平成6年度 運輸白書

むすび

むすび 


 我が国は、貿易立国として著しい経済発展を遂げており、今やGNPが世界全体の15%を占める世界第2の経済大国となっている。また、国民の所得水準も世界で有数のレベルに達している。
 しかし、円高に伴う価格競争力の低下や生産拠点の海外への移転等我が国経済をめぐる環境は、このところ大きく変化しつつあり、また、国際的な相互依存関係がますます深化する中で、アジアを始めとして国際社会との関係は、より緊密化、ボーダーレス化が進んでいる。他方、国民の間には経済力に見合った豊かさを実感できる生活を求める動きが強まっている。
 このためには、我が国産業の高付加価値化をより一層高めることなどにより、国際競争力の維持を図るほか、運輸の分野においても、国際社会との円滑な人流、物流を確保するとともに、観光や余暇活動の充実を図っていくことが重要である。
 国際社会、特に、アジアについて概観すると、地域全体としては、運輸関係社会資本の整備・管理や安全対策、環境保全の促進等のため、我が国への国際協力に対する要請が高まっており、これに的確に応える必要がある。一方、近隣のアジア諸国の一部では大規模な空港、港湾の整備が進展し、また、低廉なコストを背景に航空、海運企業の著しい台頭がみられる。こうした中で、我が国とアジア諸国の間で相互に運輸に関するサービスの水準を高め、良質な運輸サービスの提供を可能とすることが、アジアの発展、ひいては国際社会全般の発展に貢献する方策であると考える。
 このような状況を念頭において、我が国の運輸に課せられている主な課題についてとりまとめると、まず、国際交流基盤については、我が国経済発展の維持や利用者利便性の向上といった観点から、その整備・拡充を図っていく必要がある。このため、国際空港については、国際航空需要にも十分対応し得るよう容量の拡大を図り、21世紀に向けて、国際ハブ空港機能を充実させていくとともに、国際港湾については、アジア諸国と比較しても相対的に低くなっているハード・ソフト両面でのサービス水準を改善していくことが大きな課題である。
 我が国運輸企業については、厳しい市場競争下でその存立を図り、利用者ニーズに適合した低廉で安定したサービスを提供できるよう努める必要がある。このためには、厳しい経営努力が要請されるほか、自由度をもった企業経営ができるよう技術革新等に応じた規制の見直し等環境整備を図っていく必要がある。
 さらに、生活の充足感と余暇活動は密接な関係があるので、安心で快適な海外旅行の実現や国内観光の振興を図るべく、きめ細かい施策を展開していく必要がある。国際社会との関係では、先に述べたように、運輸サービスの水準をネットワークとして高めていく必要があるので、アジアをはじめとする国際協力を地域の実情を勘案しつつ、より一層充実していく必要がある。
 運輸省としては、これらの課題に積極的に対処することによって、豊かさを実感できる生活の実現に努めているところである。



平成6年度

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