平成6年度 運輸白書

第8章 豊かなウォーターフロント計画

第2節 国際物流と港湾の整備

    1 我が国の港湾を取り巻く国際物流の現状
    2 輸入対応型港湾の整備
    3 外貿コンテナターミナル整備の新展開


1 我が国の港湾を取り巻く国際物流の現状〔2−8−4図〕
 日常の食卓に並ぶ料理の材料や、我が国の経済を支える工業製品に必要な原材料等、国民の暮らしや産業活動に不可欠な物資の多くを海外に依存する我が国にとって、適切な港湾の整備・運営は極めて重要なものである。
 5年には、港湾において10億920万トン(輸出:1億8,954万トン、対前年比0.99、輸入:8億1,966万トン、対前年比1.01)の輸出入貨物が取り扱われた。これらのうち、原油、木材、鉱産品等の原材料の輸入や自動車の輸出については、主として在来型の貨物船によって運搬される一方、衣服や家具等の軽・雑工業品、肉類や冷凍魚介類といった農水産品等の輸入や、近年国際分業により増加している自動車部品等の輸出については、コンテナ船によって輸送されている。
 昭和40年代に本格化した国際海上コンテナ輸送は、各国の経済活動を支える大動脈として進展を遂げている。特にアジア地域においては、NIES、ASEAN諸国の経済発展を受け、コンテナ貨物の取扱量が急激に増加している。一方、欧州航路、北米航路等の基幹航路に投入される新造船は、近年急速に大型化が進んでおり、オーバーパナマックスサイズ(注)のコンテナ船も出現している。こうした大型船に対応した大水深の岸壁については、北米、欧州はもとより香港、釜山、シンガポール等のアジア諸国の港湾においても、整備が急速に進められている。
 アジアを取り巻くこのような情勢の中、我が国港湾は相対的に整備が遅れているため、その国際的地位が低下しつつあり、アジア−北米間では日本に寄港しない航路の増加もみられる。このままでは、今後我が国発着貨物ですら、東アジアの主要なハブ港湾を経由したうえで、北米、欧州へと輸送されるなどの事態が生ずることも想定され、輸送コストや輸送時間の増大等経済・社会的損失が懸念される。

(注)オーバーパナマックスサイズ……パナマ運河を通行しうる最大の船型(概ね長さ270m、幅32m きっ水12m)を越えるものを指す。

2 輸入対応型港湾の整備〔2−8−5図〕
 近年、我が国においては、急激な円高の進行と日本企業の海外進出の影響等により、製品輸入の拡大が進展しており、港湾における輸入コンテナ貨物の取扱量が急増している。平成5年に港湾で取り扱われた輸出入コンテナ貨物量は前年比3.9%の伸びで1億3,480万トンとなっているが、輸出が、6,950万トンと前年比0.4%の伸びにとどまる一方、輸入が6,530万トンと7.9%の伸びを示し、東京港、大阪港等輸入コンテナ貨物量が輸出コンテナ貨物量を上回る港湾もみられる状況にある。
 輸入コンテナ貨物は、荷主の在庫管理の影響等を受け、ターミナル内に滞留する期間が、一般的には輸出コンテナの2倍以上も長い。また、随時引き取りに来る荷主に対応する必要があるため、コンテナを高く積み上げて保管するのは非効率的である。したがって、従来の、主として輸出対応型として整備されてきたコンテナターミナルよりも2〜4倍広いヤードが必要である。さらに、輸入貨物を国内で流通させるための加工、販売促進のための展示や情報提供を行うことも必要となっているが、在来のコンテナターミナルが主として輸出を念頭において整備されてきたために、こうした要請に対応した十分なターミナル用地が確保できていない。このため、作業効率の低下、流通関連施設のひっ迫、関連車輌の増加による港頭地区の混雑等の問題が生じており、円滑な物流の支障となっている。我が国の貿易黒字による貿易摩擦の解消のためにも、このような輸入インフラの整備が必要であり、6年度には神戸港、名古屋港等18港で外貿コンテナターミナルの整備を進めるとともに、荷さばき、保管、流通加工機能等を備えて輸入貨物を円滑に処理できる総合輸入ターミナルの整備を、横浜港、北九州港等で支援している。

3 外貿コンテナターミナル整備の新展開
 大都市圏の地価や人件費の高騰等による企業の地方への立地等のため、近年、地方でのコンテナ貨物の取扱量が増加している。また、アジア域内の航路網が急速に発達しており、三大湾以外の地方の港湾でも、アジア諸国と直接結ぶ航路が続々と開設されている。地方での外貿コンテナ定期航路の開設により、地方に展開する我が国の産業にとっては、国内輸送費の低減や、輸送品質の向上等の効果があり、ひいては、我が国産業の空洞化防止や、分業体制進展による国際協調等の様々な効果を発揮することが期待される。5年には全国27港で外貿コンテナ貨物が取り扱われているが、三大湾以外の港湾では、本格的な外貿コンテナターミナルの整備が不十分なため、やむなく、通常のターミナルにおいて仮設式クレーン等を用いてコンテナが取り扱われているところもある。このため、港湾の背後圏の広さ等を考慮した上で、地方への外貿コンテナターミナルの整備展開を進めており、6年度には、三大湾以外にも、伏木富山港等12港で外貿コンテナターミナルの整備を進めている。



平成6年度

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