第４節　安全で信頼される鉄道であるために

１　鉄道輸送の安全の現状
２　鉄道輸送の安全性・安定性を確保するための施策

１　鉄道輸送の安全の現状

　我が国における鉄道運転事故の件数及び死傷者数は、列車運転の高速化・高密度化が進むなかでも、安全対策を着実に実施してきた結果、長期的に減少する傾向がある。しかしながら、列車運転の高速化等に伴い事故は大型化する傾向にあり、多数の死傷者を生ずる事故が依然として発生している。また、人的な被害は伴わないものの、空港アクセス鉄道を始め鉄道輸送の一層の定時性が求められるなかで、車両故障等による列車の遅延が多数発生している。
　このような厳しい状況を踏まえ、運輸省は、鉄道輸送を安全で安定した信頼されるものとするため以下のとおりの諸施策を講じている。

２　鉄道輸送の安全性・安全性を確保するための施策〔２−５−９図〕

(1) 踏切事故の防止

　踏切事故の件数及び死傷者数は、踏切遮断機・踏切警報機の整備等の安全対策を着実に実施してきた結果、長期的に見ると大幅に減少しているが、一度発生した場合には多数の死傷者を生じるおそれがあり、また、依然として鉄道運転事故の過半数を占めていることから、踏切事故防止は鉄道の安全確保に極めて重要である。このため、踏切保安設備整備費補助金等により、踏切道の改良を引き続き推進するとともに、５年度には踏切道の視認性向上のための調査・研究を実施するなど、踏切道における安全確保に向けて諸対策を積極的に推進している。

(2) 列車衝突事故等の防止

　列車衝突事故等を防止するために、運転士がブレーキ操作を怠った場合に列車事故を非常停止させる自動列車停止装置（ＡＴＳ）等の整備・改良、列車無線の整備等を長期的に実施してきた結果、鉄道運転事故の大幅な減少を達成したが、さらに安全性を向上するため、引き続き運転保安設備等の整備を推進する。

(3) 鉄道係員の取扱いに起因する事故の防止

　鉄道係員の取扱いに起因する事故を防止するために、鉄道係員安全対策教育指導費補助金により、異常時対応等に関する教育・指導の充実を図っている。また、動力車操縦者の資質向上により鉄道の安全確保を図るため、動力車操縦者運転免許試験を実施するとともに、指定動力車操縦者養成所の適切な運営を指導している。

(4) 車両故障の防止

　列車遅延の最大の原因である車両故障を防止するため、車両故障をテーマとした鉄道保安連絡会議を開催し、故障の分析を行うとともに、故障に関する情報の普遍化を図った。また、車両の保守について、新技術を取り入れた検査・修繕機器の導入等による車両検査体制の改善、検修担当者に対する教育訓練の一層の充実を図るように指導している。

(5) 事故の原因究明と再発防止

　鉄道事故が発生した際には、適正かつ迅速な原因究明について事業者を指導している。これらの調査結果については、必要な情報の事業者等への普遍化と行政施策への反映とにより、同種事故の再発防止に活用している。さらに、情報公開の観点から、調査途中においても可能な限り中間報告を行っている。５年10月に発生した大阪市の新交通システムの事故についても、運輸省は、自ら原因究明にあたり、同年11月に中間報告するとともに、運行再会に際し特別保安監査を実施した。

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平成６年度

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