平成5年度 運輸白書

第3章 貨物の円滑化
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第3節 積合せ輸送の推進 |
1 都市内・地域内における物流効率化の必要性
2 中小企業の流通業務の効率化
- 1 都市内・地域内における物流効率化の必要性〔2−3−1図〕
- 産業構造の変化や消費ニーズの多様化に伴う物流サービスの高度化は、都市内・地域内における物流構造や流通機構に大きな変化をもたらしている。
都市内・地域内においては、主として貨物の輸送をトラックに頼ることとなるが、多頻度少量輸送、時間指定配送、緊急配送といった近年の物流ニーズ高度化への対応は、トラックの積載効率の低下や手待ち時間の増加等の輸送効率の低下をもたらしている面があり、また、トラックの交通量の増大や貨物積卸しのための駐停車は、大都市内における環境問題の深刻化や交通混雑の一因となっている。
自家用トラックは、使用者にとっての利便性という点で営業用トラックに対する優位性を有しており、特に営業活動等を伴う都市内・地域内においてその依存割合は大きい。
しかし、自家用トラックによる輸送は、営業用トラックのように複数の荷主の貨物の積合せができず、また、片道輸送がほとんどであるため、積載効率の低下は避けることができない。そしてこのことが物流に係る種々の制約要因を一層深刻なものにしていると考えられる。
こういった状況に対応にするためには、荷主企業等を含めた関係者が、これまでの自家用トラックによる個別輸送から、営業用トラックの特性を活かした積合せ輸送の拡大による都市内・地域内物流の効率化のために積極的に取り組むことが重要である。
そこで運輸省としては、都市内・地域内における営業用トラックの積合せ輸送、共同配送センターの整備を推進するとともに、商業・業務集積地において共同集配システムを構築するため、5年度において、「商業・業務集積地における物流円滑化のためのガイドライン」を策定すべく、東京、名古屋及び大阪のそれぞれ特色を持った地区を対象として調査を行っている。
- 2 中小企業の流通業務の効率化
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我が国の物流は、中小企業への依存度が高く、特にトラック事業者においてはその約99%が中小企業者で占められている。我が国の経済社会が今後も健全な発展を続けていくためには、物資の円滑な流通が確保されることが必要であり、中小企業の物流効率化を通じて物流全体の効率化を図ることが重要な課題となっている。また大企業に比べて経営基盤の脆弱な中小企業においては、道路交通混雑、環境問題、労働力不足等の物流をめぐる制約要因の影響が深刻であり、企業経営の上でも効率化が必要とされている。
しかしながら、資金調達力が脆弱であり、かつ効率化投資に見合う物流量の確保が難しい中小企業が単独でこのような問題に取り組んでいくことは困難であり、今後中小企業が流通業務の効率化を進めていくにあたっては、複数の企業が共同して、一体的に流通業務を行うことにより、各企業の流通業務の効率化を図っていくことが効果的な対応策であると考えられる。
このため、中小企業のこのような取組みを支援するため、中小企業流通業務効率化促進法が4年10月に施行された。同法に基づいて運輸省及び中小企業庁は流通業務効率化事業の内容、方法等に関する基本的な方向を示すとともに、認定を受けた効率化計画に従って行われる事業に対し、課税の特例措置や財政投融資等を行い、中小企業者の流通業務の一層の効率化を促進することとしている。
また、5年度から10年度を対象期間とするトラック事業に係る中小企業近代化計画を5年7月に告示した。この計画を踏まえ各都道府県トラック協会が作成し、運輸省が承認した構造改善計画に沿って、構造改善事業の指導等を行うこととしている。

平成5年度

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