平成6年度 運輸白書

第3章 国際社会と共生しつつ豊かな国民生活の実現に向けた運輸の目指すべき方向

第2節 魅力ある観光の振興をめざして

    1 外国人の訪日促進 
    2 安心で快適な海外旅行を促進するための環境整備
    3 低廉な国内観光旅行の実現
    4 休暇制度の改善


1 外国人の訪日促進
 外国人観光旅客の来訪の促進は、我が国の経済社会に対する国際的な理解の増進や諸外国との友情の確立を図るための重要な課題である。
 しかし、円高による旅行費用が高騰する中、日本の観光イメージの不足、言葉の制約から来る一人歩きのできにくい環境等の理由により、外国人観光旅客の来訪は伸び悩んでおり、観光開発が進む他のアジア諸国に比べても低い水準にとどまっている。
 このような状況を打開するため、国際観光交流支援事業の実施、海外における旅行関係情報の戦略的提供による個人の日本旅行の拡大や的確なマーケッティングに基づく旅行開発による日本への団体旅行の拡大、日本における外国人旅行者受入れ体制の充実等の施策を国際観光振興会の積極的活用を図るとともに、地方自治体等とも連携しつつ、効果的に推進する必要がある。
 また、国際コンベンションの振興は、国際的な相互理解・友好関係を確立する上で重要な役割を果たしている。我が国における国際コンベンションの開催件数は、このところ大きな伸びを示しているが、都市別にみた場合、欧米の主要都市はもとより、アジアのシンガポールや香港にも水をあけられている〔1−3−3図〕。このため、平成6年6月に可決・成立した「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関する法律」(コンベンション法)に基づき、国、国際観光振興会及び地方自治体が一体となって総合的な国際コンベンション振興策を講じていくことが必要である。

2 安心で快適な海外旅行を促進するための環境整備
 安心で、快適な海外旅行を促進するためには、休暇制度の改善の検討、魅力ある旅行商品の提供と並んで安全対策の充実が必要である。
 特に、海外旅行中の事故やトラブルについては、現地情勢に係る情報不足や言葉の障害に原因があるものが多くなっていることから、旅行者に対する情報提供体制の充実が極めて大きな課題となっている。一方、旅行者についても、こうした事故やトラブル等に巻き込まれないよう、十分、旅行先の社会情勢に配慮して行動することが求められている。
 このため、旅行先についての情報提供を目的としたビデオ、パンフレット、あるいは緊急危険時に使用する英語表現を集めたリーフレットの作成を行うとともに、(特)国際観光振興会が中心となって旅行業者、航空事業者等との間で、日本人旅行者に対する情報提供体制の整備を進めている〔1−3−4図〕

3 低廉な国内観光旅行の実現
 円高による割安感に伴い、海外観光旅行へのシフトが進む中で、国内観光旅行を活発化していくには、旅行費用の低廉化を図ることが大きな課題である。このため、公共輸送機関に係る割引運賃・料金の拡充等を進めるとともに、民宿、ペンションや公共宿泊施設といった低廉な宿泊施設の充実や利用促進を図っていく必要がある。

4 休暇制度の改善
 現在、我が国においては、国民一人当たりの休暇取得日数は、欧米に比べてかなり短くなっており〔1−3−5表〕、また、休暇の取得時期も特定の時期に集中している。国民が十分に満足のゆく、ゆったりとした休暇旅行を楽しむことができるようにするためには、「長期休暇の取得」や「休暇の取得時期の分散化(休暇の随時取得)」といった休暇制度の改善を検討していくことが大きな課題となっている。
 このため、運輸省では、関係省庁と協力しつつ、学識経験者、経済界等から成る「ゆとりある休暇」推進協議会を開催し、諸外国の制度をも勘案しつつ、休暇の拡大や取得時期の分散化についての検討を進めている。



平成6年度

目次