平成5年度 運輸白書

第8章 豊かなウォーターフロントの形成
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第2節 物流・産業を支える港湾の整備 |
1 効率的な物流体系の形成
2 資源の安定供給と地域の産業振興
- 1 効率的な物流体系の形成
- (1) 輸入促進のための港湾の整備
〔2−8−4図〕
- 我が国の経常収支黒字額は、平成3年の729億ドルから4年の1,176億ドルと拡大しており、輸入を拡大・促進して貿易収支の黒字を縮小することが緊急の課題となっている。こうした中で、港湾で取り扱われる輸出入貨物量は4年には10億572万トン(対前年比0.35%増)となり、過去最大となった。特に輸入コンテナ貨物の取扱量は、製品輸入割合の拡大に伴い、過去10年間で2.9倍と高い伸びを示し、4年には6,051万トン(対前年比2.0%増)となっており、さらに増加する勢いにある。
一方、現在の我が国の外貿コンテナターミナルは、主に輸出貨物を対象として整備されてきた。しかし、一般に、輸入コンテナ貨物は、ターミナル内で国内で流通させるための加工が行われたり、あるいは荷主の在庫管理の影響を受けたりするため、滞留時間が概ね6日と、輸出コンテナ貨物が2、3日であるのに比べて長く、また随時引き取りにくる荷主に効率的に対応する必要があるため、多段積みの保管には適さない。輸入コンテナ貨物を効果的・効率的に取り扱うためには在来のターミナルに比べ2〜4倍の面積を持つヤードや流通関連施設の整備が必要であると考えられる。
現在の限られたヤード面積ではコンテナを多段積みして保管せざるを得ず、コンテナ受け渡し等の荷役効率が著しく低下しており、また、荷主のスケジュールによって、コンテナ搬出のためにターミナルに集まるトレーラーが一時的に集中し、駐車場不足のために周辺道路においても待機せざるを得ない場合もあり、一般道路を含めた周辺道路の渋滞を引き起こす一因ともなっている。こうした状況を解決するため、荷役システムを改善して作業効率の向上に努めてはいるものの、十分な対策とはなっておらず、基本的には広いヤードの整備が不可欠となっている。
さらに、世界的にコンテナ船の大型化が急速に進み、岸壁水深の主流が−10m〜−12mから−14m〜−15mへとシフトしているのに対して、我が国のコンテナターミナルのうち水深−14m以上のものはわずかに5バース(5年6月現在)であり、こうした変化に十分な対応がなされていない現状にある。
こうした状況は、海外からも輸入促進を阻害する要因の一つとして指摘されており、2年の日米構造問題協議において、7年度までに外貿コンテナターミナル、多目的外貿ターミナル等を水際線延長で約30km整備することとされた。
これは、第8次港湾整備五箇年計画の整備目標の一つとなり、5年度には、神戸港、博多港等17港で外貿コンテナターミナルの整備を、八戸港、三河港等75港で多目的外貿ターミナルの整備を行うほか、横浜港、博多港等において、輸入貨物を円滑に処理するための総合輸入ターミナルの整備を推進することとしている。
また、4年度に制定された「輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法」に基づいて、5年3月には港湾関連では、大阪港、神戸港、松山港、北九州港についての地域輸入促進計画を承認し、これら輸入促進地域における輸入インフラの整備を推進することとした。引き続き、その他の地域においても輸入促進地域の検討が進められている。
- (2) モーダルシフト推進のための港湾の整備
〔2−8−5図〕
- 近年の我が国の物流は、CO2排出に伴う地球温暖化等の環境問題、労働力不足の深刻化、あるいは都市部の道路渋滞の激化等の問題に直面している。現在我が国の国内貨物輸送の50%強はトラック輸送によっているが、これを、幹線輸送については、一人あたりの輸送効率では8〜13倍、輸送活動(トンキロ)あたりのCO2排出量では15〜11分の1の鉄道及び海上輸送へのモーダルシフトを押し進めることが、重要な課題となっている。
内航海運のうち、内航コンテナ船、RoRo船、フェリーによる輸送は、貨物がパレット、コンテナ、オンシャーシー等ユニットロードと呼ばれる機械荷役が可能な荷姿にまとめられており、海陸間の積み替えが極めて迅速かつ効率的に行えることから、トラックとの複合一貫輸送を行えるメリットを持ち、海運へのモーダルシフトの受け皿となるため、その利便性の向上が課題となっている。このため、貨物の積み卸しから保管までの作業を一体的かつ連続的に行うことができる荷捌き施設や、十分な駐車スペースを備えた内貿ユニットロードターミナルを、第8次五箇年計画期間中に28港で整備することとしており、現在北九州港、塩釜港等23港において整備している。
また、港湾と幹線一般道路とを直結する幹線臨港道路を、東京港、新潟港等17港で整備している。
さらに、モーダルシフトを飛躍的に進めるものとして開発の進められている新形式超高速船(テクノスーパ・ライナー)に対応した港湾荷役システムやターミナル施設、物流ネットワークを構成するための港湾の配置等について検討を行っている。
- 2 資源の安定供給と地域の産業振興
- 我が国におけるエネルギー消費構造の変化に伴い、今後とも増加が見込まれる海外一般炭等の安定供給を確保するために、常陸那珂港、三隅港等5港を、石炭火力発電所等の基地として整備している。
また、既存の地場産業のさらなる振興や、新たな産業おこし等の基盤となる地域産業振興港湾の整備を、御前崎港など106港で行っており、地域における雇用の確保、所得水準の向上等を通じて地域の人々の定住を図っているところである。
地域の産業振興を支えるとともに、港湾背後都市の住宅地や工業用地等が混在している状況を改善し、さらには良好な環境を創造するには、物流・産業施設を再配置し、生活のための基盤施設を整備するため等の新たな用地需要に応えていく必要があり、5年度には博多港等57港で用地造成を行うこととしている。

平成5年度

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