平成5年度 運輸白書

第4章 観光レクリエーションの振興
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第4章 観光レクリエーションの振興 |
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第1節 観光の振興 |
1 観光交流拡大計画(Two Way Tourism 21)の推進等
2 90年代観光振興行動計画(TAP90's)の推進等
- 1 観光交流拡大計画(Two Way Tourism 21)の推進等
- (1) 観光交流拡大計画の推進等〔2−4−1図〕
- 国際間の相互依存関係がますます深まっており、我が国の国際社会における地位が極めて重要なものになっているため、国際間の相互理解の増進及び市民レベルの国際交流の拡大を図り、我が国の国際社会における安定的地位の維持・発展に努めることがますます重要になってきている。一方、日本人の海外旅行は有名地の駆け足旅行やショッピングなど画一的なものが多く、モラルやマナーに依然問題があることから、国民が海外旅行が本来持つ多様な価値を理解し、その個性に合ったより豊かな海外旅行に楽しむことができるようその質的向上を図っていく必要がある。そのため、運輸省は、平成3年7月に、運輸政策審議会の答申や2年にその量的目標を達成した「海外旅行倍増計画」(テン・ミリオン計画)をも踏まえ、21世紀を展望した新たな国際観光の振興のための行動計画として観光交流拡大計画(Two Way Tourism 21)を策定し、双方向の観光交流の拡大と海外旅行の質的向上を重点とした施策を強力に推進している。
また、各都道府県から都道府県観光協会に補助金として交付される観光事業振興助成交付金制度に基づき、(社)日本観光協会は地域における観光事業の一層の推進を図り、観光振興に資するため、観光地の活性化・環境整備、観光事業従事者の教育研修・福利厚生及び外客受入体制の整備等の事業を推進している。
- (2) 快適な旅行の推進
- (ア) 旅行業の現状
- 近年順調に取扱高を伸ばしてきた旅行業も、今次の景気低迷の影響を受けて業況が悪化し、旅行業者のうち主要35社の4年度の取扱高は5兆1,750億円と前年度に比べ微減となった。
一方、旅行業者の数は年々増加し、5年4月1日現在、一般旅行業者900社、国内旅行業者6,922社、旅行業代理店業者4,653社の計12,457社となっている。
- (イ) 旅行の振興
- 従業員レクリエーション旅行の促進は、国際交流の拡大、ゆとりの創出、企業の人材確保等の観点から大きな意義を有している。このため、5年4月の政府の「新総合経済対策」において、従業員レクリエーション旅行について、旅行目的地を拡大し、より一層個性を生かしたゆとりある旅行を可能とするため、非課税の対象となる旅行の日数要件を緩和(3泊4日以内から4泊5日以内)した。
- (ウ) 安全な旅行の確保
- 近年、海外旅行者数が飛躍的に増加する一方、日本人が海外において事故・事件等に遭遇するケースが増大していることから、従来より海外旅行の安全に関する情報ビデオを作成するなど旅行者の安全意識の向上を図ってきたところである。更に、5年7月には、米国における日本人留学生射殺事件の発生を踏まえ、緊急・危険時における英語表現を集めたリーフレット(「安全な旅のための用語集」)を作成し、旅行業者の窓口等を通じ旅行者に配布した。
- (エ) 消費者保護の充実
- 旅行業に関しては、旅行取引に関する債権の保護を図るため、旅行業者についてあらかじめ一定額を国に供託することを内容とする営業保証金制度を設け、消費者の保護を図ってきたところである。
こうした中、4年以降、多数の一般消費者を巻き込んだ旅行業者の倒産事案が発生したことから、消費者保護の充実を図るため、営業保証金制度に代替する弁済業務保証金制度に関し、旅行業協会を指導し、11月及び12月に弁済業務保証金の還付手続の簡素化、消費者優先原則の明確化を内容とする弁済業務規約の変更を行わせた。
また、5年7月には旅行業法施行規則の一部を改正し、旅行業者が供託すべき営業保証金の額の引上げを行った。
- (3) 外国人訪日旅行の促進
- (ア) 外客誘致活動の充実
