平成5年度 運輸白書

第9章 航空ネットワークの充実に向けた取組み

第9章 航空ネットワークの充実に向けた取組み

 我が国の航空輸送は、時間価値の上昇に伴う高速交通ニーズの高まり等を背景として、旅客・貨物ともに急速な発展を遂げており、これらの増大する航空需要に対応するためには、空港の整備と航空サービスの充実を図り、国内・国際の航空ネットワークを充実させる必要がある。そのため、平成3年度を初年度とする第6次空港整備五箇年計画に基づき、新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開の完成並びに関西国際空港の開港を最優先課題として空港整備を推進するとともに、増大する交通量に対応した航空保安体制の整備を進めている。また、航空サービスの面では、競争促進施策の推進、新国際航空運賃政策の推進、供給力の充実と効率化、地方空港の活用等を図っている。

第1節 航空整備の推進

    1 第6次航空整備五箇年計画の推進
    2 新東京国際空港の整備
    3 東京国際空港の沖合展開事業の推進
    4 関西国際空港の整備
    5 一般空港の整備
    6 航空交通流管理センター等の整備


1 第6次航空整備五箇年計画の推進〔2−9−1表〕
 (21世紀を展望した空港整備)
 航空需要の増大に対応して、計画的な空港及び航空保安施設の整備を推進するため、政府は昭和42年度以来「空港整備五箇年計画」を策定してきている。平成3年11月29日には、3年度から7年度までの5年間を計画期間とする第6次空港整備五箇年計画(投資規模3兆1,900億円、対前計画比66%増)が閣議によって決定され、現在、同計画に従って積極的に空港整備を進めている。
 同計画においては、国際・国内航空ネットワークが集中する東京圏及び大阪圏の二大都市圏の空港制約を解消するため、新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開事業の完成並びに関西国際空港の開港といういわゆる三大空港プロジェクトを最優先課題として推進するほか、一般空港等についても、就航機材の大型化等に対応するとともに、国際・国内航空ネットワークの充実を図るため、空港の新設、滑走路の延長等所要の整備を図ることとしている。
 さらに、中長期的な航空需要の動向を勘案して、関西国際空港の全体構想についてその推進を図るため、調査検討を進めるとともに、事業の健全な経営と円滑な実施を図るための措置に関し関係者間で具体的方策を確立するほか、中部新国際空港構想及び首都圏の空港能力の拡充についても調査を進めることとしている。

2 新東京国際空港の整備
 (新東京国際空港の整備に向けて努力)
(1) 空港の現況
 平成4年度における新東京国際空港の利用状況は、航空機発着回数12万1,000回、年間航空旅客数2,180万人、同航空貨物量131万トンに上っている。この結果、A滑走路1本の現供用施設では、現在乗り入れている38ヶ国51の航空会社からの強い増便要請や、45ヶ国からの新規乗り入れ希望に応えられない状況にある。
 このため、昭和61年度から二期工事に着手し、4年12月には、第2旅客ターミナルビルの供用を開始し、さらに、これらと併せて、既存施設の能力増強にも取り組んでいる。しかしながら、空港能力の拡大を図るためには、新東京国際空港の滑走路等の整備が是非とも必要であり、成田空港問題の解決が喫緊の課題となっている。
(2) 新東京国際空港の整備に向けて
 成田空港問題については、平和的に話し合いで解決するべく最大限の努力を行っており、3年11月から、運輸省・空港公団、反対同盟、千葉県等関係者が一堂に会し「成田空港問題シンポジウム」が開催され、5年5月の第15回シンポジウム(最終)において、国側は、反対同盟からの3提案(@収用裁決申請の取り下げ、AB・C滑走路建設計画を白紙に戻すこと、B空港をめぐる地域のコンセンサス作りのための新たな場づくり)について、とりまとめ役である隅谷調査団が示した所見(同盟提案の@については国が同意すること、Aについては国は白紙の状態に戻して地域とよく話し合って解決の道を探ること、Bについては国・同盟のほか地元関係者が合意し、それが実現されることにより「力による対決」の時代が終わり、今後は新たな場において空港と地域の共生の仕組み等について関係者が自由に話し合い、解決の道を探ること。)に従って受け入れることを表明し、これをもってシンポジウムは終結した。
 このシンポジウムでの結論を受けて、空港と地域との共生の道を話し合うための「成田空港問題円卓会議」が5年9月からの開催されており、今後、この場等を通じて、新東京国際空港の整備についての地域のコンセンサスを得る努力を十分尽くし、計画実現に向けて引き続き全力を傾けていくこととしている。
(3) 過激派対策
 一方、空港周辺に常駐する一部過激派は、空港に向けて飛翔弾を発射したり、住宅に放火するなどのテロ・ゲリラを繰り返している。
 このため、空港内外に存する15ヶ所の団結小屋等に対し、「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法」の規定に基づき使用禁止命令を発し、このうち同命令違反が明白であった7ヶ所については、62年以降、除去あるいは封鎖処分を実施している。今後も空港を取り巻く情勢等を踏まえながら、同法を適切に運用していく必要がある。

