな提案を行っている。我が国としては、米国の制裁措置を前提とした交渉には応じられないとの立場をとりつつも、米側提案を含めたオープンな議論にのぞむこととしている。
(日米運輸技術協力の推進)
クリントン政権は、米国経済の再建を目指して打ち出した経済政策の中で、高速鉄道整備、磁気浮上式鉄道の開発等インフラの整備・改良を重視し、また、電気自動車等の導入の提唱等環境・エネルギーにも重点を置いている。これを踏まえて、5年4月の日米首脳会談において運輸技術の分野における包括的な日米協力の枠組みにつき、基本的合意がなされ、日米経済パートナーシップ協議においても当該協力が積極的協力分野の一つとして位置付けられている。今後、当該協力の枠組みを確定し、専門家による会合を開催することとしている。
(GATTウルグアイ・ラウンド)
昭和61年から開始されたGATTウルグアイ・ラウンドにおいては、新たに運輸、金融等のサービス貿易が取り上げられ、その自由化を促進するための協定の策定作業が進められてきており、運輸省では航空、海運等の分野を中心に積極的に対応してきている。今後、ジュネーブでの交渉において、年内合意の達成に向けて調整が行なわれることとなるが、一部の国が海運等の主要分野につき自由化に消極的な姿勢をとっていることから、我が国としては、引き続き海運等の自由化を求め、ガット交渉の円滑な進展に貢献していく必要がある。
(自動車基準・認証の国際化)
我が国は、自動車基準・認証に関し、従来より諸外国の意見等を踏まえ必要な措置を講じてきている。特に、米国より要望のあった自動車基準・認証に係る14項目については、平成4年1月のブッシュ大統領訪日の際に作成された日米グローバルパートナーシップ行動計画において、解決又は解決目前として全て米国側の合意が得られ、そのフォローアップとして自動車基準・認証に関する日米専門家の意見交換等を実施している。
今後とも、欧米の政府機関及び業界との意思疎通を図るとともに、国連欧州経済委員会自動車安全公害専門家会議に積極的に参画し、自動車基準・認証の一層の国際化を図っていくこととしている。
(造船助成の削減問題)
OECD造船部会においては、政府助成を削減し、造船業における公正な競争条件を確保するための新たな条約に関する協議が行われており、米国における政権交替等により、4年4月以降一時中断されていたものの、5年9月より再開された。我が国は主要造船国のー員として適正な条約の成立に引き続き努めていくこととしている。