- 経済面において対外依存度の高い我が国にとって、国際的な信頼関係の維持は国家存立の絶対条件であり、外客の招致は、文化的背景の異なる諸国との相互理解・相互交流の機会を提供し、市民レベルでの国際親善を進めていくうえで、積極的な意義を有している。
このため運輸省としては、海外における観光宣伝や、外国人観光客に対する情報提供といった外客の来訪促進のための事業を、(特)国際観光振興会を通じて行うとともに、外客に低廉な宿泊施設を紹介するウェルカム・イン予約センターの充実について(財)国際観光サービスセンターを指導するほか、訪日外客の利便を増進し、国際交流を一層促進するため、(特)国際観光振興会や地方公共団体と連携しながら以下の諸施策を実施している。
- (イ) 国際観光モデル地区の整備
- 国際観光モデル地区構想は、外客が安心して一人歩きできる環境をつくり、同地城への外客の来訪を促進し、地方の国際化、国際的相互理解の増進等に寄与しようというものであり、5年10月現在、39道県42地区が国際観光モデル地区に指定されている。同地区においては、地方公共団体等が中心となって整備実施計画を策定し、この計画に基づき、国際観光振興会と連携して「i」案内所、総合案内版、各種標識等の整備、パンフレットの充実、善意通訳、ホーム・ビジットの普及等外客受入体制の整備を推進している。(なお、5年7月に新たに指定された6地区については、整備実施計画を策定中である。)
この結果、5年4月には、42地区のうち、新たに指定された6地区を除く36地区において、「i」案内所は指定前の30ヶ所から82ヶ所に、総合案内版は297ヶ所から1,132ヶ所にそれぞれ増加した。
なお、4年度に引き続き5年度も、当初の目的どおり外客が安心して一人歩きできるように効果的な整備が進んでいるかを把握するため、外国人による整備推進状況モニター調査を12地区で行うこととしている。
- (ウ) 国際交流村の整備
- 国際交流村は、国際観光モデル地区における外客誘致の拠点として、外客に地域の自然、文化、歴史等の紹介や外客の伝統的生活文化体験のための施設、イベントを通じた外客と地域住民の交流の場となる施設等を一体的に整備するもので、現在、7地区において整備が終了し、5地区において整備が行われている。
- (エ) 国際市民交流基盤施設の整備
- 市民レベルにおける国際化の促進に資する交流拠点の形成を図るため、民活法に基づいて民間事業者による「国際市民交流基盤施設(※)」の整備を推進している。
※「国際市民交流基盤施設」・・・我が国又は外国の経済・社会・技術等を効果的に紹介するための一群の施設のことであり、以下の施設を一定のエリア内に整備するもののことである。
@展示施設(ex.歴史博物館、観光情報インフォメーションセンター等)
A展示物として供される建物又は構築物(ex.城の再現、外国の街並みの再現等)
B観覧場その他の共同利用施設(ex.イベントスペース、総合案内所等)
- (オ) 登録ホテル・旅館等の整備
- 運輸省では、訪日外国人の利便の増進、国際観光の振興等の観点から、外国人客の宿泊に適したホテル・旅館の登録、外国人旅行者が容易にかつ快適に食事ができる優秀なレストランについての登録を行い、その整備を推進して、観光に欠くことのできない宿泊及び食事の両面から外客接遇の充実を図っている。
また、訪日外国人客のニーズの多様化等に対応して、5年4月からは、新たに外客接遇主任者制度の導入や登録ホテル・旅館に関する情報提供制度の創設、登録基準の緩和等の措置を講じて、ハード・ソフト両面からの充実を図っている。
なお、5年9月末現在、679軒のホテル、1,694軒の旅館及び147軒のレストランが登録されている。
- (4)コンベンションの振興
- (ア)国際コンベンション・シティ構想の推進等
- 運輸省では、国際コンベンションの振興を図るため、国際コンベンション・シティ構想に基づき、昭和63年に25都市、平成4年に9都市の計34都市を国際コンベンション・シティとして指定し、(特)国際観光振興会及び(財)日本コンベンション振興協会を通じて、海外トレードショーへの参加などによる諸外国への誘致宣伝事業、海外先進都市への研修派遣・コンベンション振興フォーラムなどによる人材育成事業、コンベンション開催決定機関の所在などの情報提供事業等の支援措置を講じている。