3 東京国際空港の沖合展開事業の推進〔2−9−2図〕
 (西側ターミナル施設が供用開始し、3期工事が本格化)
 東京国際空港は、全国42空港との間に1日約260便(520発着)のネットワークが形成され、年間約4,000万人が利用している。本事業は、将来とも首都圏における国内航空交通の中心としての機能を確保するとともに、航空機騒音問題の解消を図るため、東京都の羽田沖廃棄物埋立地を活用し、空港を沖合展開するものである。本事業においては、全体を3期に分け段階供用を行うこととしており、第1期については、昭和63年7月2日の新A滑走路供用開始をもって完了し、滑走路年間処理能力は以前より増大し順次増便が行われてきている。
 これに引き続き、第2期として西側ターミナル施設の整備に着手し、平成5年9月27日に供用を開始した。これにより、東西の長さが840mにも及び日本有数の規模を誇る西側旅客ターミナルビルや約4,700台収容可能な立体駐車場等のターミナル施設が整備され、また、空港へのアクセスとして東京モノレールの西側旅客ターミナルビルへの延伸、京浜急行と東京モノレールとの接続、湾岸道路、環状8号線の空港への延伸が行われた。この結果、旅客の利便性の向上が図られ、首都圏の空の玄関にふさわしい空港へと生まれ変わった。
 今後は第3期計画に係る事業について、用地造成等の工事を引き続き実施するほか、エプロン、航空保安施設、気象施設等の整備についても本格的に着手し、推進を図るものとする。

4 関西国際空港の整備
 (来年9月の開港に向けて空港建設も最終段階へ)
(1) 空港計画の概要
 関西国際空港は、大阪湾南東部の泉州沖約5kmの海上に建設中の我が国初の本格的な24時間運用可能な空港である。現在、滑走路1本の第1期計画の建設を進めており、全体構想についても、実現に向けて取り組んでいる 〔2−9−3表〕
(2) 空港建設の進捗状況
 昭和59年10月に設立された関西国際空港株式会社は、62年1月以来空港建設を進めているが、平成6年9月の開港に向け、工事も最終段階に入っており、現在、滑走路、旅客ターミナルビル等の空港諸施設の建設工事を急ピッチで進めているところである 〔2−9−4図〕
(3) アクセス交通の整備
 関西国際空港は、大阪、神戸とそれぞれ30分で結ばれるなど、鉄道、道路、海上、といった様々なアクセス交通で近畿圏の主要都市と連絡する極めて便利な空港として計画されており、現在、これらのアクセス交通の施設整備その他の準備も来年の開港に向けて最終段階に入っている 〔2−9−5表〕
(4) 全体構想
 関西国際空港の全体構想については、平成3年11月の第6次空港整備五箇年計画の閣議決定において、『関西国際空港の全体構想については、その推進を図るため、調査検討を進めるとともに、事業の健全な経営と円滑な実施を図るための措置に関し関係者間で具体的方策を確立する。』とされたところであり、この閣議決定の趣旨に沿って所要の調査・検討を行っている。
 なお、平成5年度予算において、全体構想に関する調査費として5億300万円(国7,000万円、関西国際空港(株)4億3,300万円)が計上されており、これにより所要の調査を進めている。

5 一般空港の整備
 (航空ネットワ一クの充実・多様化をめざして)
(1) 整備の現状
 一般空港の整備については、昭和42年度の第1次から平成3年度の第6次に至る空港整備五箇年計画に基づき着実に実施してきており、昭和42年度末においては空港数52、うちジェット化空港は全空港の12%に当たる6空港、2,500m以上の滑走路を有する大型ジェット機の就航可能な空港は全空港の4%に当たる2空港であったものが、平成5年10月1日現在で、空港数86、うちジェット化空港は59%に当たる51空港、大型ジェット機の就航可能な空港は29%に当たる25空港となっている 〔2−9−6図〕
 その結果、輸送構造をみると、4年度においては国内航空195路線のうち74%に当たる144路線がジェット化され、ジェット機就航路線の旅客数は全旅客数6,969万人の96%に当たる6,724万人を占めるまでに至っている。また、東京国際空港及び大阪国際空港を利用した旅客は全旅客数の77%に当たる5,370万人を占めており、両基幹空港への二極集中構造となっている。
(2) 将来の展望
 5年度には新規事業として中標津空港、新紋別空港、女満別空港、新北九州空港、北大東空港の滑走路新設・延長事業や大館能代空港の新設に着手するなど、コミューター空港の2空港も含めて23空港において滑走路の新設・延長事業を進めている。これらが完成すると空港の数は現在の86から92に、ジェット化空港の数は51から61に、大型ジェット機の就航可能な空港は25から31に増加する。
 今後においても、航空需要の増加に対応した航空ネットワークの充実・多様化を図るため、引き続き一般空港のジェット化、大型化等を推進するとともに、地方拠点空港におけるターミナル地域の整備を推進する。また、地方空港の国際化についても必要に応じてその推進を図る。
 一方、航空サービスを享受し得ない地域や離島における空港の新設等の整備については、需要動向、路線運営の見通し、投資効果等を勘案しつつ、計画的に進めていくこととしている。

6 航空交通流管理センター等の整備
(航空交通の増大に対応した航空保安システムの新たな展開)
 東京国際空港の沖合展開等の三大空港プロジェクトの進捗等に伴う航空交通量の大幅な増加に対応し、航空交通の安全と効率的な運航を確保するため、全国の航空交通流を一元的に制御するための航空交通流管理センターを6年度から本格的に運用すべく準備を進めている。また、航空交通の高密度化等に対応し、管制情報処理システムの高度化・高信頼化を図るため、現在、分散配置されているテストシステムを一か所に集中し、効率的なソフトウェアの開発・評価及び災害等による管制機関の機能喪失時の危機管理を行うためのシステム開発評価センターを整備し、今年度から運用を開始しているところである。
 さらに、関西国際空港の開港に伴う関西空域の航空交通の輻輳に対応するため、ターミナル管制業務を一元的に実施して空域の有効利用と管制処理能力の向上を図るための関西広域ターミナル管制所を開港に合わせて運用開始すべく整備を進めている。



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