平成6年度 運輸白書

第3章 貨物流通の円滑化
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第3章 貨物流通の円滑化 |
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第1節 物流をめぐる社会的状況の変化への対応 |
1 物流をめぐる制約要因の顕在化に対応した物流効率化の必要性
2 内外の経済情勢の変化に対応した物流の充実、高度化
- 1 物流をめぐる制約要因の顕在化に対応した物流効率化の必要性
- 我が国経済の安定成長期への移行後、生産・流通過程における多品種少量化や在庫の圧縮化、国民生活の向上による消費者ニーズの多様化など、産業構造の変化や消費生活の高度化が進行した。これに伴い、物流に求められるニーズも、それまでの量的拡大から、多頻度小口輸送やジャスト・イン・タイムサービスにみられる定時性の確保といった質の高い輸送サービスの提供へと変化がみられる。
このような物流ニーズの高度化とともに、これらへの弾力的な対応が可能なトラック輸送への依存度が年々高まってきた。
しかしながら、近年における自動車交通量の増加に伴い、環境問題や道路交通混雑、労働力の確保といった諸問題が物流をめぐる制約要因として顕在化してきている。環境問題については、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量抑制や、大都市地域を中心とした窒素酸化物の排出量抑制が重要な課題となっている。また、物流業における労働力の確保については、一時期ほどの逼迫感はないものの、労働時間の短縮、若年労働力の減少傾向等を考えれば、構造的な問題としての対応が必要である。
これらの制約要因を克服しつつ、今後とも、我が国経済や国民生活の発展を支える円滑な物流を確保していくためには、我が国全体として、中長期的な観点から効率的な物流体系の構築に取り組んでいくことが重要である。このため、幹線貨物輸送において、効率的な大量輸送機関である海運・鉄道の積極的活用を図るモーダルシフトを一層推進するとともに、トラック輸送に依存せざるを得ない都市内・地域内輸送におけるトラックの積合せ輸送の促進、幹線物流と地域内物流との結節点であるトラックターミナル等の物流拠点の整備を積極的に進めていく必要がある。
- 2 内外の経済情勢の変化に対応した物流の充実、高度化
- (1) 国内経済情勢の変化に対応した物流効率化の必要性
- 我が国経済は、このところ明るさが広がってきており、緩やかながら回復に向かっている。しかし、昨年来の円高等に対応し、製造業を中心に事業のリストラが重要な課題となってきた。また、いわゆる生活者重視の観点から、近年、市場アクセスの改善や内外価格差の是正といった問題に対する関心が高まってきている。
こうした我が国を取り巻く経済情勢の大きな変化の中で、我が国の物流がより積極的な役割を果たしていくためにも、効率的な事業運営による物流コストの削減や物流の円滑化を図ることが強く求められている。
このため、物流業に係る規制について、事業者の活力ある展開を通じて輸送サービスがより効率的なものとなるよう所要の規制緩和措置を進めるとともに、関係事業者等においても、サービスレベルや内容に応じた弾力的な価格体系の構築に向けた努力を継続する必要がある。また、荷主業界を含めた物流をめぐる取引慣行を見直すことにより、過度のジャスト・イン・タイムの改善を始め物流コストの上昇要因を抑制していく努力も必要である。
- (2) 国際物流の円滑化の必要性
- 近年における冷戦構造の崩壊、EC域内統合、アジアNIESやASEAN諸国の経済の急速な成長等により、経済のグローバル化が進展し、日本企業においても、製造業を中心に円高によるコスト競争力低下への対応、貿易摩擦の回避等の要因から本格的に海外進出を進めている。このような経済のグローバル化に伴い、国際物流が活発化している。
こうした国際物流の変化に対応するためには、港湾、空港等輸入インフラを整備する必要があるほか、国際複合一貫輸送を担う貨物運送取扱事業者も、海外のネットワークを整備する等積極的に海外進出を図る必要がある。
一方、我が国の貿易相手国として重要性を高めているアジア諸国において、我が国貨物運送取扱事業者の事業活動に関し、出資比率をはじめ各種の制限が課されている場合がある。このため、運輸省では、相互主義に基づき、中国、インドネシア等の国との協議を進めており、今後とも、国際物流市場の開放に向けた努力を継続する必要がある。

平成6年度

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