また、地域における振興体制の整備を推進するため、運輸省の指導のもとに全国20都市で財団法人コンベンションビューローが設立されている。
- (イ)国際会議場施設の整備
- 運輸省では、国際的な人的、経済的交流を促進する観点から民活法に基づき、整備計画の認定を受け国際会議場施設の整備を行う民間事業者に対し支援を行っており、4年度までに3施設に係る整備計画の認定を行った。
そのうち、横浜国際平和会議場については、3年7月より、宇奈月国際会館については、5年8月より、それぞれ供用を開始している。また、4年7月に認定したりんくうゲートタワービル国際会議場については、引き続き整備を推進しているところである。
- 2 90年代観光振興行動計画(TAP90's)の推進等
- (1) 観光立県推進会議の開催〔2−4−2図〕
- 運輸省では観光の振興が地域の活性化、国民のゆとりある生活の実現、国際相互理解の増進等に大いに貢献することから、21世紀を目指して観光のより一層の振興を図るため昭和63年4月「90年代観光振興行動計画(TAP90's)」を策定した。
この行動計画は、中央及び選定された地方ごとに有識者からなる観光立県推進会議を開催し、官・民、中央・地方が一体となって観光振興に関する具体的施策を提言し、実行に移そうとするものである。
観光立県推進地方会議は、平成4年度までに8回開催され、5年度は、5月31日から6月2日まで岡山県・広島県において第9回地方会議が開催され、10月20日から22日まで京都府・兵庫県において第10回地方会議が開催された。これらの地方会議では、それぞれの地域の特色を生かした観光振興方策について活発な審議が行われ、会議での提言は、各地域の協議会等フォローアップ推進組織を通して、逐次実施に移されるなど、観光立県推進運動は着実な成果をあげている。
- (2) 地域伝統芸能等を活用した観光の振興
- 地域伝統芸能等(地域の伝統的な芸能及び風俗慣習)は、地域固有の歴史、文化等を色濃く反映したものであり、これを活用することは、地域の特色を生かした観光の振興を図るためには極めて効果的と考えられる。
そのため、第123回国会において成立した「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」に基づき都道府県が策定する基本計画に沿って実施される地域伝統芸能等を活用したイベントに対して、同法に基づく支援事業実施機関からの資金提供、情報提供等の適切な支援を行うこととしている。
- (3) 観光資源の保存・活用を通じた観光の振興〔2−4−3図〕
- 地域固有の貴重な文化遺産や自然景観などの観光資源を保存・活用していくことは、魅力ある観光地づくりのために欠くことのできない要素である。
こうした観光資源の保護、継承のために(財)日本ナショナルトラストでは、岐阜県白川郷合掌造り民家やトラストトレイン(SL列車)といった貴重な観光資源について保護・保存等の事業を行っており、これらの活動を通じて地域の特性を活かした観光の振興を図っている。
- (4) 新たな観光地づくり
- (ア) 家族旅行村の整備
- 家族旅行村は、家族が恵まれた自然の中で手軽に観光レクリエーション活動ができるようキャンプ場、ピクニック緑地、スポーツレクリエーション施設、簡易宿泊施設等を整備するもので、現在、38地区において供用され、9地区において整備が行われている
- (イ) 家族キャンプ村の整備
- 家族キャンプ村は、国民の余暇活動の増大、自然志向の高まり等のニーズに対応するものとして、豊かな自然の中に手軽・低廉でかつ快適に利用できる質の高いオートキャンプ施設(車をテントサイトまで乗り入れることのできるキャンプ場)を整備し、このキャンプ施設を滞在基地として周辺の観光レクリエーション施設等との連携を図るものである。現在、7地区において整備が行われている。
- (ウ) 総合保養地域の整備
- ゆとりある国民生活の実現と地域の振興を図ること等を目的とした総合保養地域整備法に基づき、5年9月末までに総合保養地域の整備に関する40道府県の基本構想が承認され、各地域で自然環境の保全等に配慮しつつ総合保養地域の整備が進められている。